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シェールガス shale gas

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

シェールガス
shale gas

頁岩シェール)層から採取される天然ガス。多くは深さ 1500m以上の場所に賦存する。頁岩は,数億年前に海底や干潟に堆積した有機物に富む泥土で,シルトや粘土の細かい粒子からなる堆積岩である。長い年月の間に泥土層はさらなる堆積物によって深く埋没し,泥土は熱と圧力の作用で頁岩に変成し(→変成作用),有機物は天然ガスとなった。頁岩の中で発生したガスは,長い地質時代を経て,より浸透性の高い岩層へと移動した。これは今日,在来型貯留層と呼ばれるガス鉱床を形成しており,在来型の掘削法によって容易に採掘できる。しかし多くのガスは頁岩の中に留まっており,貯留層への移動はきわめて遅いため,在来型の手段では採掘できない。最も生産性が高いのは,頁岩層を水平に掘削し,次に高圧の水を注入する水圧破砕法(フラッキング)と呼ばれる方法である。1990年代以降,アメリカ合衆国では膨大な量のガスが水圧破砕法で採掘されるようになり,2000年代初めにはアメリカ最大のシェールガス埋蔵地帯であるペンシルバニア州を中心としたマーセラス・シェール層での掘削が始まった。しかし水圧破砕法は,ガスそのものや汚染水などの有害な化学物質が地下水に混入するおそれが指摘され,環境への影響が懸念されている。アメリカエネルギー情報局が 2011年に発表した資料によると,世界のシェールガス推定埋蔵量は中国が約 36兆m3と最も多く,次いでアメリカの約 23兆m3(うちマーセラス・シェール約 3兆~14兆m3)となっている。(→エネルギー資源

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知恵蔵の解説

シェールガス

地下数百~数千メートルの頁岩(けつがん)層(シェール層)に含まれているガス。主成分はメタンで、LNG(液化天然ガス)と変わらないが、従来のガス田とは異なる場所にあるため、砂岩層に含まれるタイトサンドガス、石炭層に含まれるコールベッドメタン(CBM)と共に、「非在来型天然ガス」と呼ばれる。21世紀に入り、硬い岩盤に高圧の水や化学薬品を注入し、人工的につくった割れ目からガスを取り出す「水圧破砕法」の技術が急速に進み、生産コストも大幅に下がった。現在、最も生産が盛んなのは埋蔵量世界2位のアメリカ合衆国である。2008年には「非在来型」が天然ガス国内生産量の50%を超え、これまで全米で約50万人の雇用を生んでいることから、「シェールガス革命」という言葉も飛び交っている。
11年6月には、国際エネルギー機関(IEA)が「天然ガスの黄金時代」という報告書の中で、2035年の天然ガスの生産量は08年比で約60%増加すると予測し、エネルギー関係者の注目を集めた。天然ガスは石油・石炭と比べ、熱効率が優れているわりに、二酸化炭素の排出量が少なく、化石燃料の「優等生」と言われる。中東・中南米・中国のほか、これまでロシア(ガスプロム)にLNGを依存してきた欧州でも、大量の埋蔵が確認されており、シェールガスは世界の資源地図を塗り替えるという声もある。
一方、生産拡大には課題も多い。開発に巨額の費用がかかり、現段階では先端の採掘技術を持つ米国企業の支援が欠かせない。また、大量の水の確保と排水処理もネックになる。環境面でも、破砕に必要な化学薬品や地中に漏出したメタンが水源や土壌を汚染する危険性が指摘されている。加えて、回収段階での大気中へのガス漏出も懸念されており、二酸化炭素の20倍以上の温室効果をもつメタンの大量漏出が現実になると、地球温暖化が加速しかねない。こうした点から、欧州諸国は開発に消極的で、米国でも周辺住民による「水圧破砕」反対運動が広がっている。12年5月には、IEAも「天然ガス黄金時代のための黄金ルール」という特別レポートを発表。1年前の開発推進姿勢から後退し、環境へのリスク分析と持続可能な非在来型ガス開発のための基準づくりの必要性を説く内容になっている。同年8月には、ショーン・レノンがニューヨーク・タイムズに、シェールガスの開発で所有する農地(ニューヨーク州)が汚染されると投稿し、オノ・ヨーコと共に「水圧破砕」に反対するアーティスト団体を設立した。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2012年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

シェールガス

地下深くにある頁岩(けつがん〈シェール〉)層に含まれる天然ガス。低コストで採掘できる技術が確立し、北米で採掘が本格化している。米国ではガスや石油が安くなったことで製造コストも下がり、「製造業の復活」が叫ばれている。

(2014-01-29 朝日新聞 朝刊 1経済)

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デジタル大辞泉の解説

シェール‐ガス(shale gas)

地下の頁岩(シェール)層に含まれる天然ガス超高圧の水を注入して岩盤を破砕し、貯留しているガスを採取する。
[補説]隙間の多い砂岩層に貯留している在来型の天然ガスとは異なり、シェールガスは固い頁岩層の中に存在するため採取が困難だったが、採掘技術が確立し商業生産が行われるようになった。

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百科事典マイペディアの解説

シェールガス

天然ガスの一種で,泥岩に含まれる。在来の天然ガスとの違いは貯留層が砂岩ではなく,シェール(頁岩(けつがん))という泥岩であること。シェールは特に,固く,薄片状に剥がれやすい性質をもつことから,シェールガスと呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シェールガス
しぇーるがす
shale gas

頁岩(けつがん)(シェール)という固い岩盤のすきまに閉じ込められた天然ガス。北米、ヨーロッパ、オーストラリア、中国、インドなど世界に広く分布し、推定埋蔵量は90兆立方メートルと従来型天然ガスの半分ほどに達する。存在自体は古くから知られていたが、岩盤から掘り出すのがむずかしかった。しかし岩盤の水圧破砕や井戸の水平掘りといった技術革新で、1980年代から採掘が可能になった。この結果、シェールガスの生産量が急増したアメリカが液化天然ガスを輸入する必要がなくなるなど、世界のエネルギー勢力図を塗り替える「シェールガス革命」につながるとみられており、カナダ、ヨーロッパ諸国、オーストラリア、中国、インドなど世界の主要国が資源開発に乗り出している。
 石油や石炭に比べ天然ガスは二酸化炭素(CO2)の排出が少なく、シェールガスの利用は温暖化防止に役だつと期待されている。一方、ガス採掘時のメタン流出や、採掘時に使用する潤滑用の薬品が原因の地下水汚染などの環境破壊を招いているとの批判もある。頁岩は古い地層にしか存在しないため、地質年代の新しい日本では商業開発がむずかしいとみられている。そのため日本企業では、総合商社が海外のガス権益を確保するなど開発投資に力を入れている。
 シェールガス以外にも、頁岩にたまる石油(シェールオイル)、石炭層に含まれる炭層ガス(コール・ベッド・メタン、CBM)、砂岩に含まれるタイトサンドガスなどを、従来の石油・天然ガス資源と区別し非在来型資源とよぶ。世界の非在来型資源の埋蔵量は910兆立方メートルあると推計されており、採掘技術の進歩で今後、生産量が増える見通しである。[編集部]

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