改訂新版 世界大百科事典 「コウボウムギ」の意味・わかりやすい解説
コウボウムギ
Carex kobomugi Ohwi
海岸の砂浜に群落を作って生えるカヤツリグサ科のスゲの一種で,初夏に太い雄の穂に黄色いおしべが著しくつき,夏から秋には雌の穂の実が熟す。和名は弘法麦の意味で,熟した穂が麦の穂に似ているからであり,異名の筆草(ふでくさ)は,根茎の節に茶色の繊維が太く集まって筆の穂先の形になるからいう。強剛な多年草で,茶色で長い根茎を四方に伸ばす。葉は幅1cmくらいで硬く,縁はざらつき,外側へ反って広がる。雌雄異株で,雄花序・雌花序ともに楕円形で,葉の中心から出る高さ20cmほどの太い茎の先につき,多数の花をつける。果胞は長さ1cmくらいで,3個の柱頭を出し,熟して茶色になり,長い嘴がある。北海道を北限とする日本全土の海岸から中国の黄海と東シナ海の沿岸にみられ,南限は台湾である。筆の形をした根茎を雅味を好む人が用いたといわれるが,最近中国では,繊維の多い茎や葉を製紙原料とする。
コウボウシバ(弘法芝)C.pumila Thunb.は同じく砂浜に生えるスゲで,コウボウムギよりずっと小さく,1本の茎に雄と雌の穂が数個つく。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報