イギリスの18世紀後半から19世紀初めにかけて流行した一群の小説。恐怖小説ともいう。中世のゴシック風の屋敷、城、寺院、修道院などを背景に超自然的怪奇性を主題とする。人物、道具立てに一定の型があり、たとえば、迫害されて長年の間監禁された女性に、圧制的な夫や叔父などが配される。屋敷や財産がその間強奪されて正統な相続人が苦難を味わう。舞台はイタリア、フランス、スペイン、ドイツなどで、迫害の一手段として宗教裁判が用いられることもある。古めかしい道具立てながら、当時の新しい美意識、政治感覚によって支えられた。創始者はホレス・ウォルポールで、『オトラントの城』(1764)はこの種の小説の原型をなす。以後、クレアラ・リーブClara Reeve(1729―1807)の『老イギリス男爵』(1777)を経て、1790年代に絶頂期を迎える。この時期を代表する女流作家がアン・ラドクリフで、その代表作『ユードルフォの怪奇』(1794)、『イタリア人』(1797)は広範な読者を得た。これらの作品にはいずれも迫害される女主人公が登場し、S・リチャードソンに始まる小説の系譜に属する。フランス革命に共鳴したウィリアム・ゴドウィンの『ケイレブ・ウィリアムズ』(1794)も迫害を受ける人物を扱い、ゴシック小説とみなされる。マシュー・グレゴリー・ルイスMattew Gregory Lewis(1775―1818)の『修道士』(1796)はドイツ文学の影響が強く、近親相姦(そうかん)、親殺しなどセンセーショナルな主題が扱われている。メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(1818)やチャールズ・マチューリンCharles Robert Maturin(1782―1824)の『放浪者メルモス』(1820)など後期ゴシック小説は作者の分身的人物の創造を特色とし、作家の目は人間心理の内奥に向けられている。初期アメリカ小説は、E・A・ポー、N・ホーソンらをはじめゴシック小説と密接な関係にある。
[榎本 太]
『小池滋他編『ゴシック叢書30 城と眩暈――ゴシックを読む』(1982・国書刊行会)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新