イタリアの劇作家。在来の仮面即興喜劇(コメディア・デラルテ)の類型的人物を排して、卑俗な茶番劇を脱し、18世紀の合理的精神と市民的リアリティに基づく性格喜劇を提供し、演劇の革新に貢献した。2月25日ベネチアに生まれる。1731年パドバ大学で法律を修めて弁護士となり、イタリア各地を遍歴するかたわら劇作に精進する。48年法曹界を離れ、メデバック劇団、続いてサン・ルカ劇場の座付作者となり、共通語およびベネチア方言による傑作を矢つぎばやに舞台にのせた。代表作に『二人の主人を一度にもつと』(1745)、『コーヒー店』(1750)、『宿屋の女主人』(1753)、『広場』(1756)、『田舎者(いなかもの)』(1760)、『キオッジャ騒動』(1762)、『扇』(1763)があり、現在もさまざまな演出により上演されている。
作品は平等を自明の理として、軍隊、法廷、貴族に対する風刺、対照的に女性の権利や農民、漁民の仕事の擁護など庶民の生活感情に共感を示す。このため保守層から政治的圧迫を、とくに劇作家のキアーリやカルロ・ゴッツィからは芸術的にも排撃され、1762年にはパリの「イタリア劇団」の招きに応じて不本意ながらフランスへ移住。64年以降ベルサイユ宮で王室子女のイタリア語教授を担当するが、フランス革命のためパリに退き、93年1月6日または7日、同地で没。フランス語による『回想録――わが生涯と演劇』は西欧演劇史上貴重な文献とされる。
[里居正美]
『田之倉稔編訳『ゴルドーニ劇場』(1983・未来社)』
イタリア最大の劇作家。ベネチアの医師の子で,幼少の頃から人形劇など芝居に夢中になる。貴族の侍医となった父の助手としてイタリア各都市に滞在。1723年にベネチアに帰り,パドバやモデナで法律を学ぶ。この間1721年に勉強を嫌って旅回りの一座に入り込み,滞在中のリミニから逃げ出したりしている。父親の死の翌年31年パドバ大学で法律を修め,しばらくベネチアで弁護士を開業,初期の習作を書いている。その後恋愛問題を起こしミラノに逃れ,北イタリアに滞在中34年ベローナでサン・サムエーレ劇団と出会い,座付作者となる。初めは伝統的なコメディア・デラルテ風の笑劇《二人の主人を一度に持つと》などを書く。しかし次第に啓蒙主義や,モリエールに代表されるフランス古典喜劇の影響を受け,即興的で荒唐無稽な筋立てのドタバタ喜劇を排し,当代の習俗の写実的描写と登場人物の心理の自然な展開を主体とし,かつ軽い風刺と教訓味とをおびた市民喜劇の確立を目指す演劇改良運動を提唱,保守派のC.ゴッツィらと対立した。《宿屋のお内儀(かみ)》《カフェ》《カンピエロ》らの傑作がある。多作で,作品は200に近く,50-51年のシーズンには16もの新作を上演させた。62年パリのイタリア座の作者となり,フランスに移る。69年からフランス王室イタリア語教師となるが,大革命に遭い,貧困のうちに死んだ。
執筆者:西本 晃二
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…イタリア演劇ではこの〈メロドラマ〉が悲劇の役割を果たした。 18世紀を代表する劇作家といえば,ためらわずにC.ゴルドーニとC.ゴッツィの名を挙げることができる。この2人のベネチア人は創作面では敵対を続け,ついにお互いを理解しようとしなかった。…
…58年の《三文オペラ》,それに続く《セチュアンの善人》などが知られる。またもう一つは,同じ時期のイタリア劇文学の広範な読みなおしによるC.ゴルドーニ劇の再解釈とイタリア自然主義作家(カルロ・ベルトラッツィなど)の発見である。これにはゴルドーニの《二人の主人を一度に持つと》《田園三部作》《キオッジアの紛争》などのすぐれた演出がある。…
…同劇団は,ストレーレルという創意豊かな演出家の指導のもとに,イタリアの演劇界においてめざましい活動を見せ,国外にまでその舞台は知られるようになった。幅広いレパートリーの中で特に高い評価を受けているのは,C.ゴルドーニ,W.シェークスピア,B.ブレヒトの作品である。特にブレヒトの《三文オペラ》(1955)と《ガリレイの生涯》(1963)の上演では,西ヨーロッパにおいて最も高い水準の舞台を作りあげ,ストレーレルによるブレヒトの演出は世界の脚光を浴びた。…
※「ゴルドーニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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