セロリ(英語表記)celery
Apium graveolens L.

デジタル大辞泉 「セロリ」の意味・読み・例文・類語

セロリ(celery)

セリ科の一年草または越年草。全体に特有の香りがある。葉は不規則な切れ込みのある小葉からなる羽状複葉で、柄は肉厚。夏、緑白色の小花を多数つける。ヨーロッパの原産で、野菜として栽培。オランダみつば。きよまさにんじん。セルリー

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精選版 日本国語大辞典 「セロリ」の意味・読み・例文・類語

セロリ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] celery )[ 異表記 ] セロリー・セレリー・セルリー セリ科の一年草または二年草。南ヨーロッパ原産で、古くから栽培され、黄色系と緑色系の二系統があり、ともに品種が多い。高さ約六〇センチメートル。全体に芳香をもつ。茎は稜条と節がある。葉は奇数羽状複葉。各裂片には歯牙状の鋸歯(きょし)があり、ときに中裂する。根生葉は肉質の長柄をもち、柄の基部は鞘(さや)となる。茎葉には短柄があり、小葉は二~三対。夏から秋にかけ、茎の先端部の葉腋に複散形花序をつけ、ごく小さな緑白色の五弁花を密生する。果実は長さ約一・五ミリメートルでほぼ円形。軟白した葉柄を食用とする。和名オランダミツバ。きよまさにんじん。せりにんじん。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「沼沢の周囲にセレリー(荷蘭みつばの属)茂生するを発見し」(出典:十五少年(1896)〈森田思軒訳〉五)

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改訂新版 世界大百科事典 「セロリ」の意味・わかりやすい解説

セロリ
celery
Apium graveolens L.

葉柄を食用とするセリ科の一・二年草。オランダミツバともいい,園芸ではセルリーという。全草に強い芳香を有する。葉は複葉で,太くて長い葉柄を有し,2~3対の3~5深裂する小葉と頂生葉とからなる。葉柄は直立集合して大株となる。夏に50~100cmの直立した茎を出し,小さな複散形花序に微細な花を多数つける。花は白色あるいは緑白色,果実はやや球形で小さい。野生系統は地中海沿岸や中部ヨーロッパからインドまで広く分布し,海岸近くの多少塩分のあるところ,石灰分があって湿気のあるところに好んで生育する。栽培化は地中海東岸域で始まったらしく,エジプトですでに利用され,ギリシア・ローマ時代にも薬味や香料として使用されていた。しかし葉柄が現在のように野菜に利用されるようになったのは15~16世紀になってからである。17世紀にはフランスで葉柄食用品種が栽培されていた。中国やインドなどには原種に近い在来種var.secalinum Alef.があり,そのようなものが朝鮮出兵のときに加藤清正によって日本にもたらされた。また明治初年開拓使によって,ヨーロッパで品種改良された系統が導入されている。

 栽培品種は大別して黄色種,中間種,緑色種,東洋種に分けられる。黄色種や中間種は葉柄を食用にするため広く栽培されているが,緑色種は香りが強く,普及していない。東洋種はもっぱら調理用で,生食されない。冷涼温和な気候を好み,生育期間は長く,春まきや夏まきあるいは高冷地での栽培が行われているが,冬季のハウス栽培もある。これまでは軟白栽培がされていたが,最近はほとんど軟白されないグリーンものが市場に出まわっている。茎や葉にアピインapiinという配糖体を有する。セロリと同一種のセルリアックカブラミツバともいう)var.rapaceum (Mill.)DC.(英名celeriac)は肥大した根をカブのように食用にするが,葉柄は粗剛で苦く,食用に不適。
執筆者:

栄養成分としてはカロチンをやや多く含むが,ほかにみるべきものはない。特有の強い香気があり,茎は皮をむいて食塩やマヨネーズで生食するほか,肉といっしょに煮込んでシチューにしたり,サラダ,スープ,油いため,てんぷらなどにも使う。みそ漬,かす漬などにしてもおもしろい。種子はセロリシードと呼ばれるスパイスで,ピクルストマトケチャップに使う。セロリソルトはセロリシードを食塩と混合したもので,魚料理やスープに使う。セロリは加藤清正がもち帰ったものとして〈清正にんじん〉の別称があり,小野蘭山は《本草綱目啓蒙》(1802)の中でニンジンの条下にこれを付記し,〈芸州広島毛利元就ノ城跡ニ多ク生ス〉といい,茎,葉ともセンキュウの大きなものに似て白く,ニンジンの類ではないといっている。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セロリ」の意味・わかりやすい解説

セロリ
せろり
celery
[学] Apium graveolens L. var. dulce DC.

セリ科(APG分類:セリ科)の一年草。ヨーロッパ原産で、ヨーロッパ中部から南部、アフリカ、南アメリカ、西アジアおよび西インドにかけて野生種が分布している。一説にはスウェーデン原産ともいわれる。野菜および香辛料として広く栽培されている。茎は高さ60~90センチメートルになり、稜(りょう)が目だつ。葉は羽状複葉で互生し、葉柄の基部は肉厚の鞘(さや)状となる。普通は6~9月にとう立ちした茎の上部に複散形花序を出し、緑白色の小さな5弁花を多数つける。果実は長さ2ミリメートルの卵形ないし扁球(へんきゅう)形で、香辛料として利用される。

[星川清親 2021年11月17日]

文化史

全草に芳香があり、古代エジプト時代から薬用として利用され、ミイラの首飾りとして装飾に用いられた。ヨーロッパでの栽培は16世紀から記録があり、イタリアで始まったといわれる。中国へは7世紀に伝わったとされるが、栽培は17世紀以降で、それは野生型に近いものだったらしいが、いまでも野生型に近いキンツァイ(芹菜)が栽培されている。キンツァイは葉柄が細いが、香りは強い。日本への渡来は一説には豊臣秀吉(とよとみひでよし)の朝鮮出兵の際といわれ、加藤清正にちなんでキヨマサニンジンともよばれた。その後、オランダ人によって長崎に伝えられ、オランダミツバともよばれた。しかし、独特の強い香りのため日本人の食生活になじまず普及しなかった。第二次世界大戦後、食生活の洋風化に伴って消費されるようになり、昭和30年代から消費量が急激に増加した。

[星川清親 2021年11月17日]

栽培

栽培は、夏作を中心とした長野県と、冬作中心の静岡県とが主産地で、両県で全国生産の64%を占める。品種は多く、黄色種、緑色種、中間種に大別される。また、香辛料にする果実は野菜用に改良されたものよりも野生型のセロリのほうがよいとされる。日本で栽培されるのはほとんどが中間種の品種で、コーネル19号、コーネル619号などが知られている。苗床に種子を播(ま)き、2回移植して育苗し、本葉が7~12枚に育ったときに定植する。冷涼な気候でよく育ち、露地のほかトンネル、ハウス、加温栽培によって一年中栽培、出荷される。昔は食用部の葉柄に土寄せしたり、紙を巻いたりして軟白させたが、現在では軟白しないことが多い。

 なお、変種のセロリアークは根を食用とし、コンヨウ(根用)セロリの名がある。

[星川清親 2021年11月17日]

食品

葉、とくに葉柄は柔らかく甘味がある。葉柄をスティック状に切り、塩やマヨネーズをつけて生食し、またサラダに入れて食べる。煮るとさらに風味が増すのでスープやシチューにもよい。葉身の部分はブーケガルニに加え、煮込み料理の臭み消しや香りつけに用いる。うま味の成分はアピインというフラボン配糖体やマンニットなどである。果実には3%ほどの精油を含み、強いセロリ香がある。香辛料としての利用は広く、乾燥したものがセロリシードといって市販されている。

[星川清親 2021年11月17日]


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食の医学館 「セロリ」の解説

セロリ

《栄養と働き&調理のポイント》


 セリ科の野菜で、ヨーロッパでは古くから強精作用があることで珍重されていたといいます。
○栄養成分としての働き
 栄養面ではカロテン、ビタミンB1、B2、C、E、食物繊維、カリウムなどやミネラル分をバランスよく含んでいるので、便秘(べんぴ)予防、食欲増進、高血圧症予防などに効果があります。
 苦手な人も多いようですが、あの独特の香りはアピインやセネリンを主成分としたもので、食欲不振や頭痛をやわらげる作用があります。
 含硫(がんりゅう)アミノ酸の一種であるメチオニンも含まれており、常食していると肝臓の働きを活性化します。
 栄養素は茎よりも葉の部分に多いので、捨てずに利用しましょう。細かく刻んでチャーハンやスープに入れたり、炒めもの、おひたし、てんぷらなど、意外と応用範囲が広いので、いろいろ試してみましょう。炒(いた)めものに使うとカロテンの吸収率がアップします。
 セロリの葉は食べる以外にも利用法があります。適度に水分を含んでおり、香りもよいので、切ったチーズの保存に最適なのです。密封容器の中にいっしょに入れて冷蔵庫で保存しましょう。チーズの切り口がパサつかず、おいしくいただけます。

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百科事典マイペディア 「セロリ」の意味・わかりやすい解説

セロリ

セルリ,オランダミツバとも。特有の強い香気をもつセリ科の一〜二年生野菜。茎は直立分枝し,高さ50〜100cmになり縦の稜がある。ヨーロッパ〜アジア西部,インドに広く分布。初めは古代エジプトなどで薬草として栽培された。日本には16世紀末,朝鮮から渡来したが,食用にされたのは昭和になってからである。代表的な西洋野菜の一つで生食のほかスープの実などにする。

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デジタル大辞泉プラス 「セロリ」の解説

セロリ

日本のポピュラー音楽。歌はシンガーソングライター、山崎まさよし。1996年発売。翌年発売の男性アイドルグループ、SMAPによるカバーバージョンが、フジテレビ系で放送されたドラマ「いいひと。」の主題歌に起用。

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