南アメリカ西海岸に位置するエクアドル共和国の首都,同国ピチンチャ州の州都。人口148万2447(2003)。市街は東・西両アンデス山脈にはさまれた標高2850mの盆地にあり,世界の首都のうちではボリビアのラ・パスに次ぐ高地に位置する。そのため赤道直下にありながら気温は年平均13℃と冷涼で,市内でも時たま降雪,降雹をみる。気候は年間を通じて乾燥しているが,2~5月および11~12月に軽い雨季があり,午後は曇りがちとなりスコールがある。キトの起源はプレ・インカ時代に同地を興隆させたキトス族に始まり,その後インカ帝国と結んでクスコと並ぶインカの第2都として栄えたが,1533年スペインに征服された。しかしインカ時代の遺跡は少なく,植民地時代に建てられた教会建築物が数多く残されている。なかでも植民地初期に建てられたサン・フランシスコ聖堂(1534),サント・ドミンゴ修道院をはじめ,金箔の祭壇を誇るラ・コンパニア教会などが旧市街に集中している。またサント・ドミンゴ修道院付近には,市街地としては最も古いロンダ通りが当時のままに保存されている。市の南端にあるパネシリョ山の麓に建設された旧市街から北に向かって市街地は膨張を続け,現在ではピチンチャ山の斜面に建てられた大学都市からマリスカル・スクレ国際空港にかけて新市街地がのび,都心部へは高速道路が設けられた。キトの中心よりさらに北へ25km進むと赤道通過地点サン・アントニオに至り,新装の赤道記念碑がある。キト市には伝統的な毛織物・皮革工業があるが,内陸都市のため産業は一般に比較的小規模の組立て・加工業に限られ,全国的な市場を目指す産業は港湾都市グアヤキルに主導権を譲っている。商業・工業・金融などの中心がグアヤキルに移ったため,首都でありながらキトの人口は常にグアヤキルを下回る傾向をみせている。キトは今後政治・文化の中心として活路を見いだすほかなく,グアヤキルとの利害上の反目が,同国の政治に深い影響を与えている。
執筆者:寿里 順平
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
南アメリカ北西部、エクアドルの首都。同国北部のピチンチャ火山山麓(さんろく)の盆地に位置し、赤道直下ながら高地(標高2812メートル)なので常春の快適な環境にある。人口139万9814(2001)。インカ時代からの古い町で、1534年にスペインの植民都市になった。カトリックの影響を強く受け、数多くの古い教会などに特異な宗教芸術を残し、植民地時代のおもかげをよく保存している。西半球におけるカトリック教の一中心地でもあり、1787年創立の大学、博物館など文化施設も多い。毛織物、皮革、機械などの工業があるが、経済上の重要性は少ない。この都市の主要な機能は政府各機関に象徴される政治機能で、金融上にも大きな役割を果たしている。太平洋岸の外港グアヤキルとは国土の中央部を貫く鉄道、ハイウェーで結ばれている。
市街地はピチンチャ火山麓と小丘陵の間に南北に長く延びる。中央公園の南側には、国会議事堂、大統領官邸、伝統的な中心商店街、大露天市場など、古いコロニアル・スタイル(植民地風)の地区がある。北側には新しいビジネス街、在外公館、ホテル、近代的住宅街などの集まる地区がある。その北に接して空港があり、さらに空港の北側に、最近発展してきた工業地帯がある。市街の多くの建物は古いスペイン風の低い赤屋根と白壁の天日れんが造りで、随所に美しい広場がある。郊外には先住民が古くから住み、その文化遺跡が多い。北郊には赤道記念碑がある。キト市街地は1978年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[山本正三]
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