β-1,4-poly-N-acetyl-D-glucosamine.キチンは節足動物,環形動物,軟体動物にキチン-タンパク質複合体として多く分布し,腔腸動物や線虫類にも見いだされ,それらの骨格構造の形成に関与している.とくに節足動物では,蛛(ちゅう)形類,甲殻類,昆虫類などのほとんどすべてに存在する.その表皮は,キチン25~50%(乾燥質量として)とタンパク質,炭酸カルシウムとからなる.通常,カニあるいはエビの甲羅を粉末とし,希塩酸で炭酸カルシウムを除き,アルカリ濃溶液で短時間処理してタンパク質,そのほかのきょう雑物を除いて,水洗してつくる.白色の無定形物質.平均重合度850.-14→+56°(濃塩酸,加水分解で変化).水,希アルカリに不溶.濃アルカリと加熱すると脱N-アセチルと分解が起こり,キトサンになる.濃厚無機酸,無水ギ酸などにつけておくと可溶化し,その際,部分分解する.キチナーゼで分解し,N-アセチルグルコサミンを生成する.LD50 50 mg/kg(ラット,静脈).[CAS 1398-61-4]
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自然界ではセルロースに次いで多量に分布する多糖で、アミノ糖(糖のアミノ誘導体)からなり、N-アセチル-D-グルコサミンがβ(ベータ)-1・4結合で重合したもの。白色の粉末で水に溶けず、きわめて反応性に乏しく、セルロースよりも安定である。強アルカリによって遊離アミノ基をもつ塩基性多糖キトサンchitosanを生じ、これはさらに濃塩酸によってグルコサミンに分解される。1823年にカブトムシの鞘翅(しょうし)から初めて単離され、「よろい」を意味するギリシア語キトンchitonにちなんで名づけられた。キチンを大量に得るには、エビやカニの殻を塩酸に浸し、炭酸カルシウムを溶出後、アルカリとともに煮沸してタンパク質を取り除き、残った沈殿物をよく洗ってから乾燥すればよい。キチンは節足動物の硬い表皮や殻の骨格を形づくるばかりでなく、カビの細胞壁の重要な構成要素にもなっている。また、環形動物、軟体動物、円形動物、腔腸(こうちょう)動物にも存在するが、原腸体腔幹に属する棘皮(きょくひ)動物や脊椎(せきつい)動物にはまったく存在しない。これは進化論的に興味深いことである。なお、地球上におけるキチンの存在量は驚くほど多く、甲殻類の一群であるアミ類やオキアミ類などの動物だけでも、1年間に数千億トンのキチンを生産している。キチンを分解する酵素キチナーゼは、カビ、細菌、軟体動物などの下等動物にみいだされている。
[村松 喬]
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…その内部にある原表皮はクチクラの大部分を占め,内・外2層に分かれる。外表皮の内半部と原表皮では,キチンchitin分子のすき間をスクレロチンsclerotinという硬タンパク質が埋めているので,表皮が外骨格と呼ばれるほどの強靱性をもつことになる。これらの層には,内部の真皮細胞層から出た多数の孔管が貫通していて,もし表層が磨滅すれば,その分泌物が孔管を通って表層に移動して修復される。…
…その内部にある原表皮はクチクラの大部分を占め,内・外2層に分かれる。外表皮の内半部と原表皮では,キチンchitin分子のすき間をスクレロチンsclerotinという硬タンパク質が埋めているので,表皮が外骨格と呼ばれるほどの強靱性をもつことになる。これらの層には,内部の真皮細胞層から出た多数の孔管が貫通していて,もし表層が磨滅すれば,その分泌物が孔管を通って表層に移動して修復される。…
…高等植物の細胞壁多糖はセルロースを主体としている。エビ,カニ,昆虫の殻の主体をなすのはN‐アセチルグルコサミンからなるキチンである。キチンはさらに線形動物,腔腸動物,そしてカビに分布している。…
※「キチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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