ケープ(読み)けーぷ(その他表記)Cape

デジタル大辞泉 「ケープ」の意味・読み・例文・類語

ケープ(cape)

袖のない肩掛けマント。日本では特に背や上腕だけをおおう短めのものをさす。
[類語]外套コートオーバーマントガウン被布合羽

ケープ(Cape)

南アフリカ共和国南西部にあった州。州都ケープタウン。独立前はイギリス領。南西部に喜望峰がある。1994年に西ケープ州など4州に分割された。

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精選版 日本国語大辞典 「ケープ」の意味・読み・例文・類語

ケープ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] cape ) 肩に被い掛けるようにして着る袖のない短いマント。防寒、防雨用や海水着の上っ張り用、化粧用、幼児用などがある。
    1. [初出の実例]「ケープ吹かせて 渚をゆけば」(出典:歌謡曲・海のメロディー(1929)〈時雨音羽〉四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケープ」の意味・わかりやすい解説

ケープ(南アフリカ共和国)
けーぷ
Cape

南アフリカ共和国南部の旧州名。南アフリカ連邦結成(1910)以前はイギリス領ケープ植民地。1993年末の暫定憲法の成立により、従来の4州は9州に再編され、ケープ州は北ケープ州、西ケープ州、東ケープ州の3州と北西州の西部地域に4分割された。アフリカ大陸最南西端部に位置し、ケープ半島の突端部には喜望峰がある。面積66万0770平方キロメートル、人口1094万4500(1995)。人口の人種別構成は白人138万、カラード(混血)296万、インド人5万3300、黒人655万となっている。州都はケープ・タウン(3分割された1993年以降は西ケープ州の州都である)。

 地勢は大別して四つに分かれ、海岸部の幅16キロメートル以内のサンドベルト地帯、内陸はランゲベルグ山脈、スワルトベルグ山脈を境としてその南側がリトル・カルー、北側がグレート・カルーとよばれる乾燥した内陸高地となっている。さらにオレンジ川北側のフライブルグおよびクールマン地域はカラハリ砂漠に続く乾燥地帯である。河川は、北の国境をなすモロポ川、オレンジ川が東から西に流れて大西洋に注ぐほかは、ほとんど内陸高地からインド洋に向かい、西からブレード川、ゴーリッツ川、フロート・ガムツー川、サンズ川、グレート・フィッシュ川、グレート・ケイ川、ウムチムクル川などがある。海岸部、とくに南西部(ケープ・タウン付近)は冬期(4~9月)に雨が多く農業に適するが、内陸部は降雨が少ないため牧羊が盛んである。主要農産物はトウモロコシ、小麦、柑橘(かんきつ)類、ブドウ、タバコなどである。鉱産資源では自由州(旧オレンジ自由国州)に接するグリクァランド・ウェストキンバリーを産地とするダイヤモンドが知られ、ほかに銅、マンガンアスベスト、鉄鉱石を産する。旧ケープ州は炭田が少ないため工業化は遅れ、農産物加工を中心とする軽工業が発達したにすぎないが、ケープ・タウン、ポート・エリザベス、イースト・ロンドンは港湾都市として重要である。

 1652年オランダ東インド会社のヤン・ファン・リーベックが東洋航路への寄港地として入植し、東インド会社の支配時代が続いた。この時代に、オランダ人と先住民コイ、マレー系奴隷との混血が進み、いわゆるカラードが形成された。1795年と1806年にイギリスがケープを占領、1814年正式にイギリス領ケープ植民地とし、以後イギリスからの入植者が増加した。入植者の増加とともに白人は土地を求めて内陸東側に侵攻した。一方、イギリスの支配を嫌ったオランダ人(ブーア人)たちは1835年内陸に移動し、トランスバール共和国とオレンジ自由国を建国した。19世紀後半オレンジ自由国のキンバリーでダイヤモンドの富鉱が発見されると、イギリスはただちに割譲を要求した。さらにトランスバール共和国のウィトワーテルスランドでの金鉱発見を契機に、イギリスがその割譲を要求したため第二次ブーア戦争(1899~1902)を引き起こした。戦後1910年ナタール植民地を加えて南アフリカ連邦が結成され、ケープはその一州となった。

[林 晃史]


ケープ(服の一部)
けーぷ
cape

ベル形の、袖(そで)のない緩やかな外衣、あるいは首から肩を覆うように垂れ下がった、服の一部。ラテン語の頭を意味するcaputに由来する語。日本語の合羽(かっぱ)はポルトガル語のcàpaの当て字。

 ケープはすでに紀元前3000年ごろのバビロニアの浮彫りの婦人像にみることができる。楕円(だえん)形の布の中央をくりぬいただけのものや、長方形の布を両肩に掛けて前で結んだり両肩ではいだものがあり、上流階級の婦人が、薄い亜麻布などのものを装飾的に用いたものと思われる。

 15、16世紀には、円形でフードのない男子用のスペイン式ケープが用いられた。裏や縁(ふち)に毛皮をあしらった豪華なもので、長さもいろいろあった。このケープは17世紀に男子の盛装の外衣として用いられた。ルイ13世時代のものは正円で膝上(ひざうえ)までの短いものであった。このころの女子の冬の外衣として、大形のパニエの上にケープ式コートが着用された。フリルやレース飾りや毛皮の縁どりのあるビロード製、あるいはレース製のもので、大形のものには左右に手出し口(ぐち)がついていた。1730年代に、西欧の男性の間でコートの上に(ビロードの)ケープを羽織ることが流行した。1830年代にはケープは防寒用衣服となるが、このころケープ式の外衣、マンテイラが出現して長い間流行した。以後、ケープは装飾的色彩の濃い衣服として残っている。

