日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェーン台風」の意味・わかりやすい解説
ジェーン台風
じぇーんたいふう
1950年(昭和25)9月2~4日に四国・近畿地方を中心に中部・東北・北海道地方で風水害を、大阪湾に高潮をもたらした台風。9月3日10時ごろ徳島県に上陸、その後、紀伊水道へ抜け、神戸付近に再上陸、近畿地方を横断し若狭湾(わかさわん)に抜けた。中心付近で非常に風が強く、この台風の通過により四国・紀伊半島の沿岸では毎秒35メートル以上の暴風、近畿・北陸地方では毎秒30メートル以上の暴風となり、全国で死者・行方不明者539人などの被害があった。大阪湾の高潮は室戸(むろと)台風時よりも低かったが、昭和初頭より始まった工業化と、第二次世界大戦中の軍需物資増産の影響で加速した地盤沈下などで、浸水面積では室戸台風時の約2倍となり、最大浸水深は4メートル近くになった。
ジェーン台風の大被害を受けた大阪市では、地盤や防潮堤のかさ上げ、台風時には大型船を港外避難させる等の高潮対策事業が推進された。ジェーンJaneの名称の由来は、第二次世界大戦後に連合軍気象隊が台風の発生順序に従ってABC……の頭文字をもつ女性名を順次つけたことによる。
[饒村 曜]
『中央気象台編『中央気象台彙報 ジェーン台風報告』(1951・中央気象台)』▽『大阪市土木局・大阪市港湾局著、大阪府土木部編『西大阪高潮対策事業誌』(1960・大阪府/大阪市)』