サラセミア(英語表記)thalassemia

翻訳|thalassemia

デジタル大辞泉 「サラセミア」の意味・読み・例文・類語

サラセミア(thalassemia)

ヘモグロビンを構成するペプチド合成が先天的にうまく行われないため貧血になる病気ヨーロッパ、地中海沿岸地方に多いので地中海貧血ともいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「サラセミア」の意味・わかりやすい解説

サラセミア
thalassemia

かつては地中海沿岸地方に限局していると考えられたため,地中海性貧血Mediterranean anemiaともいわれた。貧血を生ずる遺伝性疾患の一種。ヘモグロビンを構成しているグロビン鎖の合成が不均衡なため,ヘモグロビン産生が低下し小球性低色素性貧血を生じ,また余剰のグロビン鎖が赤血球内や骨髄内で変性沈殿を生ずるため無効造血や溶血を特徴とする黄疸などの諸症状があらわれる。ヘモグロビンのグロビン鎖の合成の欠陥は,遺伝子の欠損や遺伝子の暗号を写しとる過程(転写)のメッセンジャーRNAmRNA)の異常(欠損や機能異常など)によって生ずる。ヘモグロビンはヘムと2種類各2本のポリペプチド鎖からなるグロビンによって構成されているが,このうちα鎖の産生の減少は,αサラセミアといわれα鎖遺伝子の欠損による。4個のα鎖遺伝子のうち,4個すべての欠損は,α鎖産生を完全に抑制し胎生期に胎児水腫症をおこし死早産をおこす。3個の欠損はヘモグロビンH(HbH)症という重症な溶血性貧血を生じ,2個の欠損は臨床的には軽症で,1個の欠損は無症状である。β鎖の産生の減少は,βサラセミアといわれ転写に関するmRNAの異常で,1組の対立遺伝子双方が異常のホモ接合体の場合はβ鎖のmRNAの欠損によりβ鎖をまったく合成しない重症型となり,高度の溶血性貧血などをおこし,片方が異常のヘテロ接合体の場合は種々の程度の貧血と黄疸を示す。このほか,δ鎖合成を減少するδサラセミア,δおよびβ鎖合成を減少するδ-βサラセミアがある。
貧血
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サラセミア」の意味・わかりやすい解説

サラセミア
thalassemia

遺伝的欠陥によって生じる,ヘモグロビン異常に基づく溶血性貧血。地中海沿岸地方に多いため地中海貧血ともいうが,アフリカや,タイ,マレーなどの東南アジア諸地域にもみられる。優性の遺伝病で赤血球は奇形を呈し,標的赤血球が多数現れる。遺伝的に純粋なホモ接合体の患者は生後1年以内に死亡するが,遺伝的に雑種性のヘテロ接合体の患者は通常の環境では適応力が弱いが,マラリアに対する抵抗力は逆に強い。マラリアの多発地域にこの遺伝子頻度が多いのはこのためといわれている。 (→異常血色素症 )

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栄養・生化学辞典 「サラセミア」の解説

サラセミア

 →クーリー貧血

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