シンビジウム(読み)しんびじうむ

デジタル大辞泉 「シンビジウム」の意味・読み・例文・類語

シンビジウム(〈ラテン〉Cymbidium)

ラン科シュンラン属の植物の総称。シュンラン・カンランなど。また、シュンラン属のうち、主に熱帯に分布する原種や、園芸品種をもさす。

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精選版 日本国語大辞典 「シンビジウム」の意味・読み・例文・類語

シンビジウム

  1. 〘 名詞 〙 ( cymbidium ) ランの一群。植物学的には、日本原生のシュンラン、カンラン、中国原生のスルガラン、ソシンランなどの東洋ランと東南アジア原生の大形の洋ランとを総称する。園芸上は、大形の洋ランおよび、洋ランと東洋ランの雑種をいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「シンビジウム」の意味・わかりやすい解説

シンビジウム
Cymbidium

ラン科シュンラン属Cymbidiumに属する常緑のラン。園芸的にはシンビジウムの名で呼ばれるのは,シュンランカンランなど東洋ランとされるシュンラン属植物を除くもので,洋ランの重要な一群である。インド北部から中国,東南アジア,さらにオーストラリアに広く分布し,約60種あまりが知られている。地生種も,樹木に着生するものもあるが,多くはやや乾いた場所を好む。

 普通は偽球茎が発達し,それに6~10枚くらいの左右に扇状にひろがる細長い硬い葉をつけ,葉の先端はやや垂れる。新しく生じた偽球茎の基部から現れる花茎に,5~20輪の花を総状につけるものが多いが,1花しかつけない種もある。花茎は地生種では直立し,着生種では垂れ下がるものが多い。萼片と花弁は平開することが多く,唇弁は3裂することが多い。栽培されるものでは花は大型で,色も赤褐,赤紫,黄緑色などさまざまである。花の寿命は長く,受粉させないと40~60日間観賞できるものもある。洋ランのシンビジウムは原産地が熱帯域で大輪花が多く,栽培される原種は10種を超える。しかし,原種は園芸的にはさほど重要でなく,多くの栽培品種(現在では3000品種を超える)のほとんどは交配育成品種である。

シンビジウムは種間交配で多くの品種が育成されているが,他属との交配はなく,近縁種としてはマダガスカル原産のシンビディエラ属Cymbidiellaが1種あるだけである。シンビジウムの園芸品種の分類は,大型系品種群と,小型系品種群の二つのタイプに分けられる。大型シンビジウムは切花用や鉢物用に栽培され,花径は10cm以上あるが,葉も100cm以上となる。これに対し小型シンビジウムは,花径5~6cmで葉も大型より短くまとまっているため,もっぱら鉢物用となっている。

熱帯原産であるが,シンビジウム類の越冬は最低6~7℃あればよいので,扱いやすい。生育期は春から秋にかけてで,この間は戸外に出して,西日を除いた日光によくあて,水と肥料とを与えて株を充実させる。花芽は秋の初めのころにはできるので,夏の培養にはとくに気をつける。繁殖株分けで春に行うが,2~3年に1回でよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンビジウム」の意味・わかりやすい解説

シンビジウム
しんびじうむ
[学] Cymbidium

ラン科(APG分類:ラン科)シンビジウム(シュンラン)属の総称。約70種を含み、熱帯アジアを中心に、北は日本、中国、ヒマラヤ山麓(さんろく)、インドからオーストラリアまで広く分布する。園芸的には、温帯産のカンランやシュンランなどを東洋ランとして区別する場合がある。今日では両者の交雑種も多く栽培されている。

 常緑性の多年草で、卵形の偽球茎に線形の葉を10枚ほどつけ、茎部から花茎を伸ばし、1~30個の花をつける。交雑品種は多く、大形から小形まであり、色彩は紅紫、桃、緑、黄、白色など豊富である。小形から中形までの品種は耐寒性が強く、5~6℃で越冬する。大形品種は10℃は必要である。

 繁殖は株分けにより、一般に春に行い、2~3球ずつに分け、ミズゴケやオスマンダの場合は素焼鉢に、砂利バークの場合は堅鉢に植える。鉢は新しい偽球茎が1~2年伸びられるほどの大きさのものを用い、鉢の高さの3分の1程度まで鉢片など粗い材料を入れ、根を広げ、よく排水するように植える。植え付け後10日くらいは日陰で、暖かい場所に置き、葉水を与える。夜温が10℃を保つようになったら戸外の通風のよい場所に出し、夏季は50%の日よけをする。秋には屋内へ入れる。肥料は油かす骨粉を等量混ぜ、茶さじ1~2杯を月1回、秋まで置肥する。灌水(かんすい)は春から秋は十分にするが、冬季は乾いたら灌水する程度とする。花期は普通春から秋であるが、つぼみ付きの株を夜間は10~17℃くらいの乾きすぎない場所で管理すれば、冬から早春に花を開かせることができる。

[唐澤耕司 2019年5月21日]


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百科事典マイペディア 「シンビジウム」の意味・わかりやすい解説

シンビジウム

日本,中国,東南アジア,オーストラリアに分布するラン科の一属。約70種あり,園芸的には日本・中国産の東洋ランと洋ランに分けられるが,普通シンビジウムと呼ぶのは後者で,熱帯産の野生種とその交雑種をさす。着生ランが多く,線状の葉を出す偽球茎の基部から長い花柄をのばし,5〜20個の大輪花を総状につける。萼と花弁はほぼ同形同色で,白・黄・緑・桃・褐色等がある。多くの交雑種がある。鉢物,切花向き。越冬温度は10℃前後。
→関連項目シュンランラン(蘭)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シンビジウム」の意味・わかりやすい解説

シンビジウム
cymbidium

常緑のランのこと。シンビジュームともいう。ラン科シュンラン属のうち,シュンラン (春蘭) ,カンラン (寒蘭) ,ホウサイラン (報歳蘭) などの東洋ランを除いたもので,園芸的には洋ランとして市場に出回っているものをさす。インド北部やタイなど東南アジアの北部山岳地帯,中国,さらにはオーストラリアまで広く分布し,約 60種類が知られている。春から秋にかけて生育し,花の寿命は長く,2ヵ月間ほど観賞が楽しめる。熱帯が原産ではあるが低温性で,最低6~7℃あれば越冬できる。海外では切り花が中心,日本では鉢物用の品種が多く愛好され,贈答用としても好まれている。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「シンビジウム」の解説

シンビジウム[花卉類]
しんびじうむ

四国地方、徳島県の地域ブランド。
主に徳島市・名西郡神山町・阿波市などで生産されている。シンビジウムは洋蘭で、切り花・鉢物のどちらも全国有数の生産量を誇る。出荷時期は主に11月から4月。特に、関西市場で大きなシェアを持っている。

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