日本大百科全書(ニッポニカ)「シルクスクリーン」の解説
シルクスクリーン
しるくすくりーん
silkscreen
版画技法の一つ。セリグラフィserigraphyともいう。枠に張った絹(ナイロンやテトロンを用いることもある)のスクリーン(幕)を介して印刷する方法で、第二次世界大戦後アメリカを中心に急速に発達した。製版の方法には次のようなものがある。
(1)刃物などで図柄を切り抜いた原紙をスクリーンの裏側に貼(は)り付ける方法で、原理的にはステンシルの応用といえる。
(2)筆あるいは型紙を用いてスクリーンの裏側に水溶性の糊(のり)や乳剤で図柄を描き、その上からニスを塗る。ニスが乾いてからスクリーンに水をかけると、乳剤を施した部分のニスが乳剤といっしょに洗い流されて版ができあがる。
(3)スクリーンに感光乳剤を塗り乾燥させる。これにあらかじめ用意した原稿のフィルムを当てて感光させて水洗いし、未感光の乳剤を除く。また網かけ処理をしたフィルムを用いれば、微妙な明暗のグラデーションも確実に再現できる。
いずれの場合も多色刷りの作品には色の数だけスクリーンが必要である。
このようにして用意したスクリーンを紙の上にのせ、枠の中に置いたペースト状のインキをウレタンやゴムのスクィージでしごくようにしてスクリーンの布目に擦り込む。布目があらわになった部分を通して、紙に図柄が刷り出される。木版やリトグラフと併用されることも多い。制作法が比較的容易であり、かなり大版の作品も制作が可能なため、今日の主要な版画法の一つとなっている。アメリカでは、1950年代後半ごろから、ハード・エッジ、オプ・アート、キネティック・アートなどの展開に伴って多用された。また、機械印刷的な表現も可能なので、ポップ・アートの芸術家たちも愛用した。
[八重樫春樹]
『視覚デザイン研究所著・刊『シルクスクリーンハンドブック』(1980)』▽『小本章著『シルクスクリーンの発想と展開』(1980・美術出版社)』