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ザックス ザックスSachs, Curt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ザックス
Sachs, Curt

[生]1881.6.29. ベルリン
[没]1959.2.5. ニューヨーク
ドイツ生れの音楽学者。古代楽器学,比較音楽学の権威。 1919~33年までベルリン大学教授。 33年ナチス・ドイツを逃れてパリに行き,37年アメリカに移住。ニューヨーク大学教授,アメリカ音楽学会会長の職にあった。主著に『楽器百科全書』 Real-Lexikon der Musikinstrumente (1913) ,『世界舞踊史』 Eine Weltgeschichte des Tanzes (33) ,『楽器の歴史』 The History of Musical Instruments (40) などがある。

ザックス
Sachs, Hans

[生]1494.11.5. ニュルンベルク
[没]1576.1.19. ニュルンベルク
ドイツのマイスタージンガー,劇作家。ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の中心人物ラテン語学校に学び,のち靴屋の親方となる。その間工匠歌の修業を積む。宗教改革に関心を示し,詩『ウィッテンベルクナイチンゲール』 Die wittenbergisch Nachtigall (1523) でルターを支持,そのため一時筆禍をこうむり,出版を禁止された。その後人文主義的教養も加わって多彩な創作活動を行なった。素材を聖書や物語集にとり,四千余の工匠歌,『馬鹿の治療』 Das Narrenschneiden (36) や『天国の遍歴学生』 Der farend Schüler im Paradeiss (50) などの謝肉祭劇をはじめ,笑劇,対話詩,寓話詩などを残した。

ザックス
Sachs, Julius von

[生]1832.10.2. ブレスラウ(現ポーランドウロツワフ)
[没]1897.5.29. ウュルツブルク
ドイツの植物学者。ギムナジウム終了後,プラハ大学生理学教授 J.プルキニェの助手となり,1856年学位取得。農業研究所勤務ののち,フライブルク大学教授 (1867) ,ウュルツブルク大学教授 (68) 。 62~64年に,それまで葉緑体の前身と思われていたデンプン粒光合成の産物であることを実証し,植物ではデンプンの形成という様式をとって,光の存在下で吸収した炭酸ガス有機物に転化すること (炭酸固定) が行われていることを明らかにした。 65年には,葉緑素は細胞内全域に散在するのではなく,葉緑体の中に組込まれた状態で存在することを示した。ザックスはこれら一連の研究で,光合成を細胞学的,生化学的に研究するための基礎を確立した。また,環境要因 (光,温度など) を人為的に調節して統制された実験条件下で植物の生長や運動を観察することを創始し,他方,生長速度を測定する装置など数々の測定機器を考案し,それらを駆使して生長に対する諸因子の作用を調べ,生長生理学呼ばれる研究領域を開拓した。細胞に含まれる水の圧力が細胞壁に作用してこれを拡張し,細胞の拡大を招くことによって生長が起ると説いた彼の考え方は,今日生長を理解するうえでの基本となっている。 68年に著わした『植物学教科書』 Lehrbuch der Botanikは,植物を対象とする諸研究分野を関連づけ,植物学を一つのまとまった科学として取扱った最初の教科書であり,英訳もされて広く読まれた。また『植物学の歴史』 Geschichte der Botanik (75) は今日なお,植物学史を学ぶための手引として利用されている。

ザックス
Sachs, Nelly

[生]1891.12.10. ベルリン
[没]1970.5.12. ストックホルム
ドイツの女流詩人。 1966年ノーベル文学賞受賞。裕福なユダヤ人家庭に生れ,音楽と舞踊を学びながら育った。 40年,15歳のときから文通をしていたスウェーデンの作家ラーゲルレーブの助けをかりて,ナチスの追及を逃れ,ストックホルムに亡命。このときからいわば「深窓育ち」のこの詩人につらい現実が襲いかかり,ユダヤ民族の苦難に目ざめていく。これらの体験は直接的に作品に現れ,のちには次第に高められ,深い宗教的感情をたたえるようになる。詩集に『死神の住処で』 In den Wohnungen des Todes (1947) ,『星の食』 Sternverdunkelung (49) ,『逃亡と変身』 Flucht und Verwandlung (59) ,『たずねる女』 Die Suchende (66) ,『開け,夜よ』 Teile dich Nacht (71) など。ほかに神秘劇『エリ』 Eli (50) がある。

