日本大百科全書(ニッポニカ) 「ココム」の意味・わかりやすい解説
ココム
ここむ
COCOM
対共産圏輸出統制委員会Coordinating Committee for Export Controlの略称。1991年12月にソ連が崩壊し、冷戦が終わりを告げたことにより、1994年3月に解散した。
第二次世界大戦後の冷戦時代に、共産圏諸国に対する戦略物資の輸出を規制するためにアメリカを中心として自由主義諸国間でつくられた非公式の協議機関。戦後、東西対立が激化するなかで、アメリカは1948年に共産圏諸国封じ込め政策の一環として、対共産圏諸国禁輸リストを作成した。翌1949年にアメリカは北大西洋条約機構(NATO(ナトー))加盟国と協調して対共産圏諸国輸出規制を効果的に行うために協議委員会を設立し、1950年にその執行機関として設立されたのがココムである。1957年にはチンコム(対中国輸出統制委員会)を吸収した。ココムの参加国はアイスランドを除くNATO加盟15か国(当時)と日本、オーストラリアで、本部はパリに置かれていた。ココムは輸出規制対象品目のリスト(ココム・リスト)を作成して、加盟国に対し共産圏諸国および共産圏周辺地域(アフガニスタン、ビルマ〈ミャンマー〉、カンボジアなど)に対する戦略物資の輸出の基準を提示し、各参加国はこのココム・リストに基づいて各国の輸出管理制度の枠内でその適用を行った。ココム・リストには一般、兵器、原子力、監視品の各リストがあり、技術開発に応じて再検討されたが、その具体的内容は1988年まで非公開であった。1960年代以降ココム・リストの適用は漸次緩和の方向にあったが、1980年代に入ると、ソ連のアフガニスタン侵攻、大韓航空機撃墜事件などによる対ソ経済制裁の一環として強化される傾向にあった。日本は外国為替(かわせ)及び外国貿易管理法(外為法(がいためほう)、1997年改正され「外国為替及び外国貿易法」となる)、輸出貿易管理令、輸出貿易管理規則、戦略物資輸出承認等事務処理要領などによってココム・リストの内容を実施した。
冷戦の終結に伴って、輸出規制品目の縮小や規制対象国の除外などが行われた。1993年11月に開催されたココム高級事務レベル協議で、冷戦を前提としたココムの解体が協議され、1994年3月に解散した。その後1996年7月に、通常兵器および軍事転用可能な汎用品、技術の輸出を監視するための輸出規制体制としてワッセナー協約Wassenaar Arrangementが締結された。当初の加盟国は旧ココム参加国、ロシア、東欧諸国、スイス、オーストリアなどの33か国で、約110品目の通常兵器などを地域紛争国やテロ支援国に輸出することを規制対象としていた。
[横川 新]