ゼンマイ科の夏緑性シダ。太い塊状の根茎から、葉を束生する。葉には早春に出る胞子葉と、遅れて出る栄養葉の2型がある。栄養葉は淡緑色、葉身は洋紙質の三角状広卵形で2回羽状に分裂し、長さ60~100センチメートル、幅40~60センチメートル。小羽片(終裂片)は広披針(こうひしん)形で、長さ5~10センチメートル。先はとがらず、基部は無柄。胞子葉は葉身が縮み、葉肉が退化して、小羽片は線形である。胞子嚢(のう)を密生し、胞子を放出したあとに枯落する。ゼンマイは各地の山野に生えるが、まだ葉の開かない若芽は、葉柄にタンパク質や炭水化物を多量に含むため、摘み取って食用にする。蒸してから乾燥させたり、塩漬けにすると蓄えることもできる。根はゼンマイ根(こん)といい、着生植物栽培の際、ヘゴの樹幹の代用にする。
ブナ帯の明るい草原に群生するものにヤマドリゼンマイO. cinnamomea var. fokiensisとオニゼンマイO. claytonianaがある。ともに長楕円(ちょうだえん)形の1回羽状複葉を束生するが、前者は葉に胞子葉と栄養葉の2型があり、後者は葉の中部の数対の羽片が縮んで胞子羽片となる。いずれも食用となる。
[西田 誠]
なまのものを使用することもあるが、多くはいったん干してから使用する。乾燥品は水でもどすことが必要であるが、市販品はもどしたものが多い。なまのまま干したものを「あお干し」、ゆでてから干したものを「あか干し」という。食物繊維が多く含まれている。調理法としては、もどしたものを適当な大きさに切り、油で炒(いた)め、ひたひたにだし汁を加え、煮立ってから酒、あるいはみりん、砂糖などを加えて煮込む。十分柔らかくなったところでしょうゆを加え、仕上げる。なお、油揚げがよく味にあうので、通常、細く切ったものを加えることが多い。
[河野友美]
平地から山地にかけて,林下に普通のゼンマイ科の夏緑性シダ。ゼンマイは銭巻の意とされ,巻いている若葉が古銭の大きさだったからといわれる。ぜんまいばねの名は植物名から由来した。早春,まだ展開しない栄養葉の若芽を摘んで乾燥させたものは食用に供され,山菜の王者として珍重される。葉は胞子葉と栄養葉が全く異なる2形を示し,若芽は淡赤褐色の綿毛に密におおわれるが,成葉は無毛となる。胞子葉は春に展開して,胞子を散布すればすぐに枯死する。栄養葉は2回羽状複葉で,最下羽片が最も長いので葉面は三角状長楕円形となる。小羽片は開出してつき,長楕円状披針形で,基部は広いくさび形,無柄,辺縁に細かい鋸歯がある。脈は遊離脈で,側脈は中肋と約50度で交わっている。全国に広く分布しており,南サハリン,朝鮮半島,中国,台湾からヒマラヤにかけて分布している。
ゼンマイ科は薄囊(はくのう)シダ類のうちで最も原始的な科であり,独立のゼンマイ目とされることもある。化石は二畳紀からすでに知られている。約20種が世界中に分布し,3属に分類される。
近縁のヤシャゼンマイO.lancea Thunb.は日本固有の種である。必ず川沿いに生育し,小羽片が狭披針形,先端・基部ともに鋭形となり,羽軸に鋭角でつくなど,いわゆる流線形となって渓流沿い植物特有の形をしている。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…(3)渦巻ばね 薄く細長い鋼を巻いてつくったばね(図2-c)。一般には〈ぜんまい〉の名で知られ,時計や蓄音器の動力源として用いられていた。現在でも,自動車玩具,リール,自動車のシートベルトの伸縮機構などに利用されており,とくに,最近になって成形加工技術の進歩に伴い,蓄積できる単位体積当りのエネルギー量は大幅に増大している。…
※「ぜんまい」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加