「筋肉減少症」と訳される医学用語。ギリシア語で「筋肉」を意味するsarx(=sarco)と、「減少」を意味するpeniaをあわせた造語である。おもに加齢や疾患により、高齢者において活動性が低下し筋肉量が減少すること、および、握力などの筋力低下がおこる状態と定義されている。歩行速度の低下など機能的な側面も含めて定義される場合もある。
一般に、ヒトでは30歳以降、筋肉量は減少傾向を示し、筋力も低下していく。加齢とともに食事摂取量が減少し、筋肉の構成要素であるタンパク質摂取量も減少する。さらに、筋力を維持するうえで必要な運動も十分とはいえなくなる。サルコペニアが進行すると、転倒しやすくなったり活動性がさらに低下したりして、要支援・要介護状態になる可能性が高くなる。高齢者の運動機能、身体機能を低下させるばかりでなく、生命予後(寿命)に影響を与える場合もある。このように、サルコペニアは「フレイル」とよばれる要支援・要介護リスク状態の重要な要因にもなっている。なお、加齢以外にさまざまな疾患を有している場合にもサルコペニアは発生する(これを「二次性サルコペニア」という)。
サルコペニアの予防には、筋肉量の増加、筋力向上のための一定以上の強度の運動が重要である。また、食欲不振や栄養不足の場合のみならず、普段からの適切な栄養補給は必須(ひっす)である。
なお、肥満の高齢者にサルコペニアが合併した「サルコペニア肥満」では、体脂肪の増加による体重の増加に対応するだけの筋肉量がないため、肥満のみと比べて自立度の低下をきたしやすく、転倒、死亡のリスクも高まることが知られており、とくに注意を要する。
つまずく、立ち上がるときに手をつくなど、筋力の衰えがみられるようになったらサルコペニアを疑う必要がある。
[安村誠司 2020年12月11日]
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