グラミン銀行(読み)グラミンぎんこう(英語表記)Grameen Bank

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

グラミン銀行
グラミンぎんこう
Grameen Bank

バングラデシュの銀行。グラミンはベンガル語で「村落」を意味する。貧困層を対象に,無担保の少額融資 (マイクロクレジット) を専門にする銀行で,経済学者のムハマド・ユヌスが創設。ユヌスは 1976年にグラミン・モデルを考案,貧困層向けの融資に取り組み始めた。借り手5人一組が構成単位となリ,グループの連帯保証に基づいて融資を受け,短期間で借金を返済する。借り手候補はグラミン銀行のフィールドマネージャーと定期的に面接し,通常5人のうち2人がまず融資を受ける。試験期間を経て最初の借り手が約定どおりに返済すれば残りのメンバーも融資を受けられる。連帯責任を有する仲間の圧力が,従来の銀行融資の担保に代わる役割を果たす。 1983年に政府の正式認可を受けてダッカに本店を置く独立銀行となり,全国に 2200以上の支店をもつ。グラミン・モデルは貧困層に自立の機会を与え,経済的発展を創出する効果的手段の象徴となっている。グラミン銀行の融資利用者の 97%以上は女性である。 2006年グラミン銀行とユヌスはノーベル平和賞を受賞した。

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知恵蔵の解説

グラミン銀行

マイクロクレジットと呼ばれる小口融資を専門にするバングラデシュの民間銀行。グラミンは「村」の意味。1976年に農村の主婦らに低金利で少額の融資を行い、生活向上の支援をする非政府組織(NGO)として発足。83年に銀行として政府の公認を得た。創始者は現在の総裁であるムハマド・ユヌス元チッタゴン大学教授。バングラデシュ独立と同時に滞在先の米国から帰国し、農村の女性自立を支援する活動に着手した。ところが、銀行から資金を借りる事業は困難の連続だったため、結局、自ら資金を集めて貸し付けようと考え、銀行設立を決断した。借り手の多くが貧農や女性。無担保で貸し付け、年50回の分割返済。返済は仲間5人との連帯責任で行う。今では、バングラデシュ全国に支店約2200、職員約1万8000人の「大銀行」になったといえる。しかも、返済率は98%の好成績だ。マイクロクレジットは、貧困救済のモデルとして世界的な評価を得つつあり、アフリカなど他の途上国にも広がりを見せている。

(竹内幸史 朝日新聞記者 / 2007年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

グラミン銀行

ユヌス氏らが76年、銀行が融資しない農村部の貧しい人々を対象に無担保で少額を貸し付け、自立のための起業を促す取り組みを始めた。83年にグラミン銀行を設立。2259支店で全国の約8万5千村のうち7万3千村近くをカバー。融資総額は約3千億タカ(約5千億円)に上る。少額融資は100カ国以上で実施されている。

(2006-12-06 朝日新聞 朝刊 2外報)

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デジタル大辞泉の解説

グラミン‐ぎんこう〔‐ギンカウ〕【グラミン銀行】

ムハマド=ユヌスバングラデシュに設立した銀行。農村部の貧困層を主な対象として無担保低利の少額融資を行い、自立を支援する。借り手の多くが女性。融資の返済率が高く、採算が取れているため、政府の援助に過度に頼らず融資先を拡大することが可能で、社会的企業の典型的な成功例とされる。同銀行とユヌスは2006年にノーベル平和賞を受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

グラミン銀行
ぐらみんぎんこう
Grameen Bank

貧困に苦しむ人々に無担保で少額の資金を融資して自立を促す銀行。バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌスが設立した。グラミンとはベンガル語で「村の」という意味であり、融資を受けた農村部の多くの貧しい女性たちが行商、家畜飼育、裁縫などの小規模事業を始め、貧困から抜け出す助けとなっている。「貧者の銀行(Bank for the Poor)」ともよばれ、無担保による小口金融(マイクロファイナンス)の草分け的存在である。「貧困層の経済的・社会的基盤の構築に対する貢献」で2006年、グラミン銀行はユヌスととともにノーベル平和賞を受賞した。グラミン銀行のマイクロファイナンスは貧困対策の新手法として国際的に注目され、アジア、アフリカ、中東などの第三世界だけでなく、経済格差の拡大が指摘されるアメリカや日本にも広がっている。
 1974年のバングラデシュ大飢饉(ききん)で貧困のため飢えて死んでいく人々を目の当たりにしたユヌス(当時チッタゴン大学経済学部長)は、少額融資による貧困撲滅計画「グラミン・バンク・プロジェクト」を発案した。1976年にバングラデシュの農村部で無担保少額融資事業を始め、1983年にバングラデシュ政府認可の独立銀行(特殊銀行)として正式に発足した。融資対象は働く意欲や能力があるにもかかわらず貧困に苦しむ失業者やシングルマザーらで、大半が女性である。融資を受けた人は会員となり、5人1組の互助グループをつくり、担保が必要ないかわりに、返済の連帯責任をもつ。まず5人のうち2人に融資し、2人の返済状況をみながら残り3人に融資する。使途は起業や就労で所得を創出するために限定し、貯蓄を奨励し、生活費は融資対象としない。毎週開くミーティングに参加し、起業・就労支援、識字教育、保健衛生、家族計画などのプログラムを受けるよう義務づけられている。本部はバングラデシュのダッカ。2016年時点で会員数は約890万人、累積融資額は約267億ドル、融資の返済率は9割を超える。会員は銀行の株主となり、会員が9割以上の株式をもち、残りを政府と政府系金融機関が保有する。2007年に進出したアメリカでは10年間で累計10万人に総額9.4億ドルを融資した。日本では2018年(平成30)9月、一般社団法人「グラミン日本」(本部:東京都中央区、理事長:菅正広(かんまさひろ)(1956― )明治学院大大学院教授)が事業を開始した。[矢野 武]
『渡辺竜也著『「南」からの国際協力――バングラデシュグラミン銀行の挑戦』(1997・岩波書店) ▽坪井ひろみ著『グラミン銀行を知っていますか――貧困女性の開発と自立支援』(2006・東洋経済新報社) ▽ムハマド・ユヌス、アラン・ジョリ著、猪熊弘子訳『ムハマド・ユヌス自伝』上下(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』

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