日本大百科全書(ニッポニカ) 「サハ(ロシアの地名)」の意味・わかりやすい解説
サハ(ロシアの地名)
さは
Саха/Saha
ロシア連邦に属する共和国。正称サハ共和国Республика Саха/Respublika Saha。ヤクーチアЯкутия/Yakutiyaともいう。ロシア連邦北東部、東シベリアの広大な山地・原野を占める。面積310万3200平方キロメートル、人口100万1000(1999)。首都はヤクーツク。人口19万5500(1999)。
[上野俊彦]
沿革
ヤクート人の祖先は10~15世紀にこの地方に移住してきた。その後、1632年にロシア人によってヤクーツクが建設され、1805年にはヤクート州が創設された。ロシア革命後の1922年、ロシア連邦社会主義共和国に属するヤクート自治ソビエト社会主義共和国Якутская АССР/Yakutskaya ASSRが設立され、ソ連時代はヤクートとよばれてきた。ソ連崩壊(1991年12月)に先だつ90年9月国家主権が宣言され、91年12月サハ(ヤクーチア)共和国となった。
[上野俊彦]
国土
レナ川、ヤナ川、インディギルカ川の各流域、およびコリマ川の下流域を占め、北極海に面し、ノボシビルスク諸島を含む。領域の40%あまりは北極圏内にある。全体として山地が多く、南部にはスタノボイ山脈、中央にはベルホヤンスク山脈、東部にはチェルスキー山脈があり、低地は北部にある。気候は極端な大陸性気候。平均気温は1月零下50℃~零下28℃、7月2℃~19℃。オイミャコン地区は北半球の寒極といわれ、零下68℃を記録している。年降水量は200~700ミリメートル。国土の約80%は針葉樹林帯であるが、永久凍土に覆われたツンドラ地帯も広い。
[上野俊彦]
住民・言語
サハとはロシア語でヤクートとよばれてきた民族の自称である。1989年国勢調査による民族構成は、ロシア人(55万0263、50.3%)、ヤクート人(36万5236、33.4%)が主である。ヤクート人は、モンゴル系民族だがチュルク語系(トルコ語系)のサハ語(ヤクート語)を話す。
[上野俊彦]
産業
おもな産業としては、鉱業(ダイヤモンド、金、雲母、非鉄金属鉱、石炭、石油など)、林業、木材加工、食品加工、軽工業、建築資材生産、機械修理工業など。酪農(乳・肉用牛、食肉用馬匹の飼育)も盛んで、北部ではトナカイ飼育、毛皮獣飼育、狩猟、漁業が行われている。農業では、小麦、大麦、エンバク、飼料作物、野菜、ジャガイモが栽培される。
[上野俊彦]