シンクレティズム(英語表記)syncretism

翻訳|syncretism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

違った背景をもち,互いに異質の宗教哲学的・学的立場を妥協させようとする行為またその結果をいう。語源は,内部で抗争していたクレタ島人が争いをやめて外敵に共同であたったことをさす synkrētismosである。狭義にはヘレニズム期およびローマ帝国末期に異質の神々を単なる外観などの類似から同一化しようとした新プラトン主義者たちの試みをいい,特にアレクサンドリア学派のそれが有名。アリストテレス学派とプラトン学派などの調和の企てや,中国でのイエズス会の典礼論争,キリスト教宣教師の土着化の努力などは,シンクレティズムの一種といえよう。仏教,イスラム教,インドや中国の宗教をはじめあらゆる文化には,シンクレティズムの現象がみられる。

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百科事典マイペディアの解説

異なる文化の相互接触により多様な要素が混淆・重層化した現象をさす。宗教について用いることが多い。例えば日本の神仏習合など。元来異質な神格や教義が混在・融合して一つの宗教体系をなしている場合や,同一社会に複数の宗教体系が併存し人々が状況に応じて関与する場合などがある。シンクレティズムは,人々が外来の要素を取捨選択し,社会的・文化的環境に適合するよう独自の意味づけを加えていくという,創造的営為の産物といえる。
→関連項目ブードゥー

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世界大百科事典 第2版の解説

ギリシア語シュンクレティスモスsygkrētismosに由来する語。本来は〈統合〉を意味し,のち相互に対立・相違する神学上・哲学上の見解和解・融合させようとする試みを指すようになった。無節操,折衷などしばしば軽べつ的なニュアンスで用いられることもある。具体的にはルネサンス期における東方教会ローマ・カトリック教会合同の試み,17世紀におけるルター派と他のプロテスタント諸派,ローマ・カトリック教会との合同の試みなどがあげられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

異なる複数の文化・宗教が接触して混交している状態・現象。この言葉が現代につながる意味で使われ始めたのは17世紀で、プロテスタントとカトリックの対立を超える全世界の教会の一致がシンクレティズムと呼ばれた。その後、初期キリスト教に対する異教の諸影響が明らかにされるなか、比較宗教学の進展とともに宗教や文化一般を論じる言葉として定着した。文化・宗教間の接触に伴う現象一般をさすこともあるが、諸宗教の多元的共存などとは区別されることが多い。日本宗教での典型例には中世以降の神仏習合があり、修験道(しゅげんどう)もその成立に際して仏教・道教・神祇信仰など諸宗教間の接触が不可欠だった。

[遠藤 潤]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (syncretism) 哲学や宗教で、さまざまな学派や宗派がまじりあって統合されたもの。二世紀および四世紀のアレクサンドリア学派における新プラトン主義的学説、一五世紀のベッサリオンによる東西カトリック教会の合同、一七世紀のルター派、プロテスタント諸派、カトリック教会の統合、日本における神仏習合などはその例。諸説混合主義。折衷主義。諸教混交。

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世界大百科事典内のシンクレティズムの言及

【ラテン・アメリカ】より

…グアテマラのマヤ・インディオの居住するチチカステナンゴの町のサント・トマス教会では,公然とマヤ古来の宗教行事が教会の内外で行われている。こうした習合現象syncretismは,インカ帝国の版図であったペルー,ボリビア,エクアドルなどの高地住民の間にも顕著にみられ,人口集中地域でのキリスト教化が集団改宗の形をとらざるをえなかったことに,その原因の一端がうかがえる。強制と集団洗礼からは内実のある改宗を望むことは無理である。…

※「シンクレティズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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