クロービス(英語表記)Clovis

改訂新版 世界大百科事典 「クロービス」の意味・わかりやすい解説

クロービス
Clovis
生没年:465ころ-511

フランク人の王。在位481-511年。ゲルマン人サリ支族のシルデリック1世の息子で,481年ころトゥールネー(今日のベルギーの南西部,ドゥールニク)の小王国を相続するが,ガリア全土の征服を企てる。486年ソアソンでシアグリウスを破って領土ロアール川まで押し広げた後,同族のほかの小王を排除。491年チューリンゲン族を,495-496年とおそらく505-506年アラマン族を攻撃し,さらに509年ころケルンのリブアリ族の王シゲベルトとその息子を殺害して,ライン川左岸に覇権を確立。この間にアリウス派からカトリック改宗したクロービスは,507年ブイエVouilléで西ゴート人の王アラリックAralic2世に打ち勝ってアキテーヌを併合した後,都をパリに移し,511年オルレアンに公会議を召集する。このようなクロービスの事績,とくに彼の改宗の時期については,基本史料であるトゥールのグレゴリウスの《フランク人の歴史》の記述の解釈が困難なことから,異説が多い。しかし,ゲルマン人諸部族王のなかで,ただひとりクロービスだけがカトリックに改宗したことの政治的効果は絶大で,このことによって彼はガリア住民の支持を得たばかりか,その後のフランク王権と教会との同盟に確固たる基盤を置くことになった。
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百科事典マイペディア 「クロービス」の意味・わかりやすい解説

クロービス

初代フランク国王(在位481年―511年)。メロビング朝始祖サリ族首長。フランク諸族を統一し,シアグリウスの率いるローマ軍アラマン人,西ゴートなどを破って大国家を形成。この間カトリックに改宗してローマ教会との関係を密にし,フランク王国発展の基礎を固めた。→フランク王国
→関連項目グレゴリウス(トゥールの)サリカ法典フランクランス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロービス」の意味・わかりやすい解説

クロービス
Clovis

アメリカ合衆国,ニューメキシコ州東部の都市。テキサス州との境に位置し,周辺は 1000m余の高原地帯。 1906年サンタフェ鉄道の分岐点として創設。地名はフランク王クロービスにちなむ。灌漑農業と牧畜の中心地。家畜市や飼料加工場,農産物市場などがある。 31km南方のポートレールには,イースタンニューメキシコ大学 (1934創立) がある。人口3万 954 (1990) 。

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世界大百科事典(旧版)内のクロービスの言及

【フランク王国】より

…486‐987年。5世紀末に,クロービスがフランクFrankの全部族を統合し,北ガリアに部族王国を建てたのに始まり,他のゲルマン系諸部族・諸国家を次々と征服して,西ヨーロッパの大部分の政治的統一を達成し,カール大帝は800年,ついに皇帝の称号を帯びるにいたるが,ベルダン条約(843)で帝国は三つに分割され,さらにメルセン条約(870)により東フランク王国と西フランク王国が並立する。フランク王国の政治史的発展については〈メロビング朝〉〈カロリング朝〉の項に譲り,ここではフランク王国の政治構造,社会構成,経済状態,文化的貢献,さらにフランク王国をめぐる国際関係などを取り扱う。…

【フランクフルト・アム・マイン】より

…まもなく国境防衛線リメスlimesの構築とともに放棄され,その北に軍都ニダNidaの建設をみた。3世紀中葉アラマン族の侵入をうけたが,6世紀初頭フランク族の王クロービスが,これを南方に駆逐して以来,河畔の地はライン・マイン流域に広がる王領管理の中心となった。〈フランク族の(マイン川)渡河点〉を意味する地名Franconofurdは,この時期につけられたといわれ,これが現在のフランクフルトの呼称のもととなった。…

【メロビング朝】より

…5世紀後半,フランク諸部族はシュタム(部族国家)ではなく,ガロ・ロマン的都市をもとに小国家群を形成した。ヒルデリヒの子クロービスはローマ同盟者としての軍命令権を用いて,自家権力を強化し,同族の諸小王とソアソンのシアグリウスのローマ人国家を滅ぼし(486),カトリック改宗により,アクイタニア(アキテーヌ)への勢力伸張を決定づけ,戦略拠点パリを王都とし,ライン川からガロンヌ川までを支配した。そのあとを継いだ4人の息子たちは,同領域を,ライン,ロアール両河間のフランキアとアクイタニアとに分け,それらを平等分割相続した。…

【ユリ(百合)】より

… さて,ユリはフランスのブルボン家の紋章になっているが,その由来はこうだ(ただしブルボン家の紋花fleur‐de‐lisをユリではなくアイリスと解する説もある)。フランク王家の開祖クロービス(在位481‐511)がアラマン族と戦い,苦戦したときのことである。味方は敵の攻勢を支えきれず危うく敗走しそうになった。…

※「クロービス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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