キト

デジタル大辞泉 「キト」の意味・読み・例文・類語

キト(Quito)

エクアドル共和国の首都。アンデス山脈中の標高2850メートルの高地にあり、赤道直下に位置するが気候は温暖。インカ帝国の古都。16世紀にスペイン植民地となり、キリスト教布教の拠点となる。セントロヒストリコとよばれる旧市街は、キト大聖堂サンフランシスコ教会をはじめ数多くの教会建築が残っており、1978年「キト市街」の名称で世界遺産文化遺産)に登録。人口、行政区158万(2008)。

き‐と

[副]
動作が瞬間的に行われるさま。急に。とっさに。
「御輿を寄せ給ふに、このかぐや姫―影になりぬ」〈竹取
特に意図せずにある動作をするさま。思わず。ふと。
「―寝入りたりけるに」〈梁塵秘抄口伝・一〇〉
ゆるみなく、厳しく動作をするさま。きつく。しっかり。
「蛇を鷲爪わしづめを以てつかみて、―引きて踏まふれば」〈今昔・二九・三三〉
必ず。確かに。
「その鳥―参らせよ」〈弁内侍日記

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「キト」の意味・読み・例文・類語

き‐と

  1. 〘 副詞 〙 ( 副詞「きっと」のもとの形 )
  2. 動作が瞬間的に集中して行なわれるさま。すばやく。さっと。
    1. [初出の実例]「率ておはしまさん人とて御輿(こし)を寄せ給ふに此のかぐや姫きと影に成りぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. そうしようとする意図なしに、ある状態に入る、また、ある動作を始めるさま。ふと。ちょっと。
    1. [初出の実例]「三日といふひるつかた、きとまどろませ給ともなきに」(出典:古本説話集(1130頃か)六五)
  4. 動作、状態などが、確固としていてゆるみのないさま。しっかりと。きっぱりと。
    1. [初出の実例]「烏帽子の緒きとつよげに結ひ入れて」(出典:枕草子(10C終)六三)
  5. 自分の意志、意図が確固としているさま。必ず。是が非でも。
    1. [初出の実例]「申すべき事あり。きと立ち寄り給へ」(出典:平家物語(13C前)三)

キト

  1. ( Quito ) 南アメリカ、エクアドル共和国の首都。赤道直下、標高二八五〇メートルの高原にある。インカ帝国の古都で、一五三四年スペインの植民都市になった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「キト」の意味・わかりやすい解説

キト
Quito

南アメリカ西海岸に位置するエクアドル共和国の首都,同国ピチンチャ州の州都。人口148万2447(2003)。市街は東・西両アンデス山脈にはさまれた標高2850mの盆地にあり,世界の首都のうちではボリビアのラ・パスに次ぐ高地に位置する。そのため赤道直下にありながら気温は年平均13℃と冷涼で,市内でも時たま降雪,降雹をみる。気候は年間を通じて乾燥しているが,2~5月および11~12月に軽い雨季があり,午後は曇りがちとなりスコールがある。キトの起源はプレ・インカ時代に同地を興隆させたキトス族に始まり,その後インカ帝国と結んでクスコと並ぶインカの第2都として栄えたが,1533年スペインに征服された。しかしインカ時代の遺跡は少なく,植民地時代に建てられた教会建築物が数多く残されている。なかでも植民地初期に建てられたサン・フランシスコ聖堂(1534),サント・ドミンゴ修道院をはじめ,金箔の祭壇を誇るラ・コンパニア教会などが旧市街に集中している。またサント・ドミンゴ修道院付近には,市街地としては最も古いロンダ通りが当時のままに保存されている。市の南端にあるパネシリョ山の麓に建設された旧市街から北に向かって市街地は膨張を続け,現在ではピチンチャ山の斜面に建てられた大学都市からマリスカル・スクレ国際空港にかけて新市街地がのび,都心部へは高速道路が設けられた。キトの中心よりさらに北へ25km進むと赤道通過地点サン・アントニオに至り,新装の赤道記念碑がある。キト市には伝統的な毛織物皮革工業があるが,内陸都市のため産業は一般に比較的小規模の組立て・加工業に限られ,全国的な市場を目指す産業は港湾都市グアヤキルに主導権を譲っている。商業・工業・金融などの中心がグアヤキルに移ったため,首都でありながらキトの人口は常にグアヤキルを下回る傾向をみせている。キトは今後政治・文化の中心として活路を見いだすほかなく,グアヤキルとの利害上の反目が,同国の政治に深い影響を与えている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キト」の意味・わかりやすい解説

