改訂新版 世界大百科事典 「コンピューター会計」の意味・わかりやすい解説
コンピューター会計 (コンピューターかいけい)
コンピューターを利用した会計処理システムで,EDP(electronic data processing)会計ともよばれる。会計業務は,原始伝票への数字・文字の記入,収集,計算,転記,報告がほとんどであり,これら一連のプロセスを組織的に行うことは,現代のディジタル型コンピューターにあっては,ほとんど人手を介在させずに実行可能となっている。コンピューターの技術進歩やデータ伝送方式の進歩により,会計業務はますます機械化され,迅速かつ経済的になり,正確性が高められるようになっている。しかしながら,こうしたことの達成にはいくつかの前提条件を満たすことが必要である。つまり,(1)コンピューター化に先だって,現状の会計業務処理手続を徹底的に分析し,よりよい手続がないかなどのシステム分析を適切に行うこと,(2)計算手続の画一化,勘定科目等のコード化,伝票・帳簿・報告書の標準化をすすめること,(3)コンピューター会計における記録方式としての紙テープ,磁気テープ,磁気ディスク,フロッピーディスクなどに記録された会計情報(これらは人間が判読不能である)を法律上・会計規則上,正規の会計情報と同等のものとして認めてもらうこと,(4)コンピューターも機械であるから,停電,故障,プログラムミスなどや例外的取引の発生などで,処理不能なことも起こる。コンピューターは,所定の計算処理はほぼ間違いなく実行するが,例外事項や異常データの認識,誤謬の識別・訂正は,指定のないかぎり行わない。よって,実用的コンピューター会計のプログラム作成には,こうした誤謬発見・防止・訂正の手続を十分に組み込むことが必要である。
会計業務をどの程度までコンピューター化すべきかは,会計情報の利用目的,企業規模,経営合理化の要請などを総合的に考慮したうえで決められるべきである。実際には,事務合理化,人件費高騰,財務公開制度に伴う報告資料の複雑多様化,経営管理システムの高度化などに伴い,大企業を中心としたコンピューター・システムの大型化,データ通信システムの拡充などがますます進展しつつあり,会計業務に与える影響と効果も大きい。中小企業の会計業務も,私有の中小型コンピューターのバッチ処理方式による活用から,工場や支店に端末機を設置することによるオンラインあるいはインライン処理方式などへの進展がみられる。また,とくに自社所有のコンピューターをもたずとも,情報処理会社や会計事務所のコンピューターを共同利用する方式もますます増大しつつあり,さらに80年代に入ると,パーソナルコンピューター(パソコン)などの安価で高性能な機械が普及しはじめ,会計業務の迅速化・省力化に貢献している。会計業務のコンピューター化の範囲についていえば,売上取引,仕入取引などの取引件数が多量なものをまず手がけ,漸次,給与計算,株主台帳,固定資産台帳,商品在庫元帳などに及び,最終的には現金・預金出納帳,原価計算,月次・年次試算表と仮決算に及ぶというのが通常のやり方である。
執筆者:佐藤 宗弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報