ガンコウラン(英語表記)Empetrum nigrum L.var.japonicum K.Koch

改訂新版 世界大百科事典 「ガンコウラン」の意味・わかりやすい解説

ガンコウラン
Empetrum nigrum L.var.japonicum K.Koch

高山のハイマツの下などにマット状に匍匐(ほふく)するガンコウラン科の小低木和名は岩高蘭であるが,その意味は不明。茎は細長く,多くの枝に分かれて地をはう。葉は線形で小さく,長さ4~7mm,幅0.7~1mm。初夏,先端近くの葉のわきに1個の花をつける。雌雄異株。花は3枚の萼片と3枚の離生する花弁からなり,黒紫色。雄花は3本のおしべのみ,雌花は1個のめしべのみからなる。果実球形,液質で径6~10mm,黒熟する。中に小さな6~9個の核があり,その中に1個ずつ種子が包まれている。本州中部以北,北海道千島サハリン,中国東北,シベリア,カムチャツカに分布する。基本変種のE.nigrum L.(英名crowberry)はヨーロッパの寒帯に広く分布し,葉の幅が広い。果実は生食もされるが,ジャムを作るのでよく知られる。ガンコウラン属Empetrumはほかに南アメリカに1種あるだけである。

 ガンコウラン科Empetraceaeは3属10種ほどの,南北両半球に隔離分布する属を含む小さな科で,すべて小さな常緑の葉を有する低木である。系統的にはツツジ科に近縁と考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガンコウラン」の意味・わかりやすい解説

ガンコウラン
がんこうらん / 岩高蘭
[学] Empetrum nigrum L. var. japonicum K.Koch

ガンコウラン科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。ガンコウラン属には6種あり、北半球の高山や寒帯および南アメリカのアンデス山脈フォークランド諸島などに分布する。茎は長く地をはい、よく分枝し、枝は立って高さ10~20センチメートルになり、大きな群落をつくる。葉は革質、多数で互生し、線形、長さ4~6ミリメートルと小さく、縁(へり)が反り返る。雌雄異株。6月に紫黒色の小さい花が葉腋(ようえき)に開き、花弁と萼片(がくへん)は3枚ずつある。雄花には雄しべが3本、雌花には雌しべが1本。果実は球形、径6~10ミリメートルの核果で、9月ごろ紫黒色に熟し、甘酸っぱい味で食べられ、ジャムや果実酒をつくる。中部地方以北の本州、北海道の高山帯に普通に生え、千島からカムチャツカ、朝鮮半島、中国東北部、東シベリアにも分布する。

小林義雄 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「ガンコウラン」の意味・わかりやすい解説

ガンコウラン

北海道,本州中北部,北東アジアの高山帯にはえるガンコウラン科の常緑小低木。茎は地上をはい,高さ約20cm,多く分枝し,葉の密生した小枝が直立する。葉は厚く線形,長さ4〜7mm,革質で少しそり返る。ふつう雌雄異株。花は5〜6月に咲き,花弁はなく,萼は花弁状で3枚。果実は球形で黒熟し食べられる。

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