ベンゾ-α-ピロンにあたり,o-オキシケイ皮酸の分子内環状エステル(ラクトン)である。無色針状または柱状結晶。融点70℃,沸点291~302℃,昇華性がある。自然界では,芳香成分をもつクマリン植物と呼ばれるクルマバソウ,シナガワハギ,南アメリカ原産のトンカマメの種子,ジンチョウゲ,サクラの葉など100種余りの植物中に検出されている。植物体内ではクマリン酸の配糖体として液胞内に存在するが,乾燥や磨砕によってグルコシダーゼと接触すると加水分解し閉環してクマリンを生成する。生では香りがなく,乾燥したりかむと芳香を放つようになるのはこのためである。またクマリンの分解生成物デクマロールは有害で,シナガワハギの腐草を牧牛が食べると死ぬことがわかっている。
サリチルアルデヒドと無水酢酸とのパーキン反応によってo-ヒドロキシケイ皮酸を経て製造される。工業的にはo-クレゾールを出発原料として合成される。クマリンは古くから重要な香料として用いられてきたが,現在では安全性の面もあり,食品への使用は制限されている。
執筆者:大隅 良典+内田 安三
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芳香族γ(ガンマ)-ラクトンであり、南米ギアナ産トンカ豆に1.5%以上含まれ、サクラの葉やモモの花にも存在している甘い、ややスパイシーな香気をもつ白色柱状結晶である。工業的にはo(オルト)-クレゾールから製造するが、高級品はトンカ豆から抽出精製する。せっけん、シャンプーなど香粧品香料として用いるが、経口毒性が指摘されたため、日本やアメリカなどでは食品香料としては使用を禁止されている。しかし、工業用めっき光沢剤としては使用されている。
[佐藤菊正]
クマリン
分子式 C9H6O2
分子量 146.1
融点 71℃
沸点 301.7℃
【Ⅰ】coumarin.2H-1-benzopyran-2-one.C9H6O2(146.15).o-ヒドロキシケイ皮酸のラクトン.クローバーをはじめ各種の植物中に含まれる芳香成分.サリチルアルデヒドと無水酢酸および酢酸ナトリウムからパーキン反応により合成される.無色の結晶.融点68~70 ℃,沸点291 ℃.エタノール,熱水に可溶.希薄のときの香りは桜餅の葉を想起させ,またいくぶんベンズアルデヒドのような香気を有する.一般化粧品,食品香料として広く利用される.[CAS 91-64-5]【Ⅱ】coumalin,cumalin.α-ピロンに同じ.[別用語参照]ピロン
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…融点5℃,沸点206~207℃。これにベンゼン環が縮合したベンゾ‐α‐ピロンはクマリンcoumarinといい,植物界に広く存在している。γ‐ピロンは,水,エチルアルコールに溶けやすい吸湿性結晶で,融点32℃,沸点119℃(35mmHg)。…
…カルボニル基の位置によってα‐ピロンとγ‐ピロンの2種の構造異性体がある。α‐ピロンはクマリンcoumalinともいい,一種のラクトンである。融点5℃,沸点206~207℃。…
…β‐ラクトンから大環状ラクトンまで知られているが,γ‐ラクトンが最も安定でδ‐ラクトンがこれに次ぐ。各種の果実の中に微量に含まれるクマリンはo‐オキシケイ皮酸のラクトンである。ラクトンは普通エステルに似た中性の液体で,エチルアルコール,エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。…
※「クマリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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