ザスーリチ(英語表記)Vera Ivanovna Zasulich

改訂新版 世界大百科事典 「ザスーリチ」の意味・わかりやすい解説

ザスーリチ
Vera Ivanovna Zasulich
生没年:1849-1919

ロシアの女性革命家。スモレンスク県の貴族の娘。モスクワの寄宿女学校卒業後,2人の姉の影響やネチャーエフとの出会いから革命思想を学ぶ。1869年ネチャーエフ事件に連座し,2年間の拘禁ののち行政流刑。75年キエフのナロードニキの組織〈ブンターリ〉に加わるが,首都に出,78年獄中で革命家に体罰が加えられたことを新聞で知ると,ペテルブルグ特別市長官トレポフに偽名面会を求め,狙撃した。事件は世界中に知られ,陪審裁判無罪を得る。79年〈土地総割替Chyornyi peredel〉派に属し,80年亡命した。当時ロシアの農村共同体についてマルクスと交わした手紙は有名だが,83年マルクス主義に転じ,〈労働解放団〉の一員となって,マルクス,エンゲルスの著作の翻訳も行った。1900年から《イスクラ》編集局員として働き,03年以後はメンシェビキの指導者の一人となった。05年以後ロシアに住み,第1次大戦中プレハーノフとともに戦争を支持し,十月革命には反対した。
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百科事典マイペディア 「ザスーリチ」の意味・わかりやすい解説

ザスーリチ

ロシアの女性革命家。早くナロードニキ運動参加,1878年ペテルブルグ警視総監トレポフを狙撃(そげき)。1880年亡命したが,当時ロシアの農村共同体(ミール)の位置づけについてマルクスと交わした手紙は有名。1883年プレハーノフとともに労働解放団を結成,ロシア・マルクス主義の創始者の一人となる。1903年以後プレハーノフと同様メンシェビキに属し,革命運動から脱落していった。
→関連項目宮崎夢柳

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザスーリチ」の意味・わかりやすい解説

ザスーリチ
ざすーりち
Вера Ивановна Засулич/Vera Ivanovna Zasulich
(1849―1919)

ロシアの婦人革命家。スモレンスク県の貴族の家に生まれる。1868年首都ペテルブルグに出て革命運動に加わり、69~71年、ネチャーエフの事件に関係して投獄され、のち流刑となった。78年、同志ボゴリューボフを鞭(むち)打ちに処したペテルブルグ市長トレポフを銃撃して負傷させた。彼女は、この件で陪審員から無罪を宣せられたが、再逮捕を恐れて国外へ逃亡。79年、帰国してナロードニキの秘密結社「チョールヌイ・ペレジェール(全土地割替)派」に加盟。翌年ふたたび国外に逃れ、83年「労働解放団」の設立に参加。マルクス、エンゲルスの著作を翻訳し、彼らと文通した。1903年、ロシア社会民主労働党の第2回大会でメンシェビキを支持して、その指導者の一人となった。05年ロシアに戻り、17年のボリシェビキの革命には反対の態度をとった。レーニンは彼女のメンシェビズムは攻撃したが、若いときの革命活動は高く評価している。

[外川継男]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ザスーリチ」の解説

ザスーリチ
Vera Ivanovna Zasulich

1849~1919

ロシアの女性革命家。貴族の娘で,女子学生のときネチャーエフのグループに入り,シベリア流刑。ナロードニキとなり,1878年ペテルブルク特別市長官トレポフを狙撃,裁判で無罪となる。亡命地でマルクス主義者となり,のちメンシェヴィキに属した。

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世界大百科事典(旧版)内のザスーリチの言及

【ナロードニキ】より

… しかし,当局の弾圧がきびしく,ここから権力との直接闘争に向かう志向が生まれた。78年のザスーリチの狙撃が開いたテロルの道が人々の心をとらえ,79年6月,結社内の政治闘争派はリペツク会議で,〈執行委員会〉を発足させた。一時妥協がなったが,結社は,この政治闘争派の人民の意志派と農村工作志向の〈土地総割替〉派に分裂した。…

※「ザスーリチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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