ダイカスト(読み)だいかすと(英語表記)die cast

デジタル大辞泉 「ダイカスト」の意味・読み・例文・類語

ダイ‐カスト

die castingから。「ダイキャスト」とも》金属製の精密な鋳型の中に、溶かした合金圧力をかけて流し込み鋳造する方法。普通鋳物より寸法精度が高く、大量生産ができる。

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精選版 日本国語大辞典 「ダイカスト」の意味・読み・例文・類語

ダイカスト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] die-casting から ) 溶融金属を金型ダイス)に圧入する鋳造法。通常非鉄金属に用いる。鋳物表面が平滑で、普通鋳物より強さも増し、寸法精度も高い。

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改訂新版 世界大百科事典 「ダイカスト」の意味・わかりやすい解説

ダイカスト
die casting

精密な金型(ダイス)に溶融金属を高圧で圧入し,寸法精度の高い,鋳肌のきれいな鋳物を作る方法。この呼称は日本およびアメリカでのもので,イギリスではこの方法を圧力金型鋳造pressure die castingといい,普通の金型鋳造は重力金型鋳造gravity die castingといっている。ダイカストの原理は図のように,(1)溶融金属をシリンダー内に導き,(2)これを高速で鋳型内に圧入して凝固させ,(3)型を開いて,製品を取り出す,という手順で示すことができる。このプロセスダイカストマシンにより行われる。

 ダイカストマシンは,鋳型を固く密閉し,またこれを開く装置と,溶融金属を鋳型内に高速で圧入する装置とで構成されている。その能力は鋳型の型締力で表し,数tから数千t程度のものがある。またその形式にはホットチェンバー型とコールドチェンバー型がある。ホットチェンバー型は,加圧室が溶融金属中に浸されている形式で,溶融金属の補給が容易である。コールドチェンバー型は,加圧室が大気中にあり,別の保温炉から溶融金属を鋳込みシリンダーに補給し,これを金型内へ圧入して鋳物を製造する機械で,現在用いられている大部分はこの形式である。

 ダイカストは,溶融金属の金型への充てん(塡)時間が0.01~0.15秒ときわめて短いが,高圧で圧入するので鋳物に空気が巻き込まれやすい。したがって,ダイカストの金型設計は空気抜きの設計にくふうが必要である。この難点の対策として,真空ダイカスト法アキュラッド法,無孔性ダイカスト法などが開発されてきた。真空ダイカスト法は金型内を真空に保って鋳込む方法で,1924年にアメリカで特許がとられたが問題が多く,実用化されたのはダイカストマシンの自動制御が発達した60年代以降である。アキュラッド法は,金型温度およびプランジャー(射出装置のピストン部分)速度の制御により,凝固状態を制御して健全な鋳物を得る方法である。無孔性ダイカスト法は鋳型内に酸素を満たして溶融金属を注入し,化学反応によって鋳巣の発生を防ぐ方法である。

 ダイカストは製品の寸法精度が高いので,互換性を要求される自動車部品,機械部品の大量生産に非常に適しているが,鋳型は高価である。しかし,経済的に有利な点として,鋳肌がきれいで精度がよいので機械加工がいらない,薄肉鋳物ができるので素材の節約になる,鋳込合金と異なる材料の部分が鋳型内で鋳込めるので組立費を必要としない,などが挙げられる。ダイカストで鋳込まれる合金は比較的低融点(1000℃以下)のもので,日本ではアルミニウム合金が約80%を占め,あとは亜鉛合金がおもなものである。スズ合金,マグネシウム合金鉛合金銅合金などの製品も,わずかではあるが美術品などに製造されている。ダイカスト製品の75%以上は自動車部品である。
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百科事典マイペディア 「ダイカスト」の意味・わかりやすい解説

ダイカスト

精密につくられた金型(ダイス)に,水圧や圧縮空気により溶融金属を加圧注入して,金型の内容積と正確に一致する鋳物を得る精密鋳造法。鋳肌(いはだ)が平滑で,機械加工を必要とせず,同一規格の製品の多量生産が可能などの特長がある。亜鉛,アルミニウム,スズ,銅などの合金の鋳造に向き,自動車部品はじめ各種部品製造に広く利用されている。
→関連項目亜鉛塑性加工リョービ[株]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイカスト」の意味・わかりやすい解説

ダイカスト
だいかすと
die cast

金型に溶融金属を加圧注入して凝固させる鋳造法。寸法精度が高く、鋳肌が滑らかで機械加工仕上げを省略できる。寸法精度は鉛合金、亜鉛合金で0.03%、アルミニウム合金で0.05%程度であり、この意味では精密鋳造法の一つである。つくりうる鋳物の最小肉厚は前者で0.8~1.5ミリメートル、後者で1.2~2.0ミリメートルである。鋳込み圧力はピストンを用いて30~50気圧に達するので、金型に押し付けられた溶湯の冷却速度はきわめて大きく、鋳造機を自動化することにより1日1000~2000個の多量生産ができる。金型としてはこのような繰り返しの鋳込みに耐えねばならないので耐熱鋼が用いられ、鋳込み用合金としては融点のあまり高くない亜鉛合金とアルミニウム合金とがおもに使用される。カメラのボディーやエスカレーターの踏み板やサッシの留め金などは身近なダイカスト製品である。

[井川克也]


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世界大百科事典(旧版)内のダイカストの言及

【鋳物】より

…アルミニウム合金,マグネシウム合金は,軽量で,熱処理によって高い強度を得ることができるので,航空機などの材料に用いられる。亜鉛合金は,比較的低融点で鋳造しやすいので,ダイカスト合金として使われている。(2)鋳型による分類 砂型,金型,特殊鋳型の三つに大別される。…

【鋳造】より

…一般に複雑な形状のものが鋳造でき,鋳肌がきれいである。(5)ダイカスト 精密に機械加工をした金型(ダイス)に高温で圧力をかけた溶湯を強制的に流し込み,きわめて短時間に凝固させる方法。鋳肌が平滑で,機械加工を必要とせず,同一規格品の大量生産が可能である。…

※「ダイカスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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