ゲラニオール(読み)げらにおーる(英語表記)geraniol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲラニオール」の意味・わかりやすい解説

ゲラニオール
げらにおーる
geraniol

ローズ香を有する代表的非環式モノテルペンアルコール。パロマローザ油、ゼラニウム油シトロネラ油など多くの植物精油主成分であり、ゼラニウム油から得られるアルコールとしてゲラニオールと命名された。ゲラニオールの立体構造はtrans(E)-型である。その立体異性体であるネロールの立体構造はcis(Z)-型であり、天然に存在するが、香調が異なり使用量は少ない。

 天然品のゲラニオールはシトロネラ油を10~20段の理論段数をもつ分留塔で減圧蒸留し、シトロネラール留分とゲラニオール留分とに分ける。ゲラニオール留分をアルカリ処理してから再蒸留して製品とする。現在では合成品のゲラニオールが主流であり、次の3種のプロセスによって工業的に製造されている。

(1)アセトンアセチレン法(ロッシュ法) アセトンとアセチレンを出発原料として合成する。工程は長いが、収率がよく、生成物の精製も容易である。

(2)イソプレン法(クラレ法) 石油C5留分から得られるイソプレンを出発原料とし、塩化プレニル、メチルヘプテノン、リナロールを経てゲラニオールを合成する。

(3)α(アルファ)-ピネン法(グリドコGlidco社) テレビン油から大量に得られるα-ピネンを原料としてリナロールを合成し、これを異性化してゲラニオールを合成する。

 バラ系調合香料の主体であり、その他のフローラル系調合香料としても大量に使用される。また、シトラスレモンライムなどの柑橘(かんきつ)類)、ティー、フルーツ、タバコなどのフレーバーにも用いられ、ヨノン、ビタミンEおよびAの製造原料でもある。

[佐藤菊正]


ゲラニオール(データノート)
げらにおーるでーたのーと

ゲラニオール

 分子式 C10H18O3
 分子量 154.3
 融点  ―
 沸点  229.7℃
 比重  0.89
 屈折率 (n) 1.4784
 引火点 101℃

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改訂新版 世界大百科事典 「ゲラニオール」の意味・わかりやすい解説

ゲラニオール
geraniol



パルマローザ油,シトロネラ油,ラベンダー油,レモングラス油,ゼラニウム油などの多くの精油に含まれる,バラのような甘いおだやかな香気をもつ無色の液体。重要な香料の一つである。化学式C10H18Oの非環式モノテルペンアルコール。2の位置の二重結合がトランス型で,シス型のネロールとは異性体である。沸点229.7℃,比重d416=0.8812,屈折率nd16=1.4784,引火点101℃。水にわずかに溶け,アルコール,グリコールには可溶。空気中で酸化により淡黄色に着色するので,密栓をして保存する。上記の精油から分留によってゲラニオール留分をとり,これに水酸化ナトリウム溶液を加え,共存するシトロネラールを重合除去し,さらに蒸留すると得られる。またシトラールの接触還元法,テレビン油を分留して得たβ-ピネンからミルセンを経ての合成法もある。

 バラ系調合香料として利用され,化粧品,セッケン,芳香剤に広く用いられる。また食品香料として,アップル,レモン,シナモン,ストロベリー等のフレーバー成分ともされる。
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化学辞典 第2版 「ゲラニオール」の解説

ゲラニオール
ゲラニオール
geraniol

C10H18O(154.25).非環式モノテルペンアルコール.バラの精油の主成分であるが,そのほかの植物の精油中にも,しばしば見いだされる.ネロールはこれの幾何異性体.さまざまなモノテルペン類が生合成されるときの中間体.沸点114~115 ℃(1.6 kPa).0.89.1.4766.脂肪族エステルにして香料に用いられる.[CAS 106-24-1]

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百科事典マイペディア 「ゲラニオール」の意味・わかりやすい解説

ゲラニオール

化学式はC1(/0)H18O。テルペンアルコールの一つ。遊離状またはエステルとして各種精油の主成分をなす,バラの香りのある無色の液体。沸点229.7℃。工業的にはシトラールのナトリウム還元またはリナロールをホウ酸と加圧下に加熱して合成する。バラ系香料として重要。
→関連項目シトロネロールテルペン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲラニオール」の意味・わかりやすい解説

ゲラニオール
geraniol

化学式 C10H17OH 。非環式モノテルペンに属するアルコール。ゲラニオールはトランス形で,沸点 230℃。シス形はネロールと呼ばれ,沸点 225℃である。いずれも植物精油中に含まれる。ゲラニオールは水に不溶,アルコール,エーテルとは混り合う油状液体で,ばら油,ゼラニウム油,シトロネラ油に主成分として含まれ,ばら香をもつ香料として重要。また,ゲラニルピロリン酸エステルはテルペノイド,カロテノイド,ステロイドなどの生合成中間体と考えられている。

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栄養・生化学辞典 「ゲラニオール」の解説

ゲラニオール

 C10H18O (mw154.25).

 バラ油などの精油にあり,芳香をもつため,食品添加物(着香剤)として利用される.

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世界大百科事典(旧版)内のゲラニオールの言及

【バラ(薔薇)】より

…とくにダマスクバラは芳香がよく,現在でも用いられている。主成分としてはゲラニオールgeraniol,シトロネロールcitronellol,フェニルエチルアルコール,ネロールnerol,リナロールlinaloolなどを含む。種や品種によって芳香はさまざまに異なり,ローザ・モスカータは麝香(じやこう)に似た香り,ティー・ローズは紅茶の香り,また果実や薬味風の香りをもつもの,葉にニッケイのようなにおいのあるバラなどがあり,微量精油成分も少しずつ違う。…

【バラ(薔薇)】より

…とくにダマスクバラは芳香がよく,現在でも用いられている。主成分としてはゲラニオールgeraniol,シトロネロールcitronellol,フェニルエチルアルコール,ネロールnerol,リナロールlinaloolなどを含む。種や品種によって芳香はさまざまに異なり,ローザ・モスカータは麝香(じやこう)に似た香り,ティー・ローズは紅茶の香り,また果実や薬味風の香りをもつもの,葉にニッケイのようなにおいのあるバラなどがあり,微量精油成分も少しずつ違う。…

【レモングラス】より

…また,葉をスープやカレーの芳香づけにも用いる。本種と同属のコウスイガヤ(別名シトロネラソウ)C.nardus Rendl.(英名citronella)は全体がさらに大型で,ゲラニオールを主成分とするシトロネラ油という精油を含む。近縁属のベチベルとともに重要な香料植物である。…

※「ゲラニオール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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