コウノトリ(読み)こうのとり(英語表記)stork

翻訳|stork

共同通信ニュース用語解説 「コウノトリ」の解説

コウノトリ

ロシアや中国の極東地域に生息する渡り鳥。白と黒の羽や赤い脚が特徴で、成鳥が両翼を広げると2メートルの大きさになる。日本では明治時代以降の乱獲や農薬普及で生息場所が失われて減少。1956年に国の特別天然記念物に指定されたが、71年に兵庫県豊岡市で野生個体の最後の1羽が死んで絶滅した。85年、兵庫県が旧ソ連から6羽を譲り受けて繁殖に成功し、2005年に初めて放鳥。現在は千葉県野田市と福井県越前市にも飼育施設があり、放鳥に取り組んでいる。

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こうのとり

直径4・4メートル、全長10メートルの円筒形無人補給機。高度400キロの国際宇宙ステーションまで物資を届ける。機体は地上と同じ1気圧の与圧部と、真空の非与圧部で構成され補給能力は世界最大級となる。ステーションに最大45日間ドッキングでき、その後は不要品を積み込んで大気圏に突入して燃え尽きる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウノトリ」の意味・わかりやすい解説

コウノトリ(鳥)
こうのとり / 鸛
stork

広義には鳥綱コウノトリ目コウノトリ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのコウノトリCiconia ciconiaは、全長約1.15メートル。英名をwhite storkというように全身白色で、風切羽(かざきりばね)(次列風切の外弁を除く)および初列雨覆(あまおおい)、大雨覆だけ黒い。足は赤色。旧北区に分布し、大きさあるいは嘴(くちばし)の色の違った3亜種に分類される。日本、朝鮮半島、中国北部、沿海州に分布するものはコウノトリC. c. boycianaとよばれ、大形で嘴が黒い。ヨーロッパ、北アフリカで繁殖する亜種は、小形で嘴が赤く、シュバシコウC. c. ciconiaの名がある。中央アジアには、それより大形で嘴の赤いオオシュバシコウC. c. asiaticaが分布する。大陸のものは冬は中国南部、インド北部、アフリカで越冬するが、日本のものは留鳥である。

 日本では、かつて全国にかなりたくさんすんでいたらしく、江戸時代には浅草の観音堂や市内の大きな寺院の屋上で営巣していたという記録がある。しかし、明治の中ごろから急激に減少し、1956年(昭和31)には特別天然記念物に指定され、1958年の調査では兵庫県下に7巣15羽、福井県下に2巣6羽が数えられるだけとなり、その後も減り続けて、現在は野生で繁殖するものはなく、中国やロシアから冬鳥としてときどき渡来するだけである。日本のコウノトリが急激に減少した原因は、おもに狩猟による殺戮(さつりく)であるが、絶滅するに至ったのは、第二次世界大戦後急速にコウノトリの生息環境が破壊されたことと農薬使用による水銀中毒であった。営巣木であるマツが伐採され、土地開発・河川改修で生息地が激減、彼らの餌(えさ)となるドジョウカエルなどの生物は水田から姿を消していった。1971年には、わが国最後の野生のコウノトリが兵庫県豊岡盆地で絶滅した。このような状況を受けて、コウノトリの保護増殖活動が展開され、1988~89年にはソ連(当時)から贈られたペアで飼育下での繁殖に成功、以降も保護増殖の努力が続けられる。2002年(平成14)には保護下での飼育数が100羽を超え、また同年8月5日には兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(1999年開園、豊岡市)に野生のコウノトリが1羽飛来、1年以上定着している。現在、同公園が中心となりコウノトリとともに生きる地域社会を目ざして将来の野生復帰計画を推進している。