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百科事典マイペディアの解説

ザックス

中世ドイツの職匠詩人。ニュルンベルクの仕立屋の子で,靴屋の親方。ルターとその教説をたたえる500行の詩《ウィッテンベルクの小夜啼鳥》(1523年)で名をあげた。
→関連項目ニュルンベルクマイスタージンガー

ザックス

ドイツの植物生理学者。プラハ大学卒。ビュルツブルク大学教授。光合成には葉緑体が必要なことを明らかにし,同化デンプンの検出法や水耕法などを研究。実験植物生理学を発展させた。
→関連項目ゲーベル松村任三

ザックス

ユダヤ系のドイツ語女性詩人。ベルリン生れ。早くから詩作を試みていたが,ナチスの迫害を辛くものがれて,1940年スウェーデンへ亡命。恐怖の体験から生まれた詩劇《死の棲家にて》《星の蝕》などにおいて,黙示録的な情熱をこめてユダヤ民族の運命を歌い上げている。

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世界大百科事典 第2版の解説

ザックス【Curt Sachs】

1881‐1959
ドイツ生れの音楽学者。最初,美術史学を修め,のちに音楽学に転向したが,美術史の様式概念を音楽に適用する試み(《バロック音楽》1919)にとどまらず,舞踊や楽器という視覚的な対象を扱うことを得意とした。ベルリン大学や他の機関で教育・研究に従事したが,ユダヤ人であったため1933年にパリに移り,その後37年にアメリカに移住した。彼は,西洋古典音楽を含めてきわめて該博な知識を備え,それを,《楽器事典》(1913),《楽器の歴史》(1940。

ザックス【Nelly Sachs】

1891‐1970
ドイツのユダヤ系女流詩人。ベルリンに生まれ,のちにナチスの手を逃れて,1940年以降,ストックホルムに住む。その詩語が独自の響きを獲得するのは,この迫害,亡命の体験を経て以後のことである。66年ノーベル文学賞を受賞。ユダヤ民族の運命を主題とするザックスの抒情詩や劇詩は,まぎれもなくその歴史的位相に由来する死と不安の影に脅かされながらも,終始,詩行ののびやかな内的リズムや繊細な暗喩法を失わず,ユダヤ神秘思想にはぐくまれたゆたかな幻想性と相まって,ツェラーンとともに,第2次大戦後ドイツ抒情詩の世界に特異な位置をしめている。

ザックス【Hans Sachs】

1877‐1945
ドイツの医学者。カトビツェに生まれ,フライブルク,ブロッワフ,ベルリンの各大学で医学を修め,1900年ライプチヒ大学を卒業。20‐36年ハイデルベルク大学教授。血清学の発展に貢献し,とくに梅毒の血清学的診断法のうち沈降反応を利用したザックス=ゲオルギ反応Sachs‐Georgi Reaktion(略称SGR)を創始した。この反応は,補体結合反応を利用したワッセルマン反応と併用されて梅毒の診断を確実にした。

ザックス【Hans Sachs】

1494‐1576
中世ドイツの文人。ワーグナーの楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》で知られるように,靴屋の親方のかたわら職匠歌人(マイスタージンガー)で,詩を書き劇作もした。ニュルンベルクで生まれ,遍歴時代を除き没するまで同市を離れなかった。ザックスの文名を高めたのは《ウィッテンベルクの小夜啼鳥》(1523)の詩である。羊の群れを迷わす獅子は教皇,その正体を暴く小夜啼鳥はルターのアレゴリーから,彼がルターを礼賛しその福音の教えに従う立場を鮮明にしている。

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大辞林 第三版の解説

ザックス【Sachs】

〔Hans S.〕 (1494~1576) ドイツのニュールンベルクの靴屋の親方で詩人・作曲家。多くの職匠歌・格言詩・悲劇・喜劇・謝肉祭劇などを残す。「ウィッテンベルクの鶯」でルターを賛美した。
〔Nelly S.〕 (1891~1970) ドイツのユダヤ系女性詩人。ナチスから逃れスウェーデンに亡命。シュールレアリスムの影響下に、ユダヤの運命をうたう。詩集「死神の住家で」「夜よ、分たれよ」など。

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世界大百科事典内のザックスの言及

【舞踊】より

…すべてのもの,身体も魂も外へ広がる。このことからザックスCurt Sachsのような学者は,西洋舞踊のような舞踊を〈ひろがる舞踊〉,日本舞踊のような舞踊を〈閉じられた舞踊〉としている。そして〈ひろがる舞踊〉を男性的,〈閉じられた舞踊〉を女性的とみなし,前者は牧畜民族の踊りであり,後者は農耕民族の踊りである,と考えている。…

【楽器】より

…たとえば,ブル・ロアラー,アフリカの親指ピアノ,世界に広く分布するジューズ・ハープ(口琴)などがそれである。このため楽器学や民族音楽学で楽器を分類する場合は,この3分法でなく,通常ホルンボステルとC.ザックスが《楽器分類学》(1914)で提唱したザックス=ホルンボステル法と呼ばれる分類法を用いる。それによると,あらゆる楽器は,まず体鳴楽器idiophones,膜鳴楽器membranophones,弦鳴楽器chordophones,気鳴楽器aerophonesの4種類に分類され,それぞれがさらに細かく分類される。…

【舞踊】より

…すべてのもの,身体も魂も外へ広がる。このことからザックスCurt Sachsのような学者は,西洋舞踊のような舞踊を〈ひろがる舞踊〉,日本舞踊のような舞踊を〈閉じられた舞踊〉としている。そして〈ひろがる舞踊〉を男性的,〈閉じられた舞踊〉を女性的とみなし,前者は牧畜民族の踊りであり,後者は農耕民族の踊りである,と考えている。…

【民族音楽学】より

…両名の共著である《日本人の音組織と音楽に関する研究》(1903)はその顕著な一例である。もう一人の重要な協力者はC.ザックスで,ホルンボステルとの共著《楽器分類法》(1914)は後にグローバルな楽器分類の基礎として広く用いられるようになった。ザックスをはじめ,M.コリンスキ,C.ヘルツォーク,M.F.ブコフツァーら,ベルリンでホルンボステルの同僚,助手,研究協力者だった音楽学者たちは,1930~40年代にかけて新大陸に移住し,以後この学問はアメリカで民族音楽学として隆盛をみる。…

【民族舞踊】より


[分類]
 舞踊の分類には数多くの方法がある。音楽学者であり《世界の舞踊史》を著したC.ザックスは象徴的舞踊と非象徴的舞踊に二分している。象徴的舞踊は,例えば豊作を祈る田植踊に種をまいたり,稲刈りの動作がみられるものであり,非象徴的舞踊はそのような日常の動作を模した動きのないものをいう。…

【詩】より

…スペインではゴンゴラの抒情詩,ポルトガルではカモンイスのソネットと叙事詩が書かれ,イタリアでもタッソやアリオストの叙事詩が相つぐ。ドイツでは,16世紀に栄えた市民文化からマイスタージンガー(工匠歌手)と呼ばれる詩人たちが現れ,その代表者H.ザックスは多数の歌曲や謝肉祭劇をつくった。宗教戦争の中からフランスのドービニェは激越な《悲愴曲》を書き,清教徒の立場からイギリスのミルトンは《失楽園》を書いた。…

【謝肉祭劇】より

…地域的には,まずオーストリア南部に発生し,職人の諸国遍歴とともに広くドイツ語圏にひろまっていったと推定されるが,その中心はなんといってもニュルンベルク地方であり,この地で謝肉祭劇は集大成され,完成期を迎えたと見ることができる。ニュルンベルクにはシンチュウを扱う職人であったといわれるハンス・ローゼンプリュート(?‐1470ころ),理髪師兼外科医であったハンス・フォルツ(?‐1510ころ),靴屋の親方であったハンス・ザックス(1494‐1576)などの作者が時代を追って輩出し,特にザックスはその頂点に位置する存在として知られている。ザックスの天才は,のちのゲーテやJ.グリムによって,大いに賛美されている。…

【スミレ】より

…ウィーンの宮廷では3月にドナウ河畔に初咲きのスミレを探し,それに挨拶する習慣があった。16世紀のニュルンベルクの職匠詩人H.ザックスは,謝肉祭劇《ナイトハルトとスミレ》にそれを劇化している。ドイツから東ヨーロッパにかけて広がる春迎えの行事にもスミレは春のシンボルとして登場する。…

【ナイトハルト[ロイエンタールの]】より

…ミンネザングの崩壊を決定的に推進したこの不協和音の詩人は,生前からひじょうに有名であったらしく,ナイトハルトという名は,上記のタイプの歌の亜流作品の名称となり,さらに14世紀以降〈ナイトハルト劇Neidhartspiel〉という笑劇Schwankの主人公として,農民の敵役に仕立てられた。16世紀のハンス・ザックスも《ナイトハルトと菫》という笑劇を書いた。【岸谷 敞子】。…

※「ザックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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