ソテツ(蘇鉄)(読み)ソテツ(英語表記)Cycas revoluta; cycad

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソテツ(蘇鉄)」の意味・わかりやすい解説

ソテツ(蘇鉄)
ソテツ
Cycas revoluta; cycad

ソテツ科の常緑低木。南西諸島や九州南部の海岸の断崖などに自生する。庭木や公園樹として暖地で広く栽植され,また鉢植にして観賞することもある。茎は太い円柱状で高さ1~4m,表面には枯れ落ちた葉の基部が密に残り,黒褐色をしている。葉は長さ1~1.5m,茎頂に集ってつき,濃緑色で硬い線形の小葉から成る羽状複葉四方に壮大に広がる。雌雄異株で,花は夏に茎頂につく。雄花は多数の長い鱗片状の実葉 (おしべに相当する) から成る円柱状で,長さ 40cmに達する。実葉の下面には多数の葯 (やく) がある。雌花は長さ約 15cm,やや掌状に裂けた心皮の集合で,各心皮の基部葉縁には2~3対の胚珠を生じる。受粉後,花粉は長期間雌花内の花粉室にとどまるが,やがて発芽すると花粉管中に精子を生じ受精する。種子はやや平らな卵形で朱紅色に熟する。種子はあぶって食べ,また救荒植物として茎の髄を砕いてデンプンをとることもある。

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百科事典マイペディア 「ソテツ(蘇鉄)」の意味・わかりやすい解説

ソテツ(蘇鉄)【ソテツ】

ソテツ科の常緑低木〜小高木。九州南部〜沖縄,東アジア南部に自生し,観賞用として暖地に栽培される。茎は太い円柱形で全面に葉が落ちた跡があり,葉は大型の羽状複葉でかたい。雌雄異株。8月に開花。雄花は円柱形に,雌花は球形に集まる。花粉が胚珠につくと発芽して花粉管が伸び,中に精子ができる。この精子は1896年,池野成一郎により発見された。種子は11〜12月朱赤色に熟す。樹は庭木,盆栽などとし,葉は細工物,種子は薬用とする。また髄からデンプンをとる。昔飢饉の時食用にされたが,処理を誤ると中毒,死ぬことがある。

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世界大百科事典 第2版 「ソテツ(蘇鉄)」の意味・わかりやすい解説

ソテツ【ソテツ(蘇鉄) Japanese sago palm】

九州南部から琉球諸島にかけて自生するが,濃緑色でつやのある葉を観賞するために,関東以南の庭園露地植えにされるソテツ科の植物(イラスト,イラスト)。関東北部では冬に霜から保護するために,葉を切り取り,株全体をわらで包む必要がある。幹は太く,葉柄基部が枯れ残って周囲をうろこ状におおう。高さ2mほど,まれに5mを超すことがあり,しばしば側方から芽を出して,枝分れする。茎頂から葉を四方に広げる。葉は長さ50~100cm,1回羽状に分裂し,羽片は線形で長さ8~20cm,幅3~5mm。

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世界大百科事典内のソテツ(蘇鉄)の言及

【都井岬】より

…岬の周囲は約100mの海食崖に囲まれ,先端の255mの断崖上に都井岬灯台(光達距離37カイリ)がある。また岬の先端に御崎(みさき)神社があり,付近の谷間には3000本をこえるソテツの自生林(特天)がある。丘陵地の草原には岬(御崎)馬とよばれる野生馬約90頭が放牧されている。…

【有毒植物】より

…バラ科のアンズ,ウメ,モモなどの種子はアミグダリン,マメ科のライマメ,イネ科植物などはリナマリンなどの青酸配糖体を含有し,腸内細菌の働きで青酸を遊離する結果,チトクロム酸化酵素の活性を阻害し呼吸を止めてしまう。 以上のような有毒植物に対しワラビのプタキロサイドやソテツのサイカシンなどにはいずれも,長期の摂取による発癌性が認められている。ヒガンバナなどリコリンやシュウ酸を含む植物と同様に,水にさらせば無毒化する。…

※「ソテツ(蘇鉄)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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