ジョロウグモ(英語表記)Nephila clavata

改訂新版 世界大百科事典 「ジョロウグモ」の意味・わかりやすい解説

ジョロウグモ
Nephila clavata

コガネグモ科のクモ。大きい馬蹄形(ばていけい)の網を張り,昆虫を捕食する。足場糸を切らないために,網の横糸楽譜の五線のように見える。このクモの糸には酸化されやすい成分があり,時がたつにつれ黄金色に輝く。そのために英語ではNephila属のクモをgolden silk spiderと呼んでいる。体長は雌20~25mmだが30mmを超える大型のものもいる。腹部には青黒色黄色の横帯がある。雄は8~10mmと小さく,じみ。日本では体色の美しさと,姿のみやびやかさが上﨟(じようろう)を思わせるところからこの名がつけられた。北海道を除く各地に分布し,林の周辺に多い。9月下旬から10月初旬にかけて産卵し卵囊をつくる。九州以南では成体で越冬するものもいる。ほかに日本でいちばん大きいクモといわれるオオジョロウグモN.maculata南西諸島に生息している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョロウグモ」の意味・わかりやすい解説

ジョロウグモ
じょろうぐも / 女郎蜘蛛
上﨟蜘蛛
絡新婦
[学] Nephila clavata

節足動物門クモ形綱真正クモ目コガネグモ科に属する陸生動物。秋を代表するクモで、雌雄で体長が著しく異なる。雌は35ミリメートルで腹部は太くて長く、青色と黄色の幅広い横縞(よこじま)があり、成熟すると腹端が赤くなる。雄は7~8ミリメートルぐらいで、体色も黒褐色でじみである。9月ごろから繁殖期に入り、雌の網の周辺に1~数匹の雄の訪れをみる。網は金色で、造網性クモ類中もっとも複雑である。中央には目の細かい主網があり、上方前後にも不規則な網があるので横からは三重網にみえる。主網は横糸数本ごとにすきまがあり、楽譜の五線の感じがある。このすきまは造網過程でつくられた細い足場糸が取り払われずに残されているためで、その部分が透けてみえるのである。縦糸も途中から何回も分岐しているので、横糸の幅は周辺になってもあまり変わらない。地域によってジョロウグモとよばれるものは、夏に成熟するコガネグモかナガコガネグモのことが多く、ジョロウグモとの混用誤用をしないように注意を要する。本種は、本州以南から台湾中国にかけて分布する暖地性のクモであるが、奄美(あまみ)大島から南方熱帯地方にかけては近縁の大形種のオオジョロウグモがみられる。この種の体長は、雌50ミリメートル、雄7~10ミリメートルぐらいである。

[八木沼健夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジョロウグモ」の意味・わかりやすい解説

ジョロウグモ
Nephila clavata

クモ綱クモ目アシナガグモ科。雌は体長 2.5cm,腹部に黄色と淡青色の幅広い横縞があり,成熟すると腹端付近の下面が赤色となる。歩脚は黒褐色で各節に黄色の環がある。雄は体長 8mmほどで,地味な色彩をもつ。林間に金色の巨大な網を張る。網は,中央に主網があり,その上方前後にも不規則な網があるので,横からみると3重網になっている。晩秋に産卵し,卵嚢を樹木の葉や樹皮,建物の壁などにつける。卵数は約 400~1000個。春に孵化し,約 10回脱皮して秋に成熟する。雄は雌よりも早く成熟し,雌の網の片隅で交尾期を待つ。秋を代表するクモで,日本全国にごく普通にみられるが,コガネグモを誤ってジョロウグモと呼ぶ地方もある。吐 噶喇列島以南に分布する近縁のオオジョロウグモ N. maculataは体長 5cmに達し,日本最大のクモとして知られている。 (→クモ類 )

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百科事典マイペディア 「ジョロウグモ」の意味・わかりやすい解説

ジョロウグモ

蛛形(ちゅけい)綱アシナガグモ科。雌は体長15〜30mm,雄は8mmほど。頭胸部は黒色,胸部の縁は黄色で銀白色の毛が密生する。夏〜秋に庭先や林の中に,非常に目の細かい網を張る。幼時は丸網,成体は下側に横糸の多い馬蹄(ばてい)形の網を作る。糸は黄色。日本全土に分布するが,関東地方では秋の終りに真っ赤な卵を産卵。卵は翌春孵化(ふか)する。

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