キト
Quito

エクアドルの首都。正式名称はビヤデサンフランシスコデキト Villa de San Francisco de Quito。またピチンチャ州の州都。同国北部内陸,アンデス山脈中にそびえるピチンチャ山の南東麓にあり,標高約 2850m。北約 20kmを赤道が通るが,標高が高いため気候は涼しく,月平均気温は年間を通して 13℃前後。古代にはキト王国の首都であったが,11世紀以降 1487年インカ帝国に統合されるまで,カラ族の支配下に置かれた。インカ帝国の第 11代皇帝ワイナ・カパックはここを帝国の重要な政治・軍事中心地としたが,1534年スペイン人が占領し,市会を設置するとともに,スペイン風の町の建設を開始した。その後,この地域の政治,文化,経済の中心地として発展,1830年エクアドルが大コロンビアから分離独立した際その首都となった。 20世紀初め,経済中心地としての地位は太平洋岸の港湾都市グアヤキルに譲り,また人口も同市に凌駕されたが,依然としてエクアドルの政治,文化の中心地である。坂道の多い狭い街路に沿ってバルコニーパティオ (中庭) のある家が並び,スペイン植民地時代の面影を残す旧市街は,1978年世界遺産の文化遺産に登録。聖フランシスコ聖堂をはじめとする多数の聖堂や修道院,邸宅など 16世紀以来の古い建築物が保存されている。北方には広い街路に高層ビルなども並ぶ近代的な市街が広がる。産業面ではグアヤキルに次ぐ工業都市で,繊維を中心に各種消費財を製造する軽工業が発達するほか,皮革,木,金,銀などを用いた工芸品の生産も盛ん。文教施設としては,エクアドル中央大学 (キト大学,1769) ,国立理工科大学 (1869) などの高等教育機関,国立図書館,天文台,各種博物館・美術館,劇場などがある。山間の高地に位置するため,長い間交通の便が悪かったが,1908年グアヤキル港と鉄道で結ばれた。現在内外と結ぶ道路網も整備され,またエクアドルの航空網の中心として国際空港もある。人口 160万7734(2010)。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キト」の意味・わかりやすい解説

キト
きと
Quito

南アメリカ北西部、エクアドルの首都。同国北部のピチンチャ火山山麓(さんろく)の盆地に位置し、赤道直下ながら高地(標高2812メートル)なので常春の快適な環境にある。人口139万9814(2001)。インカ時代からの古い町で、1534年にスペインの植民都市になった。カトリックの影響を強く受け、数多くの古い教会などに特異な宗教芸術を残し、植民地時代のおもかげをよく保存している。西半球におけるカトリック教の一中心地でもあり、1787年創立の大学、博物館など文化施設も多い。毛織物、皮革、機械などの工業があるが、経済上の重要性は少ない。この都市の主要な機能は政府各機関に象徴される政治機能で、金融上にも大きな役割を果たしている。太平洋岸の外港グアヤキルとは国土の中央部を貫く鉄道、ハイウェーで結ばれている。

 市街地はピチンチャ火山麓と小丘陵の間に南北に長く延びる。中央公園の南側には、国会議事堂、大統領官邸、伝統的な中心商店街、大露天市場など、古いコロニアル・スタイル(植民地風)の地区がある。北側には新しいビジネス街、在外公館、ホテル、近代的住宅街などの集まる地区がある。その北に接して空港があり、さらに空港の北側に、最近発展してきた工業地帯がある。市街の多くの建物は古いスペイン風の低い赤屋根と白壁の天日れんが造りで、随所に美しい広場がある。郊外には先住民が古くから住み、その文化遺跡が多い。北郊には赤道記念碑がある。キト市街地は1978年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[山本正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「キト」の意味・わかりやすい解説

キト

エクアドルの首都。ほぼ赤道直下,ピチンチャ火山の南東麓,標高2850mの高地にあり,常春の高山気候。インカ帝国の第2の都市として栄えていたが,1533年スペイン人に征服された。植民地時代の教会建築物が多く,1978年ユネスコの世界文化遺産に指定された。経済の中心であるグアヤキルと常に対立関係にある。160万7734人(2010)。
→関連項目インカエクアドル

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android