 日本では、1903年(明治36)の太陽舍刊『洋服裁縫教科書』に「ケエプスは其(その)形状すべて此廻(このまわし)(三分(さんぶ)廻し、半円(はんまる)廻し、イスパニア廻しなど)と同一なるが故に」との記述があるが、当時は「マント」のほうに押されて、「ケープ」という語はあまり用いられなかった。

 ケープには、使用目的、構成、形態、人名、地名などを名に冠した種々のものがある。スポーティング・ケープ、ハーフサーキュラー・ケープ、ギャザード・ケープ、パラティン、アルスター・ケープなどがその例である。現在のケープは、主として婦人と子供の防寒および装飾用であり、ケープを組み合わせたケープ・ドレス、ケープのついたケープ・コート、ケープ風のケープ・カラーもある。

[田村芳子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケープ」の意味・わかりやすい解説

ケープ
Cape

南アフリカ共和国の南西半(国土の約 60%)を占めた,かつての州。正式名称は Cape of Good Hope。アフリカーンス語では Kaapprovinsie。当時の州都はケープタウン。北はナミビアボツワナ,北東部はレソトに国境を接する。1652年オランダ東インド会社が進出,1814年イギリス領ケープ植民地となり,1910年の南アフリカ連邦成立以降に州となった。大部分は内陸高原の南アフリカ台地上にあり,東,南,西の海岸低地とは,海岸線から 200~300km隔たって平行に走る大断崖によってかぎられる。この大断崖のうち,レソトとの境をなすドラケンスベルク山脈は標高約 3000mあり,最も高く険しい。南部では,大断崖と海岸に沿った山脈との間に大小のカルー台地があり,東部海岸と台地との間の河川の狭長な縦谷列の発達も特色。ケープタウンを中心とする南部および南西部海岸地方は地中海性気候で,穀類やブドウの栽培,果物,タバコの集約的農業が行なわれ,両カルー台地は牧羊,東部台地は粗放的な牧牛地帯。内陸高原は鉱産資源が豊富で,工業はケープタウンおよびポートエリザベス地区で生産額の大部分を占めた。1994年,西ケープ州東ケープ州北ケープ州の 3州および北西州の一部へと分割された。

ケープ
cape

広義には,布や毛皮製の袖なし外套の総称。狭義にはその丈が短く,肩をおおい,腰丈に達する程度までのものをさす。前開きなのが特徴。現在はおもに女性用とされているが,中世,近世には男女ともに用いた。日本の合羽 (かっぱ) はケープを意味するポルトガル語カパ capaの転訛語。

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百科事典マイペディア 「ケープ」の意味・わかりやすい解説

ケープ

南アフリカ共和国南西部の地域名。同国のケープ州(正称はCape of Good Hope)を構成していたが,1994年東・西・北ケープ州に3分割された。東・西ケープ州は狭い海岸平野で,北ケープ州は内陸の高原,とくに北西部はカラハリ砂漠に続く荒地。白人と先住アフリカ人およびアジア人との混血が進み,カラード人口の比率が他州より高い。ブドウ,オレンジの栽培,牛,馬,羊の牧畜,ダチョウ飼育などが盛ん。キンバリー(鉱山)があるが,鉱産は減少傾向にある。主都ケープ・タウン(西ケープ州)周辺は工業地帯。アフリカ大陸で最も早くヨーロッパ人が定住した土地で,ケープ植民地として白人入植の拠点となった。1652年にオランダ東インド会社が植民を開始,17世紀にはユグノーが移住した。1814年英領,1910年南ア連邦の1州となった。西ケープ州582万2734人,東ケープ州656万2053人,北ケープ州114万5861人(2011)。
→関連項目グレート・トレック

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改訂新版 世界大百科事典 「ケープ」の意味・わかりやすい解説

ケープ
cape

袖なしの円形の外衣で,肩から足首までのさまざまの着丈のものがあり,フードをつけることもある。外套,雨具として男女,子どもに着用されてきた。起源は古く,最古の遺品としてはデンマークのボルム・エシェイから青銅器時代の毛織物製半円形の外衣が発掘されている。ケープが流行したのは16世紀スペインで,男子がダブレットという上衣の上に黒い絹製の短いケープを着用した。その後西欧に伝播し,17世紀には黒以外の色のものも見られた。18世紀末から19世紀にかけて大流行し,文学者,法律家,官吏,御者など広い階層に用いられた。女性はクリノリン・スタイルの上に着た。日本には16世紀にポルトガル人によってもたらされ,上杉謙信などの武将が用いた。後に合羽として庶民に普及した。
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デジタル大辞泉プラス 「ケープ」の解説

ケープ

花王株式会社が販売する整髪料のブランド名。スタイリングした髪型を長時間保つヘアスプレー。

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世界大百科事典(旧版)内のケープの言及

【岬】より

…海に突出した陸地の先端部。成因としては,山稜が沈水した場合や,硬い岩石からなるため波の浸食に抗して形成される場合が多い。また砂の堆積で突出する砂嘴(さし)の岬もある。瀬戸内海の岬の多くは沈水山稜タイプであり,太平洋に突出する犬吠埼(いぬぼうさき),伊良湖岬(いらごみさき)などは硬岩タイプである。また北海道の野付崎(のつけざき),神戸の和田岬などは砂嘴タイプである。岬を示す用語としては,岬,崎,埼,碕のほかに角,鼻などがある。…

※「ケープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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