日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シュー(Eugène Sue)
しゅー
Eugène Sue
(1804―1857)
フランスの小説家。本名はマリ・ジョセフ・シュー。パリ生まれ。代々高名な外科医の家に生を受け、初め海軍軍医として艦隊に乗り込んだが、父の死とともに文筆に専念。彼の名を一躍有名にしたのは、新聞の連載小説『パリの秘密』Les Mystères de Paris(1842~1843)である。パリの暗黒街にひしめく素性不明の男女、薄幸の美少女、彼女を助ける気品にあふれた人物たちが登場し、スリルと哀歓のドラマチックな展開につられ、新聞売場には読者の長蛇の列ができたという。これ以後、フランスでは新聞の連載小説が19世紀末まできわめて盛んとなる。ほかに『さまよえるユダヤ人』(1844~1845)、『七つの大罪』(1847~1849)など、いずれも大部の連載小説がある。