日本大百科全書(ニッポニカ) 「イシガメ」の意味・わかりやすい解説
イシガメ
いしがめ / 石亀
pond-turtle
爬虫(はちゅう)綱カメ目ヌマガメ科イシガメ属に含まれるカメの総称。この属Mauremysには4種が含まれ、アフリカ北部、イベリア半島、ヨーロッパ南東部から、北部を除くアジア一帯に広く分布する。日本の本州、四国、九州に分布するニホンイシガメM. japonicaは甲長13~18センチメートル、背甲はあまり高くなく、中央部には鈍い隆条があり、後縁はぎざぎざ状となっている。甲や頸部(けいぶ)には目だつ模様がなく、腹甲は一様に黒色をしている。池沼や浅い渓流にすみ、昼間は岸辺で日光浴をするが、危険を感じるとすぐ水中に逃れる。後肢の足指の間には水かきが発達して泳ぎが巧みであり、陸での行動もすばやい。餌(えさ)は小魚、水生昆虫、水草などである。雌は初夏に岸辺の地中に穴を掘り、4~8個ほどの卵を産む。卵は70~90日で孵化(ふか)し、子ガメはゼニガメとよばれペットにされる。京都周辺(人為分布によると思われる)、吐噶喇列島(とかられっとう)の悪石島(あくせきじま)、八重山列島(やえやまれっとう)および台湾、中国中南部、インドシナ北部に分布するミナミイシガメM. muticaは甲長18センチメートル、腹甲は淡黄色で黒色の斑紋(はんもん)がある。また、イシガメの背甲にアオミドロなどの緑藻類が付着して長く伸びたものを蓑亀(みのがめ)といい、古来、瑞兆(ずいちょう)として珍重される。
[松井孝爾]