イタリア,ベネチアの劇作家。没落貴族の出身。20歳でベネチア軍の将校としてダルマティアに駐屯。1744年ベネチアに戻り,知識人のサークルであるグラネレスキ学会の会員となる。折しもゴルドーニが,コメディア・デラルテ風の猥雑な即興演劇を排斥し,ブルジョア喜劇,教訓的意味あいをもった風俗喜劇によるイタリア演劇の改良を提唱し,大当りをとっていた。伝統主義者で,かつ貴族的精神の持主であったゴッツィは,このブルジョア的写実主義に反発し,コメディア・デラルテの擁護にまわり,荒唐無稽なお伽話の筋立てに,コメディア・デラルテの登場人物を配した《三つのオレンジの恋》《緑の奇麗な小鳥》《トゥランドット》などの作品を書いて大成功を収めた。これらの幻想豊かな作品は,後にプロコフィエフ,メーテルリンク,プッチーニなどによって採り上げられている。回想録《あだなる想い出》(1780)も知られている。
執筆者:西本 晃二
イタリアの文学者。カルロ・ゴッツィの兄。ベネチアで活動した。特に注目すべきは,イギリスの《スペクテーター》や,フランスの《スペクタテール・フランセ》など,18世紀ヨーロッパの流行であった教養主義的良識派の新聞をベネチアで《ガゼッタ・ベネタ》《オッセルバトーレ・ベネト》の題で刊行したことである。その散文は古典の教養に支えられ,しかも衒学的に流れず,人情の機微をとらえて,18世紀イタリア散文の代表的なものといわれる。啓蒙主義思想の論客ベッティネリとの論争では,ダンテを擁護し,理性優位の風潮に対して,詩の権利を主張した。ただし,その詩はロマン派流の感情中心のものではなく,古典の規範と修練によるものであった。詩作品としては《セルモーニ(説教)》がある。
執筆者:西本 晃二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イタリアの劇作家。ベネチアの貴族に生まれ、伝統文化の擁護者として、啓蒙(けいもう)主義による革新派との論争に生涯を終始する。ゴルドーニ劇の新しい市民的リアリズムを排撃し、イタリア古典喜劇の手法を踏襲。彼の空想的寓話(ぐうわ)劇は当時の保守的観客を魅了し、国外でも大きな反響をよんだ。『三つのオレンジへの恋』『烏(からす)』(ともに1761)、『トゥランドット姫』(1762)、『緑の小鳥』(1765)などが知られる。
[里居正美]
イタリアの批評家、劇作家。カルロ・ゴッツィの兄。モラリスト風の評論『説教集』(1763)、イタリア散文の範とされる『書簡集』(1750)および『ダンテ擁護』(1758)で著名。演劇に興味を示し、ギリシア悲劇およびほぼすべてのモリエール劇の翻訳上演を手がける。同時代の演劇については自身創設の新聞に良識ある劇評を書き、ゴルドーニを高く評価し、弟カルロの寓話(ぐうわ)劇には懐疑的態度をとった。
[里居正美]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…イタリア演劇ではこの〈メロドラマ〉が悲劇の役割を果たした。 18世紀を代表する劇作家といえば,ためらわずにC.ゴルドーニとC.ゴッツィの名を挙げることができる。この2人のベネチア人は創作面では敵対を続け,ついにお互いを理解しようとしなかった。…
※「ごっつい」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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