スズガエル(英語表記)fire-bellied toad

改訂新版 世界大百科事典 「スズガエル」の意味・わかりやすい解説

スズガエル
fire-bellied toad

英名のとおり腹面に鮮やかな色彩の警告色をもつスズガエル科スズガエル属Bombinaカエル総称。5種が知られ,いずれも体長5cm以下と小さい。そのうちヨーロッパスズガエルB.bombinaはヨーロッパ東部からカスピ海沿岸地方まで分布し,体背面を小さないぼ状隆起が覆っている。舌はまるくて下あごに固定している。頭胴部および四肢の腹面は鮮やかな赤色または朱色で,白点の混じった不規則な黒斑がある。沼や湖の水辺すみ,繁殖期には鈴の音のようなかわいい声で鳴く。和名はこれによる。押さえられたりすると体を反らせ四肢を突っぱってもち上げ,腹部と四肢の裏を見せびらかす。この異様な特有の脅しポーズは天敵を驚かせるのに十分であり,また皮膚から毒液を分泌して身を守る本種にとって,鮮やかな赤色は警告色となる。ときには赤い腹面を上にしてひっくり返ることもある。ヨーロッパ中・南部に分布するキバラスズガエルB.variegataは黄色の腹面,中国東北部,朝鮮半島沿海州に分布するアジアスズガエルB.orientalisは赤い腹面をしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スズガエル」の意味・わかりやすい解説

スズガエル
すずがえる / 鈴蛙
oriental fire-bellied toad
[学] Bombina orientalis

両生綱無尾目スズガエル科のカエル。原始的な種で、朝鮮半島から沿海州、中国の東北地区南部、山東半島にかけて分布する。日本でも対馬(つしま)に分布するという記録があるが、これは誤認である。背面は緑色または褐色で不規則な黒斑(こくはん)が散在し、多数の皮膚隆起がある。腹面は平滑で赤色、大形の黒斑がまだら模様をなす。頭部は比較的小さく扁平(へんぺい)で、鼓膜は不明瞭(ふめいりょう)である。体長4、5センチメートル。水田、溝、渓流周辺の水たまりに多く、韓国では5月ごろに産卵する。卵塊は小さく、水草に付着したり、水底に沈む。腰部抱接型である。

 スズガエル属には本種のほか中国大陸南部の2種、ヨーロッパのヨーロッパスズガエルB. bombina、キバラスズガエルB. variegataが含まれる。この属の仲間は、腹面と掌部が赤色または黄色で、顕著な黒色のまだら状斑紋をもち、危険にさらされると背を反ってあごと四肢をあげ、この斑紋を誇示する。

[倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スズガエル」の意味・わかりやすい解説

スズガエル
Bombina orientalis; fire-bellied toad

カエル目スズガエル科。体長 5cm内外。背面の地色は青,淡褐色などで,いぼ状の突起が多数ある。腹面は赤,橙黄色に黒色斑が混り美しい。山地や平地の川や池などの浅い水中や,水辺の石の下,草むらなどにすむ。中国東部から朝鮮にかけて分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のスズガエルの言及

【カエル(蛙)】より

…餌を発見するやすばやく舌を起こして前につきだし,先端部で巻き込むようにしてとらえる。しかしスズガエル類Bombinaのように円盤状で固定されたものや,無舌類(現生はピパ科のみ)のように舌を欠くものもある。 四肢が発達し,とくに後肢は長くて力強く,これを支える腰帯(ようたい)(後肢の関接部分)の構造もがっしりしている。…

※「スズガエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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