 コウノトリの好む生息環境は、餌となる生物が生息できる水田や湿地が多い開けた所で、人家の近くでも繁殖する。巣は高いマツなどの頂上につくられ、小枝を寄せ集めただけのものだが、直径1.5~2メートルの大きさがある。古くから「松上の鶴(つる)」として絵画に描かれているのはツルではなく、コウノトリである。一方、ヨーロッパのシュバシコウは、人家の屋根や煙突の上に営巣するのが普通で、毎年越冬地から同じつがいが同じ家に帰ってきて繁殖する。この鳥は、一家に幸運をもたらすとか、赤ん坊を連れてくるという言い伝えのために、人々に非常によく親しまれ、またたいせつにされているが、工業化の影響で、その姿をみられなくなった地方が少なくない。しかし、東ヨーロッパではまだかなりの数が生き残っている。1腹の卵数は3~5個、抱卵・育雛(いくすう)は雌雄とも行う。食物はおもに動物食で、魚、カエル、タニシバッタなどの昆虫類を主食とし、みつければ小形のヘビ、ネズミ、小鳥の雛(ひな)なども食べる。

[森岡弘之]

科の特徴、種類、生態

コウノトリ科Ciconiidaeは6属17種に分類され、前出のコウノトリ属Ciconiaのほか、トキコウMycteria、スキハシコウ属Anastomus、セイタカコウ属Ephippiorhynchus、ズグロコウ属Jabiru、ハゲコウ属Leptoptilosなどの仲間を含む。世界の温帯・熱帯に分布するが、アジア南部とアフリカにすむ種が多い。一般に大形の渉禽(しょうきん)で、頸(くび)と足と嘴は長く、外形態はツル類に似ている。しかし、ツル類とは解剖学的特徴や習性の共通点が少なく、類縁関係はむしろ遠いと考えられている。コウノトリ類の特徴の一つは鳴管が退化していることである。そのため声を出すことはほとんどできず、かわりに上下の嘴をたたき合わせて、カタ、カタ、カタッと連続して聞こえる大きな音(クラッタリング)を出す。この音は繁殖期にとくによく聞くことができる。またこの時期には、雌雄によるお辞儀のし合いをはじめ、コウノトリ類独特のディスプレーが演じられる。食性は多くのものが動物食だが、ハゲコウ類の3種は腐肉を食べる。下に湾曲した嘴のあるトキコウ類は、おもに魚食である。上下の嘴を閉じてもすきまができるスキハシコウ類は、食性もいちばん特殊化していて、大形のタニシを常食としている。繁殖習性は、コウノトリとだいたい同じであるが、トキコウやスキハシコウはしばしば数百羽以上の大集団をつくって繁殖する。ナベコウC. nigraやセイタカコウE. asiaticusは、地方によっては岩棚の上に営巣することを好む。

[森岡弘之]

民俗

ドイツなど北ヨーロッパでは、赤子はコウノトリによってもたらされると伝えている。沼、池、泉などの水の中、あるいは岩山の洞穴から赤子をみつけてくるといい、もともとはコウノトリが、これらから生まれる赤子の霊魂を運んでくるという信仰であったらしい。またドイツでは、コウノトリが家の上を飛ぶのは赤子が生まれる前兆であるともいい、デンマーク、オランダなどでは、屋根に巣をつくると縁起がよいといって喜ぶ。逆に、巣を離れるのは悪疫や大災害の前触れであるとする。中国では、コウノトリは群れて飛んで雨を降らせるといい、コウノトリの子をとると日照りになるといってたいせつにする。

 埼玉県鴻巣(こうのす)市の氷川神社(ひかわじんじゃ)や岡山県倉敷市琴浦(ことうら)の八幡宮(はちまんぐう)は別名を鴻宮(こうのみや)といって、コウノトリを神に祀(まつ)ったと伝えている。神域の木にある巣に神が卵を呑(の)もうと大蛇になって登ったところ、コウノトリが蛇を突き殺したので、新しく神として崇(あが)めたという。千葉県市川市の鴻ノ台(国府台)にあった鴻宮は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が川を渡るとき、瀬踏みをして案内したコウノトリにすみかとして与えたのにちなむと伝える。その挙動を神秘とした伝説はほかにもあり、兵庫県豊岡(とよおか)市の鴻湯は、足をけがしたコウノトリが治療しているのをみて発見したという。なお縁起物に、ツルが松の枝に巣をつくっている図柄があるが、これは生態上コウノトリを誤解したものである。古くはコウノトリを縁起のよい鳥として考えていたことが推定される。

[小島瓔

『但馬コウノトリ保存会・神戸新聞社編『コウノトリ誕生』(1989・神戸新聞総合出版センター)』『池田啓総監修『週刊 日本の天然記念物22 コウノトリ』(2002・小学館)』『加藤紀子著『コウノトリ大空に帰る日へ』(2002・神戸新聞総合出版センター)』



