シアノコバラミン(読み)しあのこばらみん(英語表記)cyanocobalamin

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シアノコバラミン
しあのこばらみん
cyanocobalamin

抗悪性貧血因子として1948年に肝臓中から単離されたビタミンB複合体の一つで、ビタミンB12として最初に単離された型。ビタミン中もっとも複雑な構造をもち、化学式はC63H88CoN14O14Pで、分子量1355.38。暗赤色結晶。シアノB12(cyano-B12)ともいう。ビタミンB12という名称は狭義ではシアノコバラミンをさす。動物や微生物の成育に必須(ひっす)の微量栄養因子で動物タンパク質因子の一つである。基本的な化学構造は二つの成分からなり、一つはポルフィリン環様の構造、もう一つはα(アルファ)-グリコシド結合をもつヌクレオチドである。このポルフィリン環様の構造は4個の5,6-ジメチルベンズイミダゾール環(テトラピロール環でコリン核ともよばれる)よりなり、その4個の窒素原子がコバルトイオンを中心に配位してキレート化合物をつくっている。このコバルトにシアン基が結合したものをシアノコバラミンという。このシアン基を除いた構造がコバラミンであり、栄養学的にも生化学的にも重要なものとされている。すなわち、シアノコバラミンのシアン基は単離の際にコバルトに結合したものであり、生体内に取り込まれるとコバルトが3価から2価を経て1価の状態にまで還元されたのち、補酵素型であるアデノシルコバラミンまたはメチルコバラミンに変換される。コバラミンの大部分は細菌によって生合成される。動物では肝臓中に、シアン基のかわりにメチル基、ヒドロキシ基、水などが配位したメチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アクアコバラミン、アデノシルコバラミンなどとして存在する。

 シアノコバラミンは安定であるため薬剤として使われており、水に可溶で熱に安定である。非常に複雑な化合物であるために、現在でも発酵法により生産されている。

[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]

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化学辞典 第2版の解説

シアノコバラミン
シアノコバラミン
cyanocobalamine

C63H88N14O14PCo(1355.38).ビタミン B12 ともいう.肝臓の水性エキス中に含まれる水溶性抗悪性貧血因子の主要成分で,葉酸の発見(1945年)についで,E. Rickes,E.L. Smithらによって単離された.化学構造は三価のコバルト1原子を含むことが特徴で,この Co3+ に多数の側鎖を有するポルフィリン核,CN基,およびヌクレオチドが結合し,さらにこのヌクレオチドは1-アミノ-2-プロパノールをなか立ちとしてポルフィリンに結合した構造をもっている.暗赤色の針状または細長い板状の吸湿性結晶.210~220 ℃ で黒変し,300 ℃ に達しても融解しない.水,アルコール類に可溶,アセトン,クロロホルム,エーテルに不溶.水溶液は278,361,548 nm に吸収極大をもつ.コバルトに配位しているCNのかわりにアデノシンが結合すると補酵素 B12(cobamide)となる.この補酵素は細菌でグルタミン酸のβ-メチルアスパラギン酸への転換を触媒し,また動物組織では,メチルマロニルCoAからスクシニルCoAを生じるイソメラーゼ反応を触媒する.また,大腸菌のメチオニン合成にも別の B12 含有酵素が関与するといわれる.ヒトにおけるビタミン B12 欠乏症は,巨赤芽球性貧血(悪性貧血),あるいは神経系障害を呈する.[CAS 68-19-9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内のシアノコバラミンの言及

【コバラミン】より

…巨大環状配位子コリンが酸化数IIIのコバルトに配位して平面を形成し,環の一部に結合した複雑なリン酸基,糖,有機塩基から成る置換基部分の有機塩基(5,6‐ジメチルベンゾイミダゾール)が平面の片側からコバルトに配位し,第六の配位子Xが平面の反対側に配位した錯体の総称。X=CN,すなわちシアノコバラミンがビタミンB12,X=OH,すなわちヒドロキソコバラミンがビタミンB12bである。補酵素B12ではX=5′‐デオキシアデノシル基で,5′‐炭素原子が直接コバルトに結合しており,生命系中で見いだされた最初の有機金属化合物である。…

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