日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼンメルワイス」の意味・わかりやすい解説
ゼンメルワイス
ぜんめるわいす
Ignaz Philipp Semmelweis
(1818―1865)
ハンガリーの産科医。ブダ(ブダペスト)で生まれる。ペスト大学とウィーン大学で学び、1844年卒業。1849年までウィーン一般病院産科助手を務めた。1847年に産褥熱(さんじょくねつ)の原因と予防についての発見をした。産褥熱は、腐敗した有機物が子宮から吸収されることでおこり、診察者の指や器械などによって運ばれる腐敗物質を、産婦に持ち込まなければ予防できるという説である。細菌や消毒法が知られていなかった当時、きわめて優れた着想であった。しかし、この説は反対され、圧迫を受けて1850年ウィーンを去ってペストへ帰り、聖ロフス病院に勤め、1855年、大学の産科学教官となった。1861年には『産褥熱の病因、概念、予防』を出版したが認められず、やがて精神障害となり、ウィーンの精神科病院で死去した。全世界の追慕者により、ブダペストの公園にその記念像が立てられ、100年後の1965年、旧宅に記念医学史博物館がつくられた。
[石原 力]