こうのとり(宇宙ステーション補給機)
こうのとり

宇宙ステーション補給機

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改訂新版 世界大百科事典 「コウノトリ」の意味・わかりやすい解説

コウノトリ (鸛)

コウノトリ目コウノトリ科の鳥,またはコウノトリ科に属する鳥の総称。コウノトリCiconia boyciana(英名white stork)は全長約115cm。ツル大の大型白色の鳥で,風切羽と初列および大雨覆いのみ黒く,脚が赤い。世界に3亜種があり,日本,朝鮮半島,中国東北部,沿海州に分布するコウノトリC.b.boycianaは大型でくちばしが黒色である。ヨーロッパと北アフリカで繁殖するものは小型でくちばしが赤く,シュバシコウ(朱嘴鸛)C.b.ciconiaと呼ばれる。中央アジアのものはシュバシコウより大型で,くちばしが赤く,オオシュバシコウC.b.asiaticaという。この種は一般に渡り鳥で,冬はアフリカ,インド北部,中国南部などに渡る。とくにシュバシコウは顕著な渡り鳥で,群れをつくって渡りをする。日本のものは留鳥で,かつては全国に広く分布していて,江戸市中で繁殖していた記録も残っている。しかし,1900年代の初めには本州の数ヵ所で繁殖するだけとなり,現在では野生状態で繁殖するものがまったくいない。ただし,冬季に中国から飛来する個体がときどきいる。日本のコウノトリが明治の中ごろに急激に減少した原因はおもに狩猟による殺戮(さつりく)であるが,絶滅するにいたったのは農薬による卵の汚染であったと考えられる。水田や湿地の多いところにすみ,魚類,カエル,タニシ,昆虫類,小型の哺乳類などを食べる。巣は高い木の頂上に小枝を集めてつくり,毎年同じ巣を補強して使うために,大きな巣は外径3m以上になる。休むときは高い木や電柱の上にとまる。いわゆる〈松上の鶴〉はツルではなく,コウノトリである。1腹の卵数はふつう3~4個。雌雄とも巣づくり,抱卵,育雛(いくすう)に従事する。なお,ヨーロッパではシュバシコウは人家や教会の屋根の上に営巣している。これは中世以来この鳥は一家に幸運をもたらすと信じられ,手厚く歓迎されたためである。毎年同じつがいが越冬地から戻ってくるという。

 コウノトリ科は6属17種の大型の渉禽(しようきん)類より成り,トキコウ,スキハシコウ,セイタカコウ,ハゲコウなどの仲間を含む。分布は世界的だが,熱帯アジアとアフリカにすむ種が多い。日本には,コウノトリのほかに,ナベコウC.nigraがまれな冬鳥として渡来する。全長76~152cm。脚,頸,くちばしが長く,一見ツル類に似ているが,両者の間の類縁関係はかなり遠く,解剖学的特徴も習性も違っている。多くのものは水辺を好むが,種によっては水から離れたところにすんでいる。動物食だが,ハゲコウ類は腐肉食である。コウノトリ類は鳴管が未発達で,鳴声のかわりに上下のくちばしをたたき合わせて音を出す。この音は飛行中にも立てるが,巣に帰ったときよく発する。巣は単独か集団で樹上につくり,一部の種は岩壁の上でも繁殖する。雛は晩成性で,長い期間巣にいて両親の保育を受ける。
執筆者:

コウノトリが赤ん坊をつれてくるという俗信はとくにドイツ北部と中部に広がっている。近くの泉や池からよい子は背中にのせ,悪い子はくちばしにくわえて運んでくるという。一説によるとコウノトリは〈赤ん坊の泉〉を支配する地母神ホールダの使者とされ,幸運と祝福を運ぶ役目をもつ。またコウノトリは遠くの国で人間に姿を変えて暮らしているという俗信もあり,童話にそれは反映している。コウノトリは〈暖かい日を運んでくる〉といわれるように,春に南から飛来して人家の近くに巣をつくり,雛を育て,秋になると南の国に帰るという習性のため,昔から人間の生活と密接に関係づけられているのである。この鳥の巣のある家は落雷や火災から守られ,長寿と富が約束されるという。その家には雛の数だけ子どもを授かる。この鳥は予言の力をもち,天気を占うにも役だった。また,民間でこの鳥が貞節のかがみとされるのは,雛に対するこまやかな母性愛のためであろう。
執筆者:


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウノトリ」の意味・わかりやすい解説

コウノトリ

(1) Ciconia boyciana; oriental stork コウノトリ目コウノトリ科。全長 100~129cm。風切,雨覆,小翼羽が黒色で,ほかの部分は白色。はまっすぐに伸びる大きな鶴嘴形をしている。鳴管筋の発達が悪いので成鳥は鳴かず,嘴を連続的に打ち合わせて音を出すクラッタリングをディスプレイやコミュニケーションの手段として用いている。脚は赤い。ロシア東部や東アジア北部に繁殖分布し,中国南部などに渡って越冬する。日本では,かつて全国各地で繁殖していたが,1964年を最後にの孵化記録がなく,繁殖個体群としては絶滅した。これは狩猟や営巣場所の森林伐採で減少したうえ,第2次世界大戦以後の無秩序な農薬の大量散布によって,沼地,湿地などにすむザリガニ,カエル,魚類などが汚染され,餌であるこれらを通して農薬がコウノトリの体内に蓄積されたためである。毎年 1~2羽がユーラシア大陸から渡ってきて越冬する。近年,中国やロシアから提供された鳥を人工増殖して野外に放鳥し,自然繁殖もするようになり,徐々に野生の生息数が増えている。
(2) Ciconiidae; storks コウノトリ目コウノトリ科の鳥の総称。19種からなり,どの種も全長が 1mをこす大型の鳥で,嘴や脚,首が長い。種によって異なるが,樹上や崖,人家の屋根の上などに営巣する。温帯から熱帯地域に分布し,水辺や草地に生息する。さまざまな動物質のものをとる。なかでもハゲコウ類(→オオハゲコウ)は,大型の肉食獣が狩りとった獣類の食べ残しや自然死した獣類の腐肉を好んで食べる。

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百科事典マイペディア 「コウノトリ」の意味・わかりやすい解説

コウノトリ

コウノトリ科の鳥。翼長63cm。体は白く,翼は大部分黒色,脚は赤い。くちばしは東アジア産のものは黒褐色であるが,ヨーロッパ産の亜種シュバシコウでは赤い。ヨーロッパ,北アフリカ,中国北西部,ウスリー,朝鮮半島で繁殖し,北部のものは冬,南へ渡る。東アジアのものを別種とする説もある。日本では明治以前には各地で見られたが,1959年,兵庫県豊岡市での繁殖を最後に絶滅。大陸産のものがまれに渡来する。マツやその他高木上に営巣し,古来〈松上の鶴〉と誤称された。水田や湿地で魚類,カエル等を食べ,サギ類と違って飛ぶ時にはくびを長くのばす。その後1988年に多摩動物公園,1989年に兵庫県豊岡市で人工繁殖に成功し,飼育数が増加している。2005年には人工飼育中のコウノトリを再び野生へ戻す放鳥が同市で行われた。特別天然記念物。絶滅危惧IA類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目ナベコウ

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知恵蔵mini 「コウノトリ」の解説

こうのとり(HTV)

宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle、略称・HTV)の愛称。国際宇宙ステーション(ISS)へ各種装置や衣料・食糧などを輸送する日本の無人宇宙補給機で、高さ9.6メートル、直径4.4メートル、最大積載容量6トン。1995年より同機の開発が始められ、2009年9月11日、技術実証機「HTV1」がH-IIBロケットに搭載され打ち上げられた。「こうのとり2号機」は11年1月22日に、「こうのとり3号機」は12年7月21日に種子島宇宙センターで打ち上げられ、いずれも補給任務に成功した。以降も年に1回ほどISSへの補給を行う予定で、13年6月には「こうのとり4号機」が報道公開された。

(2013-6-25)

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デジタル大辞泉プラス 「コウノトリ」の解説

こうのとり

JR西日本が運営する特急列車。新大阪駅(大阪府)から福知山駅(京都府)・豊岡駅・城崎温泉駅(兵庫県)を結ぶ。

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