ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セネカ(小)」の意味・わかりやすい解説
セネカ(小)
セネカ[しょう]
Seneca, Lucius Annaeus
[没]後65. ローマ
ローマの後期ストア派の哲学者,詩人。大セネカの息子。ローマでストア派のアッタルスに学ぶ。弁護士として成功したが一時ローマを追われ,のち皇帝ネロの師傅,執政官となる。その後ピーソの謀反に加担した嫌疑を受け自殺に追込まれた。彼はピタゴラス,プラトン,エピクロス,キュニコス派に多くの点で影響を受けつつ,ストア主義の正統を守って哲学を理性的存在である人間の唯一の目的,幸福,善としての徳の修練に結びつけ,倫理生活の根本原則は自然に従って生きることにあるとした。また,倫理的な神観念や神の意志である世界法則と人間的理性の同質性を強調し,ストア主義における理想主義的宗教的側面の形成に寄与した。それゆえ彼の思想はキリスト教護教家たちによっても福音書の倫理説などと比較研究されている。『道徳的書簡集』 Epistulae morales107中の詩の一句「導き給え,おお高き天空の支配者なる父よ,いずこなりと御心のままに。進みて我は従いまつらむ」にはストア派の学説の結末を形づくる賢者の像が象徴されているといえよう。著書は7巻の『自然論』 Naturales quaestionesなど多数。ほかに悲劇9編がある。文体は弁論調で警句にも富み,名文として後世まで親しまれた。
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