コンプトン効果により光子が散乱されることをいい,散乱により光子のエネルギーの一部は反跳電子に移るので,散乱光子は入射光子よりエネルギーが小さくなる.そのため,非干渉性散乱ともよばれる.自由電子による散乱に対する断面積は,クライン-仁科の式により与えられるが,光子のエネルギーが物質内電子の束縛エネルギーに比べてそれほど大きくない場合には,電子の束縛の影響が現れ,クライン-仁科の式からずれてくる.この現象を利用した物質構造の研究が近年盛んになってきた.クライン-仁科の式によると,コンプトン散乱は光子エネルギーが小さくなった極限で,古典的なトムソン散乱になる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ここにm0は電子の静止質量で,h/m0c=2.426×10-12mは電子のコンプトン波長と呼ばれる。散乱によってX線の波長が延びる(コンプトン散乱と呼ばれる)(図1)のは,そのときX線が電子をはねとばしてエネルギーhνの一部を失うため振動数νが減るからである。その減少は正面衝突でφ=180゜となるとき最大だが,それでも波長の延びは2h/m0c≌5×10-12mにしかならないから,X線(λ≌10-8~10-13m)くらい波長の短い光でないと観測にかかりにくいわけである(図2)。…
※「コンプトン散乱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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