改訂新版 世界大百科事典 「シトラール」の意味・わかりやすい解説
シトラール
citral
強いレモン様香気をもつ非環式モノテルペンに属するアルデヒド。レモン油,レモングラス油,マンダリン油をはじめ多くの精油中に存在する。2種の立体異性体が存在し,シス型をネラール,トランス型をゲラニアールともいう。レモングラス油などに存在する天然シトラールは,trans-シトラール80~90%,cis-シトラール10~20%の混合物である。無色の液体で,大気中,日光下で淡黄色に変色しやすい。比重0.89,沸点228℃,引火点92℃。アルコールに可溶,水には不溶である。天然精油から精製分離をするか,ゲラニオールまたはネロールを銅・銀系触媒を用い300℃で空気酸化して合成する。セッケン,コロン用香料,調合香料用に広く用いられる。またフレーバー成分として,レモン,ライム,オレンジ,グレープフルーツ,グレープ,アップル,チェリーというように多くの食品香料に使用されている。そのほか,イオノン(スミレの香り),フィトール,ビタミンA,Eなどの合成原料としても重要である。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報