シアナミド(読み)しあなみど(英語表記)cyanamide

翻訳|cyanamide

デジタル大辞泉 「シアナミド」の意味・読み・例文・類語

シアナミド(cyanamide)

シアンアミド化物。潮解性のある無色針状の結晶シアナマイドの商品名で抗酒剤として用いられる。化学式NCNH2

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改訂新版 世界大百科事典 「シアナミド」の意味・わかりやすい解説

シアナミド
cyanamide

シアンアミドともいう。化学式NCNH2。カルバミン酸ニトリルcarbamic nitrileである。カルボジイミドHN=C=NHと互変異性をなす。カルシウムシアナミドCaNCNを水と反応させ二酸化炭素を通じるとシアナミド水溶液が得られる。これを硫酸で中和して濃縮すると,無色の針状結晶として析出する。潮解性。融点46℃,沸点140℃(19mmHg)。水,エチルアルコールエーテルベンゼンに易溶。刺激性皮膚に触れると炎症を起こす。シアナミド水溶液にカルシウムシアナミドを加えてアルカリ性(pH8.5)とし,80℃くらいに熱すると2分子が重合してジシアンジアミドが生成する。

 HN=C=NH+H2NCN─→H2N-C=(NH)-NH-CN

ジシアンジアミドは白色の結晶で,メラミン樹脂の成形材料,エポキシ樹脂の硬化剤などに用いられ,またこれから得られる化合物は医薬・農薬・樹脂などの原料とされるものが多い。アンモニウム塩と反応させるとグアニジン塩となり,さらに濃硫酸によってニトログアニジン爆薬の原料)がつくられる。グアニジンはアミノグアニジン,スルファグアニジン,スルファメラジン,葉酸などの医薬品の原料として重要である。カルシウムシアナミドは,土壌中の水分と徐々に反応してジシアンジアミドを経て最後尿素炭酸アンモニウムとなるので,石灰窒素として肥料に用いられる。しかし中間生成物のジシアンジアミドは植物に有害なので,完全に分解する約2週間前に基肥として施肥される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアナミド」の意味・わかりやすい解説

シアナミド
しあなみど
cyanamide

シアンのアミド化物で、シアンアミドともいう。アンモニアとクロロシアンCNClとの反応、カルシウムシアナミド(石灰窒素の主成分)CaCN2と酢酸との反応、チオ尿素と酸化水銀(Ⅱ)との反応などによって得られる。潮解性の無色針状晶。水、エタノール(エチルアルコール)、エーテルによく溶ける。次のようなカルボジイミドとの互変異性がある。水溶液は弱酸性で安定。

  NCNH2HN=C=NH
酸とは塩をつくり、水酸化ナトリウム水溶液ではNaHCN2なる化合物を生じる。強酸および強アルカリ性水溶液で尿素に加水分解する。硫化水素とは弱アルカリ性で反応してチオ尿素に、アンモニウム塩とはグアニジンの塩になる。金属シアナミドMI2CN2の代表的なものにカルシウムシアナミド、ナトリウムシアナミドNa2CN2がある。二量体のジシアンジイミドNC・NHC(NH2)=NHに重合しやすく、150℃に熱すると三量体のメラミンC3H6N6に変化する。刺激性で湿った皮膚に触れると炎症をおこす。

[守永健一・中原勝儼]


シアナミド(データノート)
しあなみどでーたのーと

シアナミド
NCNH2
式量42.0
融点46℃
沸点140℃/19mmHg

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化学辞典 第2版 「シアナミド」の解説

シアナミド
シアナミド
cyanamide

CH2N2(42.04).H2N-C≡N.互変異性体のカルボジイミドHN=C=NHは,仮想化合物であり単離できない.カルシウムシアナミドに硫酸を作用させるか,塩化シアンとアンモニアからつくる.無色の潮解性針状晶.融点45~46 ℃.1.282.水,エタノール,エーテルに易溶,二硫化炭素,クロロホルムに難溶.熱または弱アルカリ性では二分子重合してジシアンジアミドとなり,水酸化ナトリウム水溶液ではNaHCN2なる化合物を生じる.Na,K,Ca,Ba,Mg,Ag,Hg,Cu,Pbなどと安定な塩をつくる.シアナミドは強塩基または強酸中で加水分解されて尿素になる.硫化水素と弱塩基性で反応させればチオ尿素に,アンモニウム塩とではグアニジン塩になる.

CNNH2 + NH4NO3 → H2NC(=NH)NH2HNO3

Ca塩は肥料として使われる.[CAS 420-04-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シアナミド」の意味・わかりやすい解説

シアナミド
cyanamide

化学式 NCNH2 。無色の潮解性結晶。融点 46℃。水,アルコール,エーテル,ベンゼンなどによく溶ける。刺激性で皮膚に触れると炎症を起す。カルシウム塩 (カルシウムシアナミド) は肥料として使われる。

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