サイナス腺(読み)サイナスセン(その他表記)sinus gland

デジタル大辞泉 「サイナス腺」の意味・読み・例文・類語

サイナス‐せん【サイナス腺】

sinus甲殻類眼柄がんぺいなどにあって、脳や神経が分泌したホルモン貯蔵し、血液中に放出する組織。血洞腺。→眼柄ホルモン

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精選版 日本国語大辞典 「サイナス腺」の意味・読み・例文・類語

サイナス‐せん【サイナス腺】

  1. 〘 名詞 〙 ( サイナスは[英語] sinus ) 甲殻類の眼柄または脳の近くにあって、神経分泌細胞のつくった分泌物を貯蔵し、血液中に放出する組織。放出される分泌物は眼柄ホルモンまたはサイナス腺ホルモンと呼ばれ、体色変化や脱皮抑制に関係する。血液腺。血洞腺。

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改訂新版 世界大百科事典 「サイナス腺」の意味・わかりやすい解説

サイナス腺 (サイナスせん)
sinus gland

甲殻類の眼柄内,眼柄をもたない種では脳と複眼とを結ぶ神経の一部に存在する厚い皿状で乳青白色の蛍光を発する組織。腺とよばれているが,X器官や他の中枢神経に分布する神経分泌細胞の軸索の一部の末端が集まっていて,ここから神経分泌物が体液中に分泌されるので,独立した内分泌腺とはいえない。したがって,しばしばX器官-サイナス腺系として一括して扱われる。ザリガニのサイナス腺を電子顕微鏡で観察すると,少なくとも5種類の神経分泌顆粒(かりゆう)をもつ神経末端が区別される。これらの顆粒が,どこにある神経分泌細胞によってつくられ,それが体液中に分泌されたときにどのような生理作用を示すかは,まだよく分析されていない。サイナス腺から分泌されるホルモンは,色素胞刺激,脱皮抑制,卵黄形成の抑制,雌雄同体のエビでの性転換時の造雄腺の抑制,カルシウム,糖などの代謝促進など多くの作用が指摘されていて,一般に眼柄ホルモンと総称されることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイナス腺」の意味・わかりやすい解説

サイナス腺
さいなすせん

甲殻類の眼柄中あるいは脳に近接して存在する器官で、血洞腺ともいう。かつてはホルモンを生産する場と考えられたこともあったが、現在では、脳あるいは眼柄中のX器官の神経分泌細胞でつくられた神経分泌物質が、軸索を通ってここで貯蔵・放出される末端の神経血管器官であると考えられている。ここで血液中に放出されるホルモンには、X器官で生産される脱皮抑制ホルモン(脱皮ホルモンをつくるY器官の働きを抑制するホルモン)および卵巣成熟抑制ホルモン、脳で生産され体色変化に関係するいくつかのホルモンのほか、血糖量調節の働きがあるホルモンなどがある。

[竹内重夫]

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百科事典マイペディア 「サイナス腺」の意味・わかりやすい解説

サイナス腺【サイナスせん】

甲殻類の眼柄中あるいは脳に接して存在し,脳,X器官その他の神経分泌細胞で作られた神経分泌物をたくわえ,血液中に放出する器官。内分泌腺ではないが,この腺から放出される物質はサイナス腺ホルモン(眼柄ホルモンとも)と呼ばれ,体色変化,脱皮抑制,卵巣成熟抑制などに働く。
→関連項目X器官ホルモン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サイナス腺」の意味・わかりやすい解説

サイナス腺
サイナスせん
sinus gland

血洞腺ともいう。甲殻類の眼柄,または脳に接して位置する内分泌系器官。ここから放出される物質は,眼柄ホルモン,またはサイナス腺ホルモンと呼ばれ,体色変化,脱皮抑制,卵巣成熟抑制,血糖量調節,心臓拍動を高めるホルモンなど,いろいろのホルモンを含んでいる。この腺は神経鞘の一部が分化したもので,自身はホルモンはつくらず,脳やX器官などからの神経分泌物をたくわえ,血液中に放出する機能をもつ。

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世界大百科事典(旧版)内のサイナス腺の言及

【X器官】より

…神経分泌細胞は,その位置,含まれる顆粒(かりゆう)の状態,色素による染色性の特徴などから数種類区別される。これらの細胞の軸索の末端はサイナス腺に達し,ここからホルモンが体液中に分泌される。どの神経分泌細胞が,どのような生理作用をもつホルモンをつくるかについては,まだ明確にはなっていないが,眼柄,サイナス腺の除去や移植,また抽出物の注射などにより,色素胞刺激,卵黄形成の抑制,Y器官の抑制,水や無機イオンの代謝などの作用に関係していることが示されている。…

※「サイナス腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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