ペルッツィ(その他表記)Baldassarre Peruzzi

改訂新版 世界大百科事典 「ペルッツィ」の意味・わかりやすい解説

ペルッツィ
Baldassarre Peruzzi
生没年:1481-1536

ルネサンス時代のイタリア画家建築家。シエナに生まれ,フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ影響下に絵画と建築を学び,ローマに出てシエナ出身の大銀行家アゴスティーノ・キジの知遇を得た。その別荘ビラ・ファルネジーナ(1505-11)は前期の代表作である。ラファエロ,ジュリオ・ロマーノ,ソドマらと分担制作した別荘の装飾壁画には透視画法を駆使したトロンプ・ルイユがみられ,のちに流行した内装の先例として注目される。1520年からはアントニオ・ダ・サンガロ・イル・ジョバネの助手としてラファエロ没後のサン・ピエトロ大聖堂再建工事に従事し,この間ボローニャ北部のカルピで大聖堂と領主館を計画し,ローマのサンタ・マリア・デラ・パーチェ教会で祭壇画を描く。33-36年に後期の代表作パラッツォ・マッシモ・アレ・コロンネを建設,34年からサン・ピエトロ大聖堂造営主任を務めた。パラッツォ・マッシモは従来の規範にないファサード構成,巧妙奇矯な中庭計画を特色とする初期マニエリスム建築の最重要作品である。舞台設計にも優れ,〈カランドリア〉の舞台のほか,いくつかの重要な祝典仮設建築を手がけた。未完の設計案などの素描を数多く残し,その一部はセルリオの《建築書》に用いられた。素描に残る楕円平面の教会堂,庭園等の構想はルネサンス時代初出の例として注目され,ビニョーラ,フランスのドロルムらに少なからぬ影響を及ぼした。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルッツィ」の意味・わかりやすい解説

ペルッツィ
ぺるっつぃ
Baldassare Peruzzi
(1481―1536)

イタリアの建築家、画家。シエナ出身であるが主としてローマで活躍した。3月7日受洗、1月6日ローマで没した。初期の修業は不明であるが、ピントリッキョのもとで画業を学んだと思われ、1501年シエナ大聖堂内のサン・ジョバンニ礼拝堂の天井画装飾に参加している(消失)。03年ごろローマに出、バチカン宮やサン・オノフリオ聖堂などで壁画を制作。09~11年にはアゴスティーノ・キジ(シエナの銀行家)のために別荘を建て、その壁画を制作した(この別荘はのちにファルネーゼ家の所有となったのでファルネジーナとよばれる)。U字形プランの簡潔なルネサンス様式の建物で、その「遠近法の間」には彼の舞台背景画の知識がよく発揮されている。ブラマンテの助手としてサン・ピエトロ大聖堂の建設に参加、20年にはその準主任建築家となる。27年のローマ劫掠(ごうりゃく)のとき捕虜となり、いったんシエナに帰ったのち、31年サン・ピエトロの主任建築家となった。この時期の代表作がパラッツォ・マッシモ・アレ・コロンネ(1532/35ころ着手)で、曲面のファサードや片蓋(かたふた)柱と円柱の独自の構成などに、マニエリスム的特徴がすでに認められる。

[篠塚二三男]

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百科事典マイペディア 「ペルッツィ」の意味・わかりやすい解説

ペルッツィ

ルネサンス時代のイタリアの画家,建築家。シエナ生れ。画家として出発したのち,1503年ローマに出て建築に従事。1509年―1511年,ラファエロが《ガラテイアの勝利》を描いたファルネジーナ宮を設計,同時にフレスコ装飾も手がけた。1533年―1536年には初期マニエリスム建築の最重要作とされるマッシモ宮を建設。ローマのサン・ピエトロ大聖堂の再建にも参加した。
→関連項目セルリオ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペルッツィ」の意味・わかりやすい解説

ペルッツィ
Peruzzi, Baldassare Tommaso

[生]1481.3.7. シエナ
[没]1536.1.6. ローマ
イタリアの画家,建築家。 1501年にシエナ大聖堂の聖ジョバンニ聖堂のフレスコ画を描き,03年にローマに行き,D.ブラマンテの助手となった。最初の建築はシエナの銀行家 A.キージのローマの別邸ビラ・ファルネジーナ (1509~21) で,内部にラファエロとともにフレスコ画を描いた。ラファエロの死後,20年にサン・ピエトロ大聖堂の造営主任となり,27年の「ローマの掠奪」のときにはシエナに難を逃れ,29年に同地の聖堂を建築。最後の主要な仕事はマニエリスム様式の先駆をなすローマのパラッツォ・マッシモ・アレ・コロンネ (35) 。

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