日本大百科全書(ニッポニカ) 「コバンヒメジ」の意味・わかりやすい解説
コバンヒメジ
こばんひめじ / 小判非売知
Indian goatfish
[学] Parupeneus indicus
硬骨魚綱スズキ目ヒメジ科に属する海水魚。日本海では山口県から九州北岸、太平洋側では八丈島、千葉県館山(たてやま)湾から屋久島(やくしま)、南西諸島、台湾、広東(かんとん)省、サモア諸島、カロリン諸島など西太平洋、インド洋に分布する。体は伸長し側扁(そくへん)する。背びれの起部付近でもっとも高く、体高は体長のおよそ28~31%。頭の外郭は比較的急に傾斜し、目の前方ですこし盛り上がる。頭長は体長のおよそ30%。吻(ふん)は短く、頭長は吻長の1.7~2.0倍。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は吻長のほとんど中間点に達する。上下両顎に1列の互いによく離れた円錐歯(えんすいし)がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨には歯がない。下顎の前端付近に1対(つい)の細長いひげがあり、畳むと前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁下をわずかに越える。頭長はひげの長さの1.3~1.5倍。鰓耙(さいは)は上枝に5~7本、下枝に18~21本。鱗(うろこ)は大きく、側線鱗(りん)数は27~28枚。背びれはよく離れた2基で、第1背びれは8棘(きょく)、第2背びれは9軟条で、第1背びれの第1棘はきわめて短い。臀(しり)びれは7軟条。尾びれの後縁は深く二叉(にさ)する。体色は瞬時に変えることができるが、普通、背側面では緑褐色から赤褐色で、腹側面では淡桃色または白色である。各鱗の縁辺は暗色。尾柄(びへい)の中央部に眼径より大きくて丸い黒色斑(はん)があり、下3分の1は側線にかかる。第1背びれの中央下から第2背びれ起部の下の側線上に大きな楕円(だえん)形の黄色斑紋がある。目から淡青色線が不規則に放射し、目の下縁から吻端に向かう1本は長い。第2背びれと臀びれに淡青色の斜線が不規則に走り、尾びれにも同様の線が鰭条(きじょう)と並行に走る。沿岸のサンゴ礁や岩礁近くの砂底、砂泥底、藻場(もば)に単独または数尾で群れをつくる。他のヒメジ類、アイゴ、ハマフエフキ、スジベラCoris dorsomaculaなどと混成することがある。おもにカニ類、エビ類、端脚(たんきゃく)類などの甲殻類、小さな頭足類、多毛類、小魚などを食べる。最大体長は40センチメートルほどになる。刺網(さしあみ)、定置網、釣りなどで漁獲され、刺身、煮魚、オイル焼き、フライなどにするとおいしい。和名は体側にある小判形の黄斑に由来する。沖縄ではジンバーとよぶ。
[尼岡邦夫 2022年2月18日]