イギリスの作家ハーディの長編小説。1891年刊。『ダーバビル家のテス』とも訳される。女主人公テスは中世貴族の末裔(まつえい)で、いまは貧しい農家の娘。ダーバビルの家名をかってに名のる成金の家に奉公するが、道楽息子アレックに犯され私生児を産む。赤ん坊の死後働きにいった牧場で、両親の信仰に反発し農場主として独立を図る牧師の息子エンジェル・クレアと知り、愛し合って結婚する。しかし彼女が正直に過去を告白すると、観念的な理想主義者エンジェルはショックを受けて彼女を置き去りにし、外国に去る。テスは農場の雇い女となってつらい労働に耐えるが、親兄弟が村を追われて流浪の身となったため、アレックの囲い者となる。そこにエンジェルが帰国する。絶望したテスはアレックを殺し、過酷な仕打ちを悔いるエンジェルとの逃避行につかのまの幸福を味わうが、捕らえられて死刑となる。何者にも犯せない女の純潔、対照的な2人の男のそれぞれの無理解を超えて愛を貫く女の至情を、印象的な農村生活を背景に描き出す。19世紀イギリス文学の傑作の一つ。
[海老根宏]
『井出弘之訳『世界文学全集56 ダーバヴィル家のテス』(1980・集英社)』
イギリスの作家T.ハーディの小説。1891年出版。正確な表題は《ダーバービル家のテス》,副題に〈清純な女性〉とある。イギリス南部の田園地方を舞台に,農家の清純な乙女テスが好色な男に誘惑され,処女を失い私生児を生み,さらに運命のいたずらや世の因習,宗教の偏狭などに翻弄され,最後に男を殺し死刑になるまでを描く。作者のギリシア悲劇的人生観が強く打ち出された作品。
執筆者:小池 滋
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…体型が似ているのでアマダイ(串本)とも呼ばれることがある。テンスは三崎,江ノ島での呼名で,テス(関西,四国)ともいう。背びれ第1棘(きよく)は糸状にのび,また第1棘と第2棘は第3棘以下とやや離れ,鰭膜(きまく)もとぎれている。…
…《緑の木陰》(1872),《狂乱の群れを離れて》(1874),《帰郷》(1878)などが初期の代表作である。《カスターブリッジの市長》(1886),《テス》(1891),《日陰者ジュード》(1896)など後期の代表作では,小説のプロットの組立てがますます精緻巧妙になり,建築家としての才能が構成に発揮されている。しかし,彼の小説の特徴は単にその構成の巧みさのみにあるのではない。…
※「テス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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