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クライオトロン(英語表記)cryotron

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

クライオトロン
cryotron

論理素子 (ロジック IC) の1種。超伝導性を示す金属は温度を下げていくと,絶対零度に近いある温度 (遷移温度) で電気抵抗が突然0になり (これを超伝導状態という) ,これに外部から磁界を加えるとある大きさの磁界 (臨界磁界) で超伝導状態が破壊されて常伝導状態となって電気抵抗が生じる。クライオトロンは,この外部磁界による超伝導と常伝導の相転移を利用して,オン (on) ,オフ (off) 状態を表現する論理素子である。この素子は電力の消費が小さく,スイッチング時間がきわめて短く,また真空蒸着などでつくった薄膜クライオトロンは体積が小さくできるため,コンピュータ用の素子として今後の開発と利用が期待されている。

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百科事典マイペディアの解説

クライオトロン

超伝導を利用した論理演算素子。タンタル,スズ等の金属を転移温度以下に冷やすと超伝導を起こして電気抵抗が0になるが,これに磁場をかけ,磁場を次第に増大していくと,ある強さに達したところで超伝導が破れ,突如として電気抵抗が出現する。これによる電流の不連続的変化をコンピューターの論理演算回路に利用する。1956年初めてタンタルとニオブの線を用いたものが考案され,以後スズと鉛の薄膜を用いるもの等が開発された。超伝導を利用するので電力消費が少なく,動作速度が速く,超小型で多数を同時に作れるのが特徴。
→関連項目薄膜

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

クライオトロン
くらいおとろん
cryotron

超伝導状態における永久電流を利用したコンピュータ用のスイッチング素子。1956年にマサチューセッツ工科大学のバックD. A. Backが、この素子で記憶装置などを構成すれば、超伝導コンピュータができることを提案し、極低温cryogenicsで動作することから、それにちなんでcryotronと名づけられた。
 最初のクライオトロンは、タンタル線の周りにニオブ線を巻き付けたもので、ニオブ線に流れる電流がある値を超えると、電流の発生する磁界によってタンタル線が超伝導から常伝導状態に転移する。タンタル線が用いられるのは、タンタルの臨界温度(絶対温度で4.5K)がニオブの臨界温度(絶対温度で9.3K)より低く、常伝導状態に転移しやすいことによる。タンタル線にゲート電流を通じておけば、タンタル線はゼロ電圧、あるいは有限電圧のどちらかの状態をとることになるので、簡単な構造でもスイッチング素子として機能する。しかし巻線を用いているので、インダクタンスが大きくなり、スイッチング時間を50マイクロ秒より短くできなかった。その後、スイッチング素子を短くするために薄膜形のクライオトロンが考案された。しかし薄膜形も転移に伴う潜熱の熱伝導の時間が問題となり、スイッチング時間は14~40ナノ秒を要した。この値は半導体素子のスイッチング時間より遅く、しかも液体ヘリウム温度(絶対温度で4.2K)に冷却するコストを考えると、他の半導体素子に比べて実用的な優位さはなく、一時は大きな話題をよんだが、製作は立ち消えになった。[川邊 潮]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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