シュー(読み)しゅー(英語表記)Eugène Sue

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュー」の意味・わかりやすい解説

シュー
Sue, Eugène

[生]1804.1.26. パリ
[没]1857.8.3. オートサボア,アヌシー
フランスの小説家。本名 Marie-Joseph Sue。海軍軍医になったが 1829年除隊後,海洋冒険小説によって文筆生活に入った。プルードンの影響を受けた社会主義者で,巧みな筋運びと精彩ある人物・情景描写とにより,貧しい人々の生活をあたたかい同情の目をもって描き,同時代作家のなかで最も広く読まれた。パリの貧民街を描いた代表作『パリの秘密』 Les mystères de Paris (1842~43) は,新聞連載小説 roman-feuilletonとして大成功を収め,ユゴーの『レ・ミゼラブル』にも影響を与えた。ほかに『さまよえるユダヤ人』 Le Juif errant (1944~45) ,『七つの大罪』 Les Sept Péchés capitaux (1947~49) など。

シュー
Shu

古代エジプトの大気天空,風の神。双生児の妹テフヌトとともに,ヘリオポリス創世神話に最初の夫婦として登場する。「持上げる者」を意味する名で,ゲブヌトが抱合っていたのをシューが天を持上げて彼らを引離したため,それ以後シューが支えたヌトの腹が天となってそこには星が輝き,地には草木が生えるようになった。もともとはデルタ地方で信仰されたライオン神で砂漠熱風象徴レーの後継者として権力をふるったが,病気になって信者からも反逆され,ついに息子ゲブに権力を譲り,9日間の嵐ののち空に隠遁した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュー」の意味・わかりやすい解説

シュー(Eugène Sue)
しゅー
Eugène Sue
(1804―1857)

フランスの小説家。本名はマリ・ジョセフ・シュー。パリ生まれ。代々高名な外科医の家に生を受け、初め海軍軍医として艦隊に乗り込んだが、父の死とともに文筆に専念。彼の名を一躍有名にしたのは、新聞の連載小説『パリの秘密』Les Mystères de Paris(1842~1843)である。パリの暗黒街にひしめく素性不明の男女、薄幸の美少女、彼女を助ける気品にあふれた人物たちが登場し、スリルと哀歓のドラマチックな展開につられ、新聞売場には読者の長蛇の列ができたという。これ以後、フランスでは新聞の連載小説が19世紀末まできわめて盛んとなる。ほかに『さまよえるユダヤ人』(1844~1845)、『七つの大罪』(1847~1849)など、いずれも大部の連載小説がある。

[宮原 信]


シュー(古代エジプト神話)
しゅー
Shu

古代エジプトの神話で、原初の創造神から生まれた男神。同時に生まれた女神テフヌトの兄にあたり、シューは空気を、テフヌトは水蒸気を表した。この2神はしばしば2頭のライオンの姿で表される。また、この2神から地の男神ゲブと天空の女神ヌトが生まれたが、父神シューは、初め抱き合っていた2神を引き離したといわれ、墓陵の壁画などには、頭上に羽毛をのせ、上方のヌトを支える姿で表されている。その崇拝の中心地はレオントポリス(ライオンの都)であった。

[矢島文夫]



シュー(民族)
しゅー

ダコタ(民族)

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