翻訳|stencil
紙や金属板に切り抜いた図柄や文字を刷り出す方法で、版画、染織、工業用簡易印刷などに用いられる。合羽摺(かっぱずり)や、透し型による型染めもステンシルの一種であり、とくに日本では、染織の分野で高度な技術が発達した。版画の手段としては、ヨーロッパでは16世紀以来、木版画の簡単な彩色法として、遊戯用カードや民衆版画に使用された例が多いが、補助的な方法にとどまっている。近年、ステンシルを創造的な版画の手法として採用する作家もいるが、同じように平面的な効果をもつリトグラフ、木版、シルクスクリーンに比べると、作例は少ない。刷り方は、型紙を紙や布などの上に置いて、刷毛(はけ)やローラーで直接インキを刷り込むが、インキを吹き付けることもある。シルクスクリーンに型紙を応用した例は多く、この方法ではより細かな表現が可能である。ステンシル法の代表的な作例としては、マチスの画集『ジャズ』(1947)があげられる。
[八重樫春樹]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…古来の東洋の拓本がそれであり,20世紀ではシュルレアリスムが開発したフロッタージュもそれである。これらが原版の凹凸を手にもったタンポンで写しとるのに対して,原版に開けられた孔を通して台材にインキが塗られるステンシル(合羽(かつぱ)版,孔版)は,前述の旧石器時代の手型をはじめとして江戸小紋などの捺染(なつせん)の制作過程にも用いられ,さらに現代ではシルクスクリーンsilkscreen(セリグラフィーserigraphy)にも使われている。 以上の印刷方式はインキとなんらかの圧力とを用いてなされるが,光と薬品とによる化学的処理のみによる技法がある。…
…また,歌舞伎の看板に使われる勘亭流(かんていりゆう)や相撲の力士名を表す相撲文字,寄席の題名や芸名を表す寄席文字などの江戸時代に創作されたものを江戸文字といい,これらもフリーハンドレタリングに含めることができる。道路上に書かれる標示文字のうち〈型〉(文字の形にくりぬいた板など)を使って書(描)かれたものの類をステンシルと呼ぶ。同じものを多量に表す場合や,また表面が平らでないときに用いる技法である。…
※「ステンシル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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