中国の伝統的木構造帆船。ジャンクと総称される伝統的中国船を概括することはむずかしく,形態,大きさ,艤装(ぎそう)など,時代により地域によって千差万別である。しかしおおむね次の諸点を共通の特徴とする。(1)竜骨,肋骨,縦通材,横通梁による堅固な骨組みに厚い外板をはって船体を構成することは洋式船に似ているが,太い角材を積み重ねたがんじょうな横隔壁が随所に設けられている。この横隔壁の設置は,ジャンクを世界の他の地域の伝統的な船と区別する基本的特徴である。(2)伝統型の船首は平たんな箱型,いわゆる戸立造り(とだてづくり)である。(3)帆は檣(ほばしら)に非対称にかかる縦帆,すなわちラグスルで,蛇腹式に伸縮する。材質は,古くはシュロやササの葉を籠目に編んだ竹で挟んだ網代帆(あじろほ)で,近世以降は布製の伸子帆(しんしほ)(横方向に多数の竹の骨が入っている)である。
執筆者:小佐田 哲男 英語でjunkと表記されるジャンクの語の原型は,すでに14世紀,オドリクやイブン・バットゥータの旅行記に見え,中国語の船(chuán)に由来するか,あるいはジャワ語,マレー語のjong,ajongからくるとする考えが有力である。漢字で〈戎克〉と表記されるのは逆にjunkからの音訳である。上記の構造的特徴をもつ木帆船ジャンクは,中国古代の造船技術の展開の中で生みだされてきた伝統的な船型を受け継ぎ発達してきたものと考えられるが,もっとも一般的なジャンクは〈沙船〉によって代表される。沙船はすでに唐代にはその定型が現れ,元・明時代になると江蘇地方を中心に盛んに造船され,南北の物資の海運,水運に用いられた。宋代には〈防沙平底船〉,元代には〈平船〉,明代に至って〈沙船〉の名が現れる。その名称は,江蘇省の崇明沙で多く建造されたことに由来するという。沙船の名が示すように,砂州,入江などの浅い沿海の運行に適し,安定性にも富み,また縦帆の操縦によって逆風に向かって斜行する操法をも可能にした。指南針の発明とともに遠洋航海を実現させた大型ジャンクを代表する〈宝船〉は,15世紀初め明代の鄭和(ていわ)の7次に及ぶ南洋航海のために建造されたものである。全長150m,舵軸の長さ11mで,12の帆からなる巨大な沙船の類型に属するものであった。河川用ジャンクとして代表的な〈麻秧子(まおうし)〉は,長江(揚子江)の上流で荷船として使われており,大きなものは全長46mに及ぶものもある。ジャンクは,今日も中国の沿岸,河川,湖沼などで利用されているほか,東南アジア地域にもその姿を見ることができる。
執筆者:田中 淡
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中国水域で数千年にわたって広く使われてきた帆船の総称。中国語の船chuanからインドネシア語ジョングdjongになり、さらに英語のjunkになったといわれる。中国では戎克と書く。地方によって種類が多いが、構造上の共通の特徴は、船内が、竹の節からの着想と伝えられる多数の水密横隔壁で区画されていることである。このため船体の横強力が大きく、一部が破損浸水しても沈没することがない。河川用(内河戎克、内河民船)と航洋船(海舟)に大別される。河川用は平底で喫水が浅く、揚子江(ようすこう)上流の麻秧子(まおうし)、麺粉(めんふん)船、蛇(じゃ)船など、帆走より漕(こ)ぐほうに重点が置かれている。大きさは1~2トンから、大きくても100トン程度である。しかし、揚子江や黄河の下流で使用されるものは外洋にも出ることがあり、中間的な沿岸ジャンクに分類される。黄河ジャンク、太沽(タークー)漁船、温州(うんしゅう)漁船などがある。航洋船には北方型、南方型の別があり、北の安東(アントン)貿易船などは平底・浅喫水である。南の福建貿易船は最上の航洋型ジャンクとされ、竜骨や舷側(げんそく)厚板などの縦強力材があるのが特徴である。航洋船の大きさは50~200トンぐらいのものが多いが、300トン前後のものもみられる。
外観は角型船首、高船尾で、2本か3本のマストをもっている。帆は水平バッテン(横桟)が何本もある縦帆で、蛇腹式に畳む。舵(かじ)はきわめて大きく、外洋では深く水中に入れ、ヨットのセンターボードの役も果たす。
[茂在寅男]
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…15世紀になると鄭和の7次にわたる遠征隊(1405‐33)がホルムズ,南アラビアのアデン,ジュッダ,メッカ,東アフリカのマリンディにまでいたった。12世紀以来の中国のジャンクは,普通3~4本マストの四角帆,鉄釘を用いた大型船で,羅針盤を備えていた。その後,明朝の海禁政策で中国船がインド洋に現れるのはまれとなるが,ジャンクはおそらくベンガル湾でも建造されていく。…
…しかし南宋以来の長い混乱期に運河は荒廃し,沿線の治安も悪く,安定した漕運を維持できなくなっていた。南宋を滅ぼした元の宰相バヤン(伯顔)は,当時発達してきた航海技術を用いて海路を漕運に用いることを考え,1282年(至元19)とくに平底の船(のちの沙船,すなわちジャンク)を造らせて糧米を北方へ運んだ。時期により若干の変更はあるものの,そのルートは長江デルタを横断して海へ出,沿岸を北上し,山東半島を迂回して直沽(天津)へ至るものであった。…
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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