クマシデ(英語表記)Japanese hornbeam
Carpinus japonica Bl.

改訂新版 世界大百科事典 「クマシデ」の意味・わかりやすい解説

クマシデ
Japanese hornbeam
Carpinus japonica Bl.

山地に生えるカバノキ科の落葉高木で,樹皮は縦に細かくはげる。枝は細く,初めは長毛があるが,後に無毛となる。葉は互生で,卵状長楕円形,基部はやや心形または円形で,縁には重鋸歯がある。側脈は明らかで,平行して走り,20脈以上がある。雌雄同株だが,別々の尾状花序を出す。雄花序は前年枝の葉腋(ようえき)に出て,新芽の開出時に,長く尾状に垂れ下がり,花粉を散らす。雌花序は新枝の先端につく。鱗片状の苞の腋に2花があり,それぞれの花の基部には小苞がある。花後,苞はそのまましぼんでしまうが,小苞は発達して果実を包む翅(はね)となり,この翅に包まれた果実が密集して,球果をつくり,枝頂から垂れ下がる。

 日本にはクマシデに似てシデ類と総称されるものが数種ある。同属のサワシバC.cordata Bl.はクマシデによく似るが,葉は広卵形で,基部は明らかな心形となる。アカシデC.laxiflora(Sieb.et Zucc.)Bl.,イヌシデC.tschonoskii Maxim.は樹皮に縦の割れ目があるが,細かくはげることはない。葉は披針形で側脈数も10~15対で少ない。また,果実の翅も幅が狭く,まばらな感じを受ける。

 シデ類は温帯暖帯上部,とくに中間温帯と呼ばれる地域に多い。また,シデの仲間(クマシデ属Carpinus,英名hornbeam)は北半球の暖帯~温帯に20種あまりが分布しており,温帯林の主要構成樹の一つとなっている。材は堅くてねばりがあり,器具,家具(とくに曲木(まげき)いす)に用いる。

 また盆栽ではソロと呼ばれ,しばしば愛培されるのもシデ類,とくにアカシデやイヌシデである。庭園雑木として,またシイタケ栽培にも利用される。かつては薪炭用材としても重要であった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クマシデ」の意味・わかりやすい解説

クマシデ
くましで / 熊四手
[学] Carpinus japonica Bl.

カバノキ科(APG分類:カバノキ科)の落葉高木。高さ12メートルくらいであるが、20メートル以上になるものもある。老木の樹皮は黒褐色で浅く割れる。葉は狭卵形で長さ6~11センチメートル、20~24対の側脈がある。ほかのシデ類より葉の側脈数が多い。雌雄同株で、5月ころ芽が開くと同時に開花する。秋には大形の円柱状の果穂が垂れ下がる。果穂の包葉は密につき、基部には堅果を抱く。山地の広葉樹林内に普通にみられ、岩手県以西の本州、四国、九州に分布する。材は堅く、玩具(がんぐ)、農具の柄(え)、炭、シイタケ原木などに用いる。イヌシデより全体がより壮大なのでこの名があるといわれる。

[菊沢喜八郎 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「クマシデ」の意味・わかりやすい解説

クマシデ

オオソネとも。本州〜九州の山野にはえるカバノキ科の落葉高木。樹皮は暗褐色で縦に鱗状に裂ける。葉は長楕円形で先は鋭くとがり,縁には細く鋭い重鋸歯(きょし)があり,15〜24対の顕著な側脈が並行する。雌雄同株。4〜5月,新葉と同時に開花。雄花穂は黄褐色で前年の枝から尾状にたれ,雌花穂は緑色で,新枝の先に密につく。果穂は大きく,長楕円形で,葉状の包鱗が密生し,たれ下がる。材は薪炭用。イヌシデは果穂が小さく,樹皮は平滑で縦の浅い割れ目があり,朝鮮半島,中国にも分布。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クマシデ」の意味・わかりやすい解説

クマシデ
Carpinus japonica; hornbeam

カバノキ科の落葉高木で,主として山地の谷筋などに生える。葉は長楕円形で,側脈は 20~24対ある。材は器具材,薪炭材などに使われる。

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