改訂新版 世界大百科事典 「セルリオ」の意味・わかりやすい解説
セルリオ
Sebastiano Serlio
生没年:1475-1554
ルネサンス後期のイタリア人建築家。全8巻(7書および別冊,うち第6書は未完)の《建築書Tutte l'opere d'architettura》の著者。ボローニャに生まれ,ローマに出て年下のB.ペルッツィに古代建築を学んだのち,ベネチアに移り住んだ。1541年,フランス王フランソア1世の招きで宮廷建築家として渡仏,王の没後はフォンテンブローの城館を離れてリヨンに住んだ。幾何学と透視図法(1,2書),古代建築,オーダー,宗教建築(3~5書),住宅建築と建築の実際的問題(6,7書),扉口のデザイン(別冊)を論じる《建築書》は,ボローニャ,ローマ,ベネチア各地の建築造形と古典様式の混交から創出された斬新な作例に富み,マニエリスム建築の造形的基礎を提供するとともに,パラディオ,ジュリオ・ロマーノおよびフランス・ルネサンスの建築家に多大の影響を与えた。古代ローマの建築家ウィトルウィウスが言及した3種の舞台を,透視図法による舞台設計例として初めて図化し,その後の西欧各国における舞台芸術と背景画の発達を促した功績も大きい。軍事建築を扱う未完の稿本が残るが,セルリオがこれを《建築書》第8書として意図したか否かは定かでない。同書に紹介された中央アーチと左右の水平材から成る3連開口部は,時の古典主義建築に好んで用いられ,セルリアーナserlianaないしパラディアン・モティーフとよばれる。
執筆者:日高 健一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報