日本大百科全書(ニッポニカ) 「グロスマン」の意味・わかりやすい解説
グロスマン(Leonid Petrovich Grossman)
ぐろすまん
Леонид Петрович Гроссман/Leonid Petrovich Grossman
(1888―1965)
ソ連の文芸学者、作家。1911年ノボロシースク大学卒業。主としてポチョムキン名称モスクワ市立教育大学で文芸理論や文学史を講ずるかたわら、プーシキン、レールモントフ、ツルゲーネフ、ドストエフスキー、レスコーフに関する論文、著書を発表。なかでもドストエフスキーに関しては膨大かつ実証性に富んだ業績を残し、世界の研究者の間で知られている。代表的著作には『ドストエフスキーに関するゼミナール』(1922)、『ドストエフスキーの詩学』(1925)、『ドストエフスキー』(1965)、『プーシキンの生涯』(1960)のほか、伝記小説『ルーレッテンブルグ』(1932)など。
[箕浦達二]
『北垣信行訳『ドストエフスキイ』(1966・筑摩書房)』▽『高橋包子訳『プーシキンの生涯』(1978・東京図書)』
グロスマン(Vasiliy Semyonovich Grossman)
ぐろすまん
Василий Семёнович Гроссман/Vasiliy Semyonovich Grossman
(1905―1964)
ロシアの小説家。モスクワ大学数学科卒業。炭鉱労働者の人生を描いた『ステパン・コリチューギン』(1940)で認められ、第二次世界大戦に『赤い星』紙記者として従軍、『人民は不滅』(1942)を書いた。戦後、戯曲『ピタゴラス学派を信ずるなら』(1946)で思想的偏向を批判され、スターリングラード(現ボルゴグラード)の戦いを扱った長編『正義の事業のために』(1952)は、党機関紙から「イデオロギー的に有害」と非難された。スターリン時代の圧政、反ユダヤ主義をついた続編『生活と運命』(1960)は1980年にようやく国外で刊行された。邦訳された中編『万物は流転する…』も旧ソ連国内では日の目をみなかった。
[江川 卓]
『内村剛介編、中田甫訳『現代ロシヤ抵抗文集第6 万物は流転する…』(1972・勁草